tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差の少ない日本の伝統的賃金構造(前回の注記)

2016年03月10日 09時48分50秒 | 労働
格差の少ない日本の伝統的賃金構造(前回の注記)
 国税庁の発表によると、年間所得1億円以上の企業トップの数が増えているようです。アメリカに典型的に見られるような欧米流の考え方が広まるのでしょうか。

 前回、日本の企業では、2倍働いて給料2割増し、3倍働いて3割増しなどと言われるように、自然と納得ずくの分かち合いが行われている。と書きました。

 サラリーマン経験者なら、それが実感と言われる方が多いと思います。良く出来る人が目立つ成果を上げてもその期のボーナスは多少増えますが、賃金は変わらないのが普通で、少し長い目で見れば、昇進が早めになる程度です。

 昇進してもそんなに給料が上がるわけではありません。管理職なって管理職手当がついても、残業代がなくなって減収になるのも一般的です。

 成果を上げているほど給料は増えないということはみんな知っていますから、良く出来、昇進の早い人は、妬まれたり嫌われたりすることもなくて、企業内で一目置かれ、尊敬されるのが普通です。
 「あいつはすごい」というときには、「あいつはみんなのために役立ってくれている」という意識が潜在的にあるのでしょう。

 一方、成果給中心で、良く出来る人はそれに比例した賃金(報酬)を得ている世界では、そうした感覚は薄いようで、「あの人は別格」とか「私などとは関係ない」といった声が多く聞かれます。

 限られた範囲かも知れませんが、サラリーマン生活の中で、こうした「賃金の分配の在り方」と「組織(企業)内の人間関係」の相互関係については、折に触れて実感してきたというのが偽らざるところです。

 こうした人間集団、企業文化への認識が、トップの給料が新入社員の10~20倍程度というのが一般的という日本の賃金実態に繋がっているということでしょう。そして日本の経営トップは「アメリカのように自分の給料を増やしたい」というよりは、「企業の将来の発展こそが自分の生き甲斐」と考えているようです。

 こうした大きく異なる日本とアメリカの現実は、つまりは「社会・文化の違い」によるもので、日本の社会・文化の中で、アメリカやヨーロッパの真似をしても、かつて書きましたように「舶来崇拝」の残滓のようなもので、日本らしい企業文化の在り方を否定することになり、マイナスの結果をもたらすだけのような気がして、先行きを心配しています。

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