tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

中国の所得倍増計画を読む: 2、経済のレベルアップ

2010年07月21日 10時00分05秒 | 国際経済
中国の所得倍増計画を読む: 2、経済のレベルアップ
 先ず、オーソドックスに考えて見ましょう。まだまだ高度経済成長が続く環境の中で、あえて、生産性以上の賃上げをすることを宣言するという事は、おそらく、賃金コストアップ以上のメリットが中国経済全体について考えられるからでしょう。

 中国が今、抱えている問題の中で、具体的に手を打たなければならないと言われる問題はいくつかありますが、例えば、所得格差の縮小、世界の工場から世界の市場への漸進的移行、量的拡大から質の向上、それらによる新たなる経済発展の可能性の開拓、目標の周知による国民の共通意識の醸成、結果的に巨大な中国経済社会の安定的発展、などなどでしょうか。
 
 そのためには、先ず、中国は経済成長の手を緩めずに、その成果をできるだけ広く均霑していかなければならないでしょう。

 日本の所得倍増計画の時期、日本はかなりのスピードでインフレの加速を見ました。しかし実質9パーセント前後の経済成長の中で、失業率は1パーセント台を続け、先進国経済に追いつけ追い越せという国民意識の高揚も相俟って、これは,日本経済の成長にとっての決定的な障害というほどのものにはなりませんでした。
 問題を起こしたのは、ニクソンショックによる固定相場制の崩壊、そしてオイルショックなど、その後の外的要因でした。

 当時は、低失業率に加え、公共事業の推進、米価審議会や生産費所得保障方式による米価決定などによって、全国各地、農村部への経済成長の成果の均霑も進んだように思います。これらは後に問題発生につながりますが、当時は成功した政策でしょう。

 近年、最低賃金の大幅引き上げなども試みた中国ですが、国民に安定した生活向上のビジョンは与えられなかったようです。
 今回は、5年で賃金倍増計画という労働者の所得向上を柱にして、未だ明確ではありませんが、何らかの格差是正政策も含め、中国経済社会の安定的発展への広汎な国民意識の醸成を狙っているように思えるところです。

 そしてもうひとつ、中国は、さらなる大きな対外政策目標を、賃金倍増計画で狙っているのではないでしょうか。


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