tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「双子の赤字」は金融政策で救えるか

2015年07月23日 09時18分20秒 | 経済
「双子の赤字」は金融政策で救えるか
 双子の赤字というのはご存じのように財政赤字(政府が赤字)と経常収支赤字(国民経済が赤字)が重なっていることです。

 これが発生する原因は、通常、こんなことでしょう。経済が停滞して国民が政府に景気対策を要求、政府はこれに答えてケインズ政策(財政支出による景気の下支え)をやります。
 もともと景気が悪いので税収も上がりません。それでの財政支出の資金調達のために政府は国債を発行して借金で賄います。財政赤字の発生です。

 国債はその国の銀行や国民が買いますが、外国人も買います。国債を沢山発行して国内で消化しきれなくなって、外国人に買ってもらうようになると経常赤字が発生します。つまり政府の借金が国内の貯蓄で賄えなくなって、外国からから借金をするという状態です。
 これで、財政赤字と経常赤字の双子の赤字になります。

 こうした状態が「金融の緩和」で救えるかどうかが、ここでの問題です。
 国でも会社でも家計でも基本は同じですが、赤字になると支払いに支障が出、経済活動がその分ストップします。しかしカネを貸してもらえれば、経済活動は続けられます。
 その意味では、確かに金融の緩和で赤字問題は救えるでしょう。

 しかしそれは当面の話です。そのまま行けば、どうなるかは誰の目にも明らかです。赤字が増えて、借金が大きくなるだけです。
 問題の発生の原因は赤字体質ですら、赤字を直さなければ、問題は解決しません。ですからドイツやEUがギリシャに「緊縮」(節約)を要求し、ギリシャも渋々納得したのです。

 ところでアメリカの場合を考えてみましょう。1960年代末から、50年近く経常赤字国で、双子の赤字で苦しんでいます。しかし、世界一の経済大国で、基軸通貨国ですから、それなりの信用はあります。そこで世界中からカネを借りてやりくりしていきました。
 しかしリーマンショックで信用がなくなり、外国から借金できなくなって、金融緩和(ドルの供給増加)で凌ぎました。

 金融緩和のお蔭で、アメリカ経済は元気になりました。シェールオイルも出て、赤字もかなり減りました。しかし、まだ毎年GDPの2~3パーセントの経常赤字です。
 金融を緩めれば、経済が元気になって、生産性が上がり、黒字国になると考えていたのでしょうが、そう簡単ではありません。

 ならば、もう1つの金融政策、「ドル切り下げ」という意見が出てきます。ドルを切り下げれば、アメリカの国際競争力は相対的に強くなり黒字化の「可能性」が出てきます。
 先日朝日新聞の「クルーグマンのコラム」でクルーグマン(ノーベル経済学賞受賞者)は、強いドルの必要はない、ドルの価値を下げればいいのだ、と言っていました。
 でも、国際経済関係というのは、それでいいのでしょうか? 次回はその点を考えてみましょう。