tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経営の長期視点と短期視点 1

2015年07月16日 13時56分35秒 | 経営
経営の長期視点と短期視点 1
 前回、日本的経営の基本は「長期的視点の経営」と「人間重視の経営」と書きました。かつては、日本的経営というと「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」といわれていましたが、これは戦後アベグレンが言い、OECDの対日調査報告書が取り上げたものです。

 その後多くの論議があり、今では、冒頭の2つが日本的経営の基本理念になっています。
 文献を辿っていって解るのは、これを最初に掲げたのは、平成4年(1892年)8月に日本経営者団体連盟(通称「日経連」)が発表した『これからの経営と労働を考える』(「これからの経営と労働のあり方を考える特別委員会」編)です。

 この報告書によれば、この委員会は、当時王子製紙会長だった河毛二郎氏が委員長を務め、主要企業の首脳役員28名を集めた特別委員会(通称「河毛委員会」)でした。

 序言にあたる「発表に当たって」には、「就任されたばかりの日経連の永野新会長の発想によるもの」と書いてあり、「期せずしてこの1年間は、日本的経営についての多くの見解が出され、見解が述べられましたことは、ことの重要性と必要性を物語っております。」と書いてあります。

 この委員会が始まった1991年は土地バブル崩壊の年です。株価は1989年がピークでしたが、地価崩落は融資の「総量規制」(1990年)の導入がきっかけで、株価に2年遅れています。
 今にしてみれば、いわゆる「失われた20年」の入り口のとして、日本経済の変調が現実問題として意識され、その中で、経営者や経営学者にとっては「日本的経営」をどう見るかが問題になったのでしょう。

 『これからの経営と労働を考える』ではバブル経済とその中での経営の在り方を反省、今後の経営の方向を検討、「変えてはいけないもの」として冒頭の2つ(原文では「人間中心」)を挙げ、それをベースに経営、労使関係、新しい経営者像に言及しています。

 「長期的視点の経営」と「人間中心の経営」は、相互に関連していると考えられます。本来、日本企業は企業を育てるために人を育てることを重視してきました。
 人を育てるには時間がかかります。企業は長期雇用を重視して人を育て、優れた人材を擁してはじめて長期的な安定発展を実現できると考えていたからです。
 
 ドラッカーが驚嘆したように、日本は諸外国に比して寿命の長い会社が極端に多いという特徴を持っています。それが当たり前と考えられているのです。

日本にいる我々は気が付かないかもしれませんが、そこに日本的経営の本質があると見るべきなのでしょう。
 次回、この問題をもう少し具体的に見てみましょう。