tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

白川総裁のクリーンヒット

2012年02月15日 11時32分40秒 | 経済
 アメリカが2パーセントのインフレターゲットを決めてきました。これに対して機を逸せず、日銀の白川総裁は1パーセントのインフレターゲットを打ち出しました。素晴らしいクリーンヒットではないでしょうか。

 このクリーンヒットが、単なるクリーンヒットを超えて、いわば審判団が混乱している今の野球ルール(世界経済の価値基準)が本来の野球ルールにの基本に帰るきっかけになることを願うものです。

 アメリカが、年2パーセントの物価上昇を認め、日本が年1パーセントの物価上昇を認めるということは、実体経済の基本の戻れば、アメリカは年に2パーセントの生産性を上回るコスト上昇を認め、日本は年に1パーセントの生産性を上回るコスト上昇を認めるということです。

 そしてどちらの国も、その状況になるまでは(たとえ流動性の罠がどうのと言われようが)徹底した金融緩和を続ける(いわば根競べ)ということです。

 たぶん白川総裁は、消費者物価が流動性よりもコストアップによって決まるということをご存じなのでしょう。 「バブルの時期にも日本の物価は年に1.6パーセントしか上がらなかった」と言っておられます。

 あの時の日本の、地価、住宅価格、ゴルフ会員権、などなどの高騰の中で、消費者物価の安定は世界的にも特筆に値するでしょうし、これは日本の労使の賃金決定における良識によるところが大です。
経済の基本に戻れば、日米の物価上昇格差が、1パーセント(2%-1%=1%)ということは、円レートはドルに対し年に1パーセントの円高で理論的には適切、ということになります。

 今のように、国際投機資本や格付け会社の思惑で、勝手な円高が発生すことに対する明らかな牽制の手段であり、為替レートに対する合理的な判断基準を提供します。
 しかも固定相場制のように、がんじがらめではなく、それぞれの国の事情にも柔軟に対応しうる余地を用意するものでしょう。

 そんなことは、経済学を勉強した者なら誰でも解ってるよ、と言われる方もおられましょう。しかし最近の経営学や、人事考課でも言われるように担当者、責任者は「やれているかどうか」が問われているのです。
 次は政府の政治的手腕が問われるということでしょうか。


中国、ドイツ、スイス、そして日本は?

2012年02月15日 10時33分25秒 | 経済
中国、ドイツ、スイス、そして日本は?
 「無理が通れば道理が引っ込む」というという諺がありますが、これは、「 時に世の中では、まともでないことの方が通ってしまう」 ということを言っているのでしょう。それを慨嘆しながら「まあ生姜ないのか」と自嘲的な感じが良く出ています。

 無能な上役の横車などで、部下が無駄と分っていることをやらなければならなくなったなどというのは典型で、多くの方もご経験でしょう。
 しかしあまり深刻になると、自嘲的に苦笑いで済ますわけにはいかなくなることもあります。

 今の世界経済を見ていると、すでに、苦笑いで済ませる段階ではなくなっていると思えるのですが如何でしょうか。

 特に先進国経済を見て行きますと、アメリカをはじめ、多くの国は、その国の経済力以上の支出をし、毎年赤字を計上しています。赤字は借金でファイナンスしなければなりませんから、無理して金を借ります。
 本来は支出水準を下げて(生活を切り詰めて)赤字にならないように是正しなければならないのですが、意志薄弱でそれが出来ません。借金がかさんで動きが取れなくなります。

 一方少数ですが、自分の経済力の範囲での生活をきちんと守る国、ガバナンス、セルフディシプリンの確りした国もあります。日本、ドイツ、スイス、中国(途上国ですが)などです。
 ところが赤字の国の方が力が強く、数も多くなると、「お前が黒字を出すから俺たちが赤字になる。怪しからん」と、横車を押して、いちゃもんをつけます。そして黒字国に通貨価値切り上げを迫ります。

 黒字国はある程度は譲歩しますが、程度を超えると、それぞれに対抗手段を考えます。
・力の強い中国は、力でそれを押し返します。
・ドイツは、共通通貨ユーロを盾に、「俺たちの仲間には、赤字国が多い」とユーロ安で躱します。
・スイスはたまらず、スイスフランをユーロにリンクします。
・日本は、何も対抗手段を持てず、半泣きで単独介入をやります。そしてその結果が、前回の冒頭「アメリカの不快感」です。

 道理を主張する正義の味方、白馬の騎士(月光仮面でもいいです)は現れそうにありません。日本はどうするのでしょうか。