tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

基軸通貨国の責任

2010年11月23日 16時41分45秒 | 国際経済
基軸通貨国の責任
 ブレトンウッズ体制のリーダーシップを取ったアメリカは、第二次大戦後その経済力の強さからイギリスに代わって基軸通貨国になりました。
 基軸通貨国の通貨は、世界の国際取引の共通の価値となるわけですから、アメリカ通貨当局は、いわば世界の中央銀行のように、基軸通貨の価値を常に安定させる努力が要請されるのは当然です。

 基軸通貨の価値が揺らいだのでは、国際取引の安定は確保できません。一国の問題に例えて言えば、例えば円の価値がインフレで目減りする状態ということですから、これは、マネーポリューション(通貨の汚染)で、中央銀行と政府は協力してインフレを抑制し、通貨価値を安定させるようインフレの原因を究明し、対策を打たなければなりません。

 世界中の国際取引の共通価値であるべきドルという基軸通貨を持つ国、アメリカは、当然自国の経済運営を節度あるものにし、ドルの下落を防がなければならないはずでした。
 具体的にいえば、放漫な経済・財政政策を改める一方、生産性を高め、国内インフレを防除して、浪費癖を改め、経常収支の赤字を是正し、黒字化の努力をするというのが常道でしょう。

 真面目に考えれば、これこそがアメリカの取るべき道だったのですが、こうした対応についてはアメリカは1970年以降も全く不十分な政策しかしてきていません。もちろん言い訳になるような理由はいろいろあるでしょう。
 しかしアメリカは、その後もいわゆる双子の赤字を垂れ流しながら、金融という手段によって、黒字国からのファイナンス で「キャッシュプロー」、いわば資金繰りの辻褄さえ合わせればそれでいいという経済運営の方法に傾斜していったわけです。

 基軸通貨の価値の下落から起こる問題は変動相場制の常識化で乗り切り、取引上の問題はヘッジ切り抜け、多様な金融工学を発展させ、巨大なレバレッジを使って経常赤字のファイナンスを可能にし、資本主義経済に「マネー資本主義」といいう鬼子を生ませることになりました。

 コツコツと真面目に働く国に対しては、「働き中毒」「やり過ぎで世界に迷惑をかける困った国」というレッテルを貼り、努力して働いた結果を無にする方法「為替レートの切り上げ」を強要し、そうした政策を経済の常識として世界に定着させるといった方法を取ってきました。

 かつて、世界の三大神学者の1人といわれたエミール・ブルンナーは、1950年代に日本で「社会における正義と自由」という連続講義を行い、行き過ぎた平等と共に、行き過ぎた自由を問題にしました。今我々は「経済における正義と自由」といいう問題を本格的に取り上げる必要があるのではないでしょうか。