tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの雇用問題

2010年09月04日 16時33分21秒 | 経済
アメリカの雇用問題
 アメリカの雇用統計が発表されて、雇用は減ったけれども予想より減り方が少なかったということで、株価(ニューヨークダウ)が反発したなどと報道されています。
 株式市場は、何か理屈 をつけては、市況を上げ下げすることが大事ですから、それはそれでいいのかもしれませんが、やはりアメリカの雇用は、先行き暗いのではないでしょうか。

 グリーンスパンマジックなどと言われ、アメリカが長期の好況を謳歌していた頃から、アメリカはずっと経常赤字国で、経常収支の赤字を資本収支で埋めて国としての経済バランスをとってきていました。それを支えていたのは、後からサブプライム問題として世界経済に大変なダメージを与えた米国の住宅バブルだったということでしょう。

 かつても触れましたが、ヨーロッパの経済価値の基準は「金」、アメリカのそれは「証券」、序でに日本もいえば「土地」というのが常識でしょうか。それだけにアメリカの証券は信用があったわけです。トリプルAがつけば、世界は安心してアメリカの証券・債券を買いました。サブプライムローン残高が組み込まれた証券でも売れたわけです。
 証券の信用力でアメリカは世界からカネを借り、資本収支で経常収支の赤字を埋め、それがアメリカの消費過剰の経済を支えたわけです。

 今やアメリカの証券は信用がありません 。TB(アメリカ国債)にしても、ドル安を予想すれば、誰も買いたくないでしょう。アメリカは自分の稼いだ分(GDP)の中で暮らしていかなければならなくなったのです。経常赤字の分だけ、アメリカ経済は小ぶりになり 、それに伴って雇用も縮小するのでしょう。

 これは、アメリカがかつて日本にドッジラインを敷いたのや、IMFが韓国に緊縮生活を強いたのと同じです。雇用を増やそうとしたら、一人当たりの賃金を減らして(平均賃金を下げ)支払いうる雇用者報酬をより多くの労働者で分けるしかないのです。賃下げか失業かの選択です。

 日本も、世界も、本当にアメリカや世界経済のことを考えるのなら、アメリカの経済の早期の回復などをあてにするのはやめたほうがいいようです。早期の回復は、相変わらずの過剰消費経済の継続、双子の赤字の積み上げ、そしてまたいつか来る破綻への道でしょうし、逆に二番底は、アメリカ経済の健全化へのプロセスでしょう。

 アメリカ経済は、基本的には、矢張り世界で一番底力のある経済の1つでしょう。 ここで一度、膝を屈して(経常赤字という背伸びをやめて)こそ、次のジャンプのエネルギーが生まれるのです。