tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トヨタと日産

2010年09月08日 11時28分13秒 | 経済
トヨタと日産
 日産が、世界戦略車マーチの生産を全面的にタイで行うようになったと報道されています。タイ産のマーチの売れ行きは予想を超える好調さで、日産では、海外生産でも、日本国内の生産と変わらないに品質のものが出来ると自信を持ったという事のようです。
 
 翻って、トヨタの場合は、経営トップが「苦しくても国内生産で何とかやって行きたい」という姿勢を強調しているようです。
 日本国内の雇用問題を考えれば、トヨタの姿勢は、大変ありがたい事で、このぎりぎりまで円高が進んでいく中で涙ぐましい努力、と同情と激励の念を強くします。しかし他方では、それで採算が取れるのですかという懸念の声もあるようです。

 国際投機資本にとってみれば、日本の企業がどこで生産しようが、日本の雇用がどうなろうが、そんなことは彼らにとってはどうでもよい事で、彼らが関心を持つのは、唯一、日本が、黒字国でいるか、赤字国に転落するかだけでしょう。

 赤字国に転落することが予想されるようになれば、彼らは直ちに円売りに走り、多分徹底して円を売り込む事で、さらなるキャピタルゲインを稼ごうとするに違いありません。

 円高が進んでいるといことは、国際投機資本が、まだまだ日本は経常黒字国を維持するだろうと読んでいることの証拠という事でしょう。そして、日本政府も日銀も、多分、当面日本が経常赤字に転落するなどという事態は、頭の中にないのではないでしょうか。

 しかし、日産とトヨタの例はまさに、こうした日本経済の先行きを暗示するもののような気がしてなりません。$1=¥80という段階は、日本企業に、おそらく新たな海外移転ラッシュを引き起こすのではないでしょうか。

 昨日も、アジア企業の中堅幹部の方々に、「プラザ合意の円高で日本企業が本格的に皆さんの国に出て行くことになった」という話をしたところ、「我々にとっては歓迎すべきことだった」という反応でした。これから、その第二段階が始まるのかもしれません。

 政府は党首選にかまけ、日銀は、「金融緩和の効果は出ている、長期的な目で判断すべきだ」といっていますが、では、長期的にどんな状況になるのかといった説明はありません。

 最近、「説明責任」とか「アカウンタビリティー」といった言葉がよく使われますが、誰か「日本はこうなるのですよ。だからこういう政策を取っているのです」という国民の誰にも解りやすい説明を、政策当局の、まさに責任において、国民にしてくれる人はいないのでしょうか。