tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経営者とは何か(その3:新しい資本家の登場)

2008年08月09日 09時37分32秒 | 経営
経営者とは何か(その3:新しい資本家の登場)
 最近では、企業経営について論じるとき、「ステークホルダーズ」という言葉が流行ります。
通常、第一に「株主」が来て、そのあとに「消費者」「取引先」「金融機関」「従業員」「政府」「社会全体」「地球環境」などが並びます。

 経営者はこれらのすべてに、企業の成長・発展を目指す中で、長期的に見てバランスの取れた配慮をしなければならないのです。ところが、最近、「モノ言う株主」ということで、投資ファンド(private equityなど)が、単なるステークホルダーズの一員ではなく「我こそは企業の所有者」という立場で、その利害を大声で主張するようなケースが目立ちます。
「新しい資本家」の登場です。

 新しい資本家の登場は、今の経営者のやっている「調整型」の経営は、緊張感を生まず、企業の発展に貢献しない、といった主張を伴っていることも多いようですが、本当のところはどうでしょうか。

 今年の3月このブログの「 労資関係の復活?」でも書かせていただきましたように、これは「労使関係」が「労資関係」に逆戻りする要素をはらみます。 かつて、社会対立にまで発展し、経営者革命によって止揚された関係への逆戻りです。

 しかもかつての資本家は、多く経営者でもあり、経営者としての感覚も併せ持っていたケースが多いのですが、今日の投資ファンドの場合は、「短期的な利益極大」に大きく傾斜しています。投資ファンドとは本来、そうでなければ出資者の期待に応えられないものなのです。

 企業防衛という立場から投資ファンドの要求に配慮しなければならなくなり、利益処分の中で、株主配当が急速に増えているという現実を見るとき、これが付加価値分配の中で、労働分配率に影響してくることは当然に予測されます。企業発展のために、必要な内部留保を確保するとすれば、配当の増加分は法人税分も加えて、人件費の抑制に向かわざるを得ません。

 これが「新しい資本家』の登場による「労資関係」の復活です。
 復活した「労資関係」は、かつての労働と資本の対立ではなく、「新しい資本家」対「経営者と労働組合」の連合軍ということになるのでしょうか。「労働と資本の調整者」としての「経営者」の役割は、ますます難しくかつ重要になってきているようです。