tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

総資本回転率

2008年08月02日 12時07分39秒 | 経営
総資本回転率
 企業の経営指標の中で、その企業が「調達」し「運用」している総ての資本をどの程度効率的に活用しているかを示す指標です。

 計算式は  総資本回転率=年間売上高/総資本(=総資産)

 たとえば、10億円の資本を調達・運用して、年間10億円の売上高をあげれば、総資本回転率は1.0ということになります。
 もっと具体的にいえば、昨年度の決算書で、 貸借対照表の「資産の部(借方)」あるいは「負債および正味資産の部(貸方)」の合計額が10億円で、消費税などを差し引いた純売上高が10億円であれば、総資本回転率は1.0回ということです。もし純売上高が11兆円であれば、総資本回転率は、1.1回になって、同じ額の総資本で、より多くの売り上げを上げたから資本効率がより高かったということになります。

 これを応用すると
   総資本回転率(=売上高/総資本) × 付加価値率(=付加価値/売上高)
   = 資本生産性(=付加価値/総資本)
ということになりますから、資本生産性を上げるには、総資本回転率をあげるか、付加価値率を上げるかということになります。

 「資本生産性」というものは、そう簡単には上がらないといわれますが、逆に、資本生産性が簡単に下がってしまう、ということはよくあることです。

 ・最新鋭の省力工場を作ったが、初期トラブルなどでで生産がなかなか上がらない。
 ・保有土地が時価表示で簿価は大幅に上がったが、売り上げには関係ない。
 ・本社ビルを建てたが、すぐには売り上げは増えない。
  ・・・・・
といったことで簡単に設備生産性は下がります。上の式のように、付加価値率を改善すれば多少救われますが、それがない場合の悪化の程度は総資本回転率で端的に示されます。

 失われた10年の長期不況の中で、膨らみすぎたバランスシート(総資産)を何とか整理して、負債を減らし、身軽に動ける企業になろうとする努力が、当時流行ったいわゆる「バランスシート調整」で、これは、まさに「総資本回転率」向上への努力でした。
 
 総資本回転率は、製造業の場合1.0ぐらいが標準で、中小企業のほうが高く、大企業のほうが低いというのが一般的です。売掛金のない現金商売の場合は高いですし、設備のあまりいらないサービス業などでは高く、重装備の装置産業とか、不動産に資金が寝る不動産業では低いなど、業態によって大きく異なりますので、統計による同業同規模比較や時系列分析が大切です。

 確かに、企業が順調に活動しているときであっても総資本回転率の向上は、簡単ではありませんが、総資本回転率の推移を時系列で見て、下がっているようであれば、その原因を探り、かつての良かった時の水準に早く回復させるような努力を怠らないことが大事です。