特例有限会社においては,株式交付の手続を利用することはできない。特例有限会社が株式交付親会社(株式交付をする株式会社)となることも,特例有限会社を株式交付子会社とするような株式交付をすることもできない。
cf.
令和3年2月9日付け「特例有限会社と株式交付の手続」
最近出版された江頭憲治郎「株式会社法(第8版)」(有斐閣)990頁(注2)にも,同様の記述がある。
念のため,法務省民事局参事官室にも問い合わせをしてみたが,「できない」という回答である。
ところで,株式交付親会社が例外的に債権者保護手続をしなければならない場合の官報公告等に関して,法務省令で定めるものは,次のとおりである。
会社法施行規則
(計算書類に関する事項)
第213条の8 法第816条の8第2項第3号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一~三 【略】
四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第28条の規定により法第440条の規定が適用されないものである場合 その旨
五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合(株式交付親会社が株式交付子会社の最終事業年度の存否を知らない場合を含む。) その旨
六 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第6編第2章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容(株式交付子会社の当該貸借対照表の要旨の内容にあっては、株式交付親会社がその内容を知らないときは、その旨)
特例有限会社は,上記のとおり,株式交付の当事会社となることはないので,本条第4号の規定は,適用場面がない。おそらく会社法施行規則第188条第4号等を引き写したものであると思われるが,空文化しているわけである。
なお,特例有限会社が株式交付の効力発生日までに通常の株式会社に移行することを条件に株式交付を行う場合には,第6号の規定によることになるのであって,第4号の規定は適用されない。