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京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

『中国によみがえる“雪舟”』日曜美術館

2015-01-11 22:21:10 | 美術・博物館

2015年最初の日曜美術館は、 『中国によみがえる雪舟』です。





水墨画発祥の地、中国では数限りない名品が生み出されてきました。
その中国で今、雪舟に熱い視線が注がれているというのです。

雪舟は室町時代の僧侶で、ご存知のように水墨画の巨人、画聖とも呼ばれています。
雪舟の作品の内,6点が国宝にされています。

雪舟等楊(1420ー1506?)
「雪舟自画像」摸本




雪舟は京都の相国寺で修行を積みます。
番組では相国寺の様子も紹介され、有馬館長や私が以前お世話になっていた、
平塚老師も映っていました。

雪舟の修行時代、雪舟の絵の師匠は、相国寺の画僧のトップ周文です。

「四季山水図」伝周文





修行時代の雪舟の絵
「溌墨山水図」





周文とは対照的な絵です。
緻密さに欠け、どちらかというと荒々しい感じです。

その雪舟48歳の時、日本人の画家として初めて中国に渡りました。
揚子江を船で上りながら、雄大な風景をスケッチし、水墨画の本場で、
技に磨きをかけます。そこで、大きな自信をつけるのです。

「唐土勝景図巻」伝雪舟




















当時中国で活躍していた画家
「春冬山水図」戴進昨





北京にやってきた雪舟は、 中国宮廷から役所を飾る大作を依頼されたのです。

雪舟が中国で描いた「四季山水図」
堂々した力強さ、本場の画家に負けない気概が溢れています。





そして帰国後、大胆極まりないその筆で独自の境地を切り開いたのです。

国宝「秋冬山水図」雪舟代表作の一枚





凍てつく寒さが漂う冬山の風景です。
切り立った断崖、太く荒々しい線で描かれた岩や冬枯れの木々。
道行く人は山裾の楼閣を目指しているのでしょうか。
何よりも目を引くのは、天へと伸びる一本の線です。
なぜか途中で切れ、岸壁がどこまで続くのかわかりません。
時間が停止したような幻想的な世界です。


国宝「四季山水図巻」(山水長巻)
16mの巻物の四季のうつろいを描いた大作です。



























国宝「破墨山水図」1495 、雪舟76歳の作品です。





遠い山から降りてくる霧、その霧にかすむ水辺の風景です。
墨を撒き散らしたような絵画は前衛絵画のようでもあります。
南宋の絵に学んだ余白の技法が活かされています。
雪舟は南宋の画風を学び、独自の画風を作り上げたのです。

冒頭、今中国で雪舟が熱いとふれました。
中国の専門家は「雪舟の絵は中国の画家たちを大いに啓発している」と言います。
なぜ今中国で雪舟なのか、番組がその理由を明かしていきます。

昨年6月、杭州で「雪舟シンポジウム」が開かれ、多くの研究者や画家が、
これからの中国やアジアの美術が発展していく上で非常に重要な存在と、
雪舟を位置付けたのです。





雪舟が中国で高く評価されている背景には、時代の大きな潮流があるようです。
急速な経済成長の中、美術市場が活況を呈し、水墨画にも熱い視線が注がれています。
その中で、 中国水墨画の神髄を受け継ぎ、革新的な作品を生み出した、
雪舟を研究しようとという機運が高まっているのだと言います。

水墨画の本場で雪舟が評価されるのは嬉しい限りですが、私は少し複雑でもあります。
裕福な一部の人が投資目的で絵画を買い漁り、その過程で雪舟が評価されているのでは、
という疑念を抱かざるを得ないのです。
かつてのバブル期の日本のようです。






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2 コメント

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Unknown (田舎のオバさん)
2015-04-12 18:25:15
この様な良い番組は、深夜にあるのが不満です。小学生の時、「涙で描いた鼠」を読んだ位でしたので、大内氏の船で明に渡ったとか、憲宗に会ったとか、山口に庵を結んだとか知りませんでした。南宋文化が鎌倉に残っているとか、日本の侘び寂びの感情に通じる事を知り、興味深かったです。此処に来て復習させて頂き、有難うございました。
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田舎のオバさん さまへ (京都で定年後生活)
2015-04-12 19:42:44
こんばんは
コメントありがとうございます。
私は若いときから美術が好きでしたので、美術館めぐりも退職後の趣味にしています。
最近は桜めぐりに忙しく、美術館はちょっと御無沙汰ぎみですが、そろそろ再開するつもりです。
日曜美術館は好きな番組です。
美術の面白さを伝える数少ない番組です。
多くの方に美術の素晴らしさを知っていただきたいと思い、拙いブログですが、紹介させていただいております。
雪舟、誰もが認める素晴らしい作品です。
見ていると雪舟の世界観に吸い込まれていく自分がいます。
今日曜美術館は年度変わりでしょうか、企画がいまひとつです。
また紹介したいと思います。

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