田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

スナメリ死亡漂着

2008-06-08 | 田中川
スナメリ
体長約75センチのスナメリの赤ちゃんが河芸の千里海岸に漂着した。4~5月がスナメリの出産時期である。数日前に海が荒れていたので、お母さんと離れてしまったのであろうか。死後数日が経過していると思われ、すでにウジが発生していた。ペニスが見えているので♂。体長から判断すると、生後間もないものと思われる。死亡した漂着個体はいつも黒く変色している。
毎年、この季節は赤ちゃんスナメリの死亡漂着が多い。6月3日には白塚から町屋海岸にかけて、3頭の赤ちゃんスナメリと1頭の大人のスナメリが漂着している。三重大学生らが調査記録していた。私はその時の様子も現場で見ている。
海岸から海を毎日眺めていても生きたスナメリが見られることはない。しかし、この季節、スナメリの漂着があるたびに伊勢湾はスナメリの生息地なんだと再認識する。
河芸での今回の漂着については、三重大学の学生たちによるウミガメ・スナメリの調査グループ「かめっぷり」に連絡を入れておいた。
その翌日の午後に数人の学生たちが漂着現場にやってきた。
採寸など調査記録した後、砂浜に深い穴を掘って、いつもどおり埋葬されるのであろう。
あとは学生たちに任せた。
2008.6.6

ツチカメムシ

2008-06-08 | カメムシ
ツチカメムシ
コウボウムギやハマボウフウ、ハマヒルガオが群生する砂浜で数時間過ごした。
海浜植物の株周りを探していて、一匹のツチカメムシを見つけた。
体長は8ミリ。ツチカメムシ科
植物の根や地表に落ちた木の実を吸収する。他の昆虫も食べる。
2008.6.6

ハマボウフウの株元に

2008-06-07 | 甲虫
ヒョウタンゴミムシ
オサムシ科ヒョウタンゴミムシ 体長16ミリ 千里海岸にて

ハマボウフウの群生地に座り込んで生き物との出会いを楽しんだ。
16時頃、一匹のヒョウタンゴミムシがハマボウフウの葉に隠れるようにじっとしているのを見つけた。少し触ってみたら、ちょっとだけ動いた。
ヒョウタンゴミムシは海岸の砂地に棲む。発達した大あごは獲物を捕獲するための道具である。後翅は退化して、棒状となっているようである。
前脛節が掌状に広がり、前胸部の下がくびれていて、砂に潜りやすく、穴の中で暮らしやすいように体が出来ている。
このあたりの砂浜では個体数は少ないと思う。
夜行性だから、狩りに出かける直前だったのか。
2008.6.6

ヒョウタンゴミムシ

砂浜のツルギアブ

2008-06-05 | ハエ目(双翅目)
ツルギアブsp
2008.6.3 豊津海岸 夕方にネムノキで休むツルギアブの仲間 ♂
彼の背中側は海浜植物の少ない砂浜。

1年前から近くの砂浜海岸に白いハエがいることに気がついた。
いろいろ調べてみたが、種名までたどり着けなかった。
ハエ目のツルギアブ科までしか分からなかった。

ツルギアブの仲間は、雄交尾器の形状や前胸腹板の毛の生え方などを調べないと正確な種の同定が出来ないという。
三重県レッドデータブック2005には、ナギサツルギアブとヨシコツルギアブの2種が絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。どちらも日本固有種である。
Acrosathe属の「種は互いに非常によく似ていて、正確な判別には雄外部生殖器を調査する必要がある」としている。ツルギアブ科は9属14種があり、その内Acrosathe属には、ナギサツルギアブ、ヨシコツルギアブ、ハマツルギアブ、タシマツルギアブの4種がある。別属のシロツルギアブやショージツルギアブも白っぽいようだから、これら6種の内のいずれかであろう。
ナギサツルギアブとヨシコツルギアブはいずれも「小形で体形は細く、後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛で覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う」と同じ特徴が記されている。
また、タシマツルギアブについても京都府では絶滅危惧種とされ、その形態について上記と同様の説明がされていて、「自然度の高い海浜に生息する」という。
『札幌の昆虫』によると、ナギサツルギアブの体長は9~10ミリで平地で見られ、「ナギサツルギアブによく似たタシマツルギアブ」は「前額下方部両側部に0~2本の毛がある」という。また、同書ではシロツルギアブには「前額下方と顔の側部に白く長い毛がある」としている。
ナギサツルギアブは、自然度の高い「海岸や河口の砂地で草本に覆われた環境に生息する。すなわちヨシコツルギアブよりはより内陸に生息」し、三重県内では川越町の高松海岸でしか記録されていない。京都府でも絶滅危惧種とされ、「水辺のススキやヨシの生い茂る砂地に限って生息し」ているという。
ヨシコツルギアブは、「近年まで九州からのみ知られる種であったが、最近本州で数か所の生息地が発見され」、「海浜性で、コウボウムギの群落やその周辺の限られた範囲にみられ、それより内陸には生息しない」とし、「前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことで、比較的容易に区別できる」という。
ヨシコツルギアブの三重県内の分布記録はこれまで津市内の河芸、白塚、町屋浦、御殿場の各海浜であったが、『鈴鹿市の自然』によれば鼓ヶ浦海岸でも2006年に記録されている。

さて、私が出会った3ケ所のツルギアブたちはいずれの種であろうか。砂浜で撮影した下の2枚の写真はこれまでの分布記録と生息地の環境からヨシコツルギアブの可能性が高いと思われるが、写真による同定は不可能ということなので永遠の謎である。個体数はすごく少ないのに、捕獲しないといけないのかなあ。

ツルギアブsp
2008.6.3 町屋海岸 コウボウムギ、ハマボウフウ群落周辺にて ツルギアブの仲間 ♀

ツルギアブsp
2007.6.20 豊津一色海岸 ハマニガナ、コウボウムギ、ハマボウフウなど海浜植物群落周辺にて
ツルギアブの仲間 左♀ 右♂
「体形は細く、後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛で覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う」

ヤマトツルギアブ
ナギサツルギアブ覚書
シオサイツルギアブ覚書
ツルギアブ科Acrosathe sp.の訪花

砂浜のマンテマ

2008-06-01 | 草花
マンテマ
津市の町屋海岸にマンテマが群生している。今が花の盛り。
ヨーロッパ原産の1~2年草で、江戸末期に観賞用として導入されたもの。
ナデシコ科マンテマ属
花弁が白色から淡紅色のものはシロバナマンテマといい、国道23号線の中央分離帯や歩道脇でよく見かける。
マンテマ群生地の周りでは地元小学生が松を毎年植えている。自治会が学校側に働きかけて実施していると聞く。
私はマンテマの生息場所が奪われることを心配している一人である。
観賞用として栽培されていただけに、赤いマンテマは美しい。
2008.5.30

マンテマ

マンテマ