光山鉄道管理局・アーカイブス

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鉄道ミステリとテツドウモケイ・番外編「最終列車の哀愁」

2020-12-19 05:26:02 | 小説
私がかつて住んでいた借家は電車の線路が近かったせいもあって夜に11時過ぎに寝ていると最終電車のジョイント音が枕元に響く環境でした。毎晩その音を聞くたび一日の終わりを実感し、眠りに落ちてゆくのは今にして思えばずいぶんな贅沢だった気がします。

そんな訳で今回は鉄道ミステリとNゲージの番外編です。

前に0系新幹線を題材にした短編鉄道ミステリの多さと歴史の長さについて書いた事がありますが、それに負けないくらいのボリュームを持っているのが夜汽車(夜行列車)を題材にした作品と思います。
その中でも独特の地位を占めるのは「最終列車(或いは最終電車)」を題材にしたものです。

映画でも先日紹介した「終電車の死美人」とか「魔の最終列車」(これについては近々取り上げるつもりです)なんて作品が製作されていますし。

私の鉄道ミステリのアンソロジーでも最終列車を題材にしたものはいくつかあるのですが、こちらもまた題材がバラエティに富んでいて飽きさせません。

個人的に印象的なのは鮎川哲也編「下りはつかり」所収の加納一郎作「最終列車」でしょうか。
ある夜、自分の上司を殺害して現金を奪った男が逃走のために東京駅に向かうのだが、駅までの街路は人っこ1人いない暗闇の無人空間。辿り着いた最終列車も何か普通でない違和感が漂う。いったい何が起こったのか?
本作は全てが男の追われるものの幻想の様に思わせておいてラストのひっくり返しの衝撃と独特の哀感が印象に残る一編でした。
(本作は厳密にはミステリというよりファンタジーに近い)
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その他「見えない機関車」所収の川辺豊三作「最終列車」では東海道線の暗闇を疾走する最終電車(おそらく113系?)の車内が殺人の舞台となるが完全犯罪を目論んだ犯人が予想していなかった尾行者の存在によって犯行が暴かれる話。

日本ペンクラブ編「悲劇の臨時列車」所収の風間一輝作「夜行列車」では大阪行き最終列車のデッキに乗り合わせた3人の男女それぞれの過去と人間模様を哀愁とハードボイルドが入り混じったタッチで描いています。

また、倉光俊夫作「吹雪の中の終電車」は雪の相模平野を疾走する最終電車を舞台に、ただ一人乗り合わせた男が体験する怪異譚。読んでいて怖さと同時に寒々しさが付いて来るので冬の夜に布団の中で読むと雰囲気満点ではあります(笑)

これらの作品に共通して描写されているのは最終列車の持つ独特の寂寥感でしょうか。夜汽車の中でも最終列車というのは作家の琴線を刺激する要素がことのほか多いのでしょう。
誰もが寝静まった深夜、暗闇の中を疾走する最終列車は乗っていても外から見ていても何か哀愁と侘しさが付いて回る気がします。
(この哀感は田舎に行くほど強くなる気もしますね)

さて、最終列車を模型で再現しようと思ったら欠く事ができないのが「室内灯」でしょう。
今では鉄コレなどの一部を除けば大概のNゲージモデルが室内灯を後付けできる様になっていますが、KATOの北斗星(初期モデル)やTOMIXの四季島など室内灯標準装備のモデルも少ないながらリリースされています。
但しそれらはスペシャリティな編成に限られ、上記の最終列車の哀愁をかき立てるであろう普通の車両ではまだまだの様です。
ZゲージではマルイのProーZのコンセプトが「室内灯標準装備」だった事もあってか後に続くクラウンや六半のモデルは大概室内灯が装備されています。

ラインナップにはオハ35系やスハ43系などもあるのでこういう用途には好適です。
真っ暗なテーブルトップのレイアウトでも室内灯のついた列車が走ると独特の郷愁が掻き立てられるのは鉄道模型ならではの楽しみと言えます。

特に寝る前のひと時を使ってそれができるというのはまさに至福というものでしょう。