光山鉄道管理局・アーカイブス

鉄道模型・レイアウトについて工作・増備・思うことなどをば。
こちらはメインブログのアーカイブとなります。

鉄道ミステリとNゲージ・41「浜名湖東方15キロの地点」と0系新幹線

2024-10-23 05:41:48 | 書籍
 今年は東海道新幹線開業60周年に当たります。そんな訳で当ブログも少しあやかってみようかと(笑)

 この間のブログのコメントで「鉄道ミステリと鉄道模型」ネタで「0系新幹線をなかなか取り上げられない」といった内容の返事を書きました。
 事実「鉄道ミステリに合わせて該当する鉄道模型のモデルを取り上げる」というコンセプトなので、記事を書いた当時はネタの宝庫でありながら0系新幹線をそうそう何度も出せない様な気分になっていたのは確かです。

 ですがその後エンドウのモデルや救援車のモデルなどがいくつか入手できた事もあり、そろそろ0系ネタを解禁しても好いかなという気分になってきました。

という訳で今回はその第一陣としてカッパノベルズ「下りはつかり」所収の森村誠一作「浜名湖東方15キロの地点」を取り上げたいと思います。

 この世の中に面白いものは何もないと信じているノンポリを自称する有閑大学生の主人公が、肉体関係にあった過激派女闘士が内ゲバで殺害された事をきっかけに彼女を殺した反対派を出し抜くために西側のA国大使が乗る新幹線特別列車を爆破しようと計画する。だが警備厳重な専用列車を爆破する方法で行き詰った主人公が新聞の交通事故の記事を見てひらめいたアイデアとは・・・!

 というのが大まかなストーリーです。

 他の鉄道ミステリが新幹線利用のアリバイトリックを題材に選ぶ事が多い中、本作はそのものずばりの新幹線爆破計画を選んでいるところが面白いところです。映画の新幹線大爆破に6年先んじていますし。本作の主眼になる着想は実際に本作を読んで頂いた方が良いと思いますのでここでは割愛しますが、今でもやろうと思えば実際にできてしまいそうな事なのでくれぐれも真似などしないように(汗)

 それを別にすれば過激派によるデモや騒乱が日常的に起きていた当時の世相を反映した内容で、これまで取り上げてきた鉄道ミステリの中で最も時代の空気を反映した一作という事は言えるでしょう。実際、初読の当時〈1975年)わたしも騒乱の描写に違和感は感じなかったですし。

 本書が書かれたのは1969年の事で作中で過激派のデモによる混乱を避けるために特別列車が品川駅から発車する描写があるのですが、新幹線の品川駅が開業するのはずっと後の2003年の事だったりします。

 今回の主役は勿論0系新幹線。
 時期的に大窓仕様の前期型なのは間違いないでしょう。この仕様のNゲージモデルは1975年に学研がリリースした物が最初でしたが、長い事追随モデルがなく最近になってマイクロやTOMIXから現在の水準の造形モデルがリリースされています

 わたしの手持ちは学研のモデルですが、西ドイツトリックスモーター搭載の動力が自慢でした。
 が、M車が片軸駆動で牽引力不足なのに加えてT車の台車の転がり抵抗がこれまた大きいため5連以上の運行はかなり困難。5連でもそう速く走れないという困ったモデルでした。

「TEZMO SYNDOROME」と「趣味のカラー」のはなし(笑)

2024-10-15 05:48:32 | 書籍
 単行本の発売、RM MODELSへの出張版の掲載とここにきて動きが急なWEBコミック「TEZMO SYNDOROME」丸3か月ぶりの新作が掲載されました。
 今回は一読者の立場から見ると「そう来たか!!」感の強い「マイクロエース・趣味のカラー」ネタです。

 例によって本編をお読みになってから、以下の思い出話(というか一読者の勝手な駄弁り)に移って頂くのがよろしいかと思います。
 「趣味のカラー」でピンと来た?TEZMO SYNDROME(テツモ・シンドローム)40話

 実物をご存じない方もおられると思うので補足すると「趣味のカラー」とは1980年代末期にマイクロエースが既存の日本型車両に外国のTGVやアムトラックなどのカラーリングを施してセット販売していたシリーズの事です。
 当時としてはあまりにぶっ飛んだコンセプトのせいか売れ行きは芳しくなかった様で昭和の末期頃「池袋の駅前広場近くの露店で趣味のカラーのセットがたたき売り状態になっていた」現場を見たことがあります(懐かしいなw)

 こんな事を書いているわたし自身からして、新製品当時はあまりの企画のぶっとびぶりに少なからず引いてしまっていたマイクロの「趣味のカラー」ですが、21世紀以降の趣味の再開後何年かしてから、ばらしの中古モデルを何両か入線させています。

 あの頃は際物臭さが全開でしたが、それから時代は流れ実物の鉄道でもオリエント急行がD51に牽かれて日本の線路を走り、新幹線のコスプレをした気動車が登場したり、キティちゃんやエヴァンゲリオンのカラーリングの新幹線が疾走する時代になってみると、ある意味実物の方がテツドウモケイ趣味人の先を行っている感じすらしますから、逆に「趣味のカラー」も実際にありえそうな錯覚すら感じさせますね。
 185系の157系風カラーを見たときなんか思わず「リアル版趣味のカラーだ!!」と思ったものですが、まさかそれがラウンドハウスで模型化されるとは思いませんでした(笑)


 そう思うとマイクロの「趣味のカラー」はそうした傾向の先取りともなっているのかもしれません(尤も、先取りしすぎて今の時点ですら時代が追い付いていない気もしますがw)

 尤も、当のマイクロ自身は後にイベント限定品名目で「ブルトレカラーのEF61」とか「581系カラーの715系編成」とかのオリジナルモデルを出してはいますが、趣味のカラーに比べるとマニア受けする範囲内に小さく収まってしまっている感じもしないではありませんw 


 まあこういうのはコミック本編で風奈が語っている様に「個人レベルのお遊びみたいなネタをメーカーが正規品として発売した事のユニークさ(もっと言えばある種の趣味人にとっての「嬉しさ」「解放感」)を素直に愛でる事が王道なのだろうなとは思います。

 ところで、作中で風奈がTGVカラーの185系につなげるために手持ちのEF200をSNCF風のカラーリングにリペイントする展開があるのですが、それに近い例としてわたしも大昔に前ユーザーが塗り替えたと思しき「カシオペア牽引機カラーのED75」というのを新宿のぽ〇で格安で入手した事があります。
 安かったのも確かですが、実は店頭でこれを手に取った時「なんだか無性にワクワクする様な嬉しさ」を感じたのも確かで、その時はこのED75に模型という趣味が持つ自由さ、闊達さを教えてもらったような気がしたものです。

 (で、その半年後くらいに実際の「趣味のカラー」の10系を入手するのですがw)

 実際に自分のレイアウトを持ってみて気が付いたのですが最初は「自分のお気に入りを走らせる」ので十分満足していたのが、やがて「レイアウトにも何かお祭りが欲しい」という気分が徐々に湧き上がってくるものです。そうした自分イベントのひとつとして「年越し運転」とか「聖夜運転」があるのですが、そこで走らせる編成として「適度に傾奇いた車両とか編成」があるとお祭り気分がより盛り上がる事があります。
 (これはレンタルレイアウトの運転でも同様w)

 昔ならそういう「お祭り編成」みたいなのは、単なるおふざけ以上の印象がなかったと思うのですがあらゆる車両がモデル化されている今の時代ならもう少し受け入れられるのではないかと思えるのです。

 あるいはJAMとかグランシップみたいなイベントの中でもお祭り気分の彩として傾奇編成がちらほらみられるようになって来ていますし(でも傾奇者ばっかりでも困るのも間違いないのでそこはまあ、各自の節度という奴でw)

 そこまでレイアウト(レンタルを含む)が普及し、大概のマニアが「トランク一杯のブックケースの編成を持ち歩く」様な時代となった今なら或いは「趣味のカラー」の意義も再認識されるかもしれません(爆笑・・・でも半分本気)


 以下余談(笑)

 今回の話は基本「風奈と高島先輩(単行本未登場)がTDFの駅前ビル(笑)の中の居酒屋で模型談議にふけるだけ」の内容なのですが、このまったりとした雰囲気は魅力的であると同時に田舎者のファンには眩しい「都会のマニアのライフスタイルの理想像」でもあったりします。こういう風に「気の置けないファン同士でテツドウモケイをネタに一杯やる」なんて事はイベントを別にするとなかなかできませんから。

「ジオラマ作品集」

2024-10-05 05:22:27 | 書籍
 帰省ネタからまたまた順番が前後して今回はJAMの戦利品から。

 JAMの展示の中にNゲージスケールで畳一枚ちょっとのサイズで実物準拠に近い「新宿駅」のジオラマを出展されている方が居られまして、まるで黄金期特撮映画のミニチュアセットを思わせるスケール感((なにしろ南口前の道路の幅ひとつとっても運転主体のレイアウトではまず拝めないものです)圧倒されまくりだったのですが、そのすぐ後にYFSさんのブースを覗いたら、そのジオラマを含めた作品が写真集になっているのを発見。

 速攻で財布を開いてしまいました(汗)

 作者のMAJIRI氏はYOU TUBEでもこれらのジオラマを公開されており、その界隈では有名なモデラーとの事ですが、これだけの密度の高いリアルな作り込みを見るとそれもむべなるかなと思います。

 レイアウトやジオラマで大都市を造形するのは21世紀に入ってからの鉄道模型トレンドのひとつと思いますが、その中でも今回の写真集の題材は実物準拠でスケール感のあるジオラマをものしている点が最大の特徴と思います。

 しかも実景準拠故に市販のアイテムがほとんど使われておらず、一部を除いてレールとミニカー、人形や樹木以外はほぼフルスクラッチかそれに近い形で製作されている様でその熱意と粘りは半端ありません。

 (それでいて、比較的市販のストラクチャーを多く使っている夜景のジオラマでもその印象が変わらないのも凄いところです)

「やろうと思えばNゲージスケールでもここまでできるのか!」という驚きと共に、その風景の切り取り方のセンスや模型と背景のつながりの自然さなどに学ぶところを多く感じる一冊でした。

 なお、同氏の作品で現在最も手軽に見られる印刷物はたぶんKATOの新照明システム「ジャストプラグ」のパンフレットの作例だと思います。

「小林信夫の模型世界」

2024-09-24 05:11:15 | 書籍
 今回のネタはJAM2024最大の戦利品のひとつ(と、わたしが勝手に思っている)

 機芸出版社刊「小林信夫の模型世界」

 こちらもJAMで先行発売という事で矢も楯もたまらず会場内を駆けずり回りました。会場不案内の事とてパンフも碌に見ずに「機芸出版社」のブースを探して駆けずり回る馬鹿なわたし
 (「IMONなら置いてある」事にもっと早く気付けばよかったのに)

 本書は昨年物故された小林信夫氏がTMSで連載されていたイラスト入り製作記事の総集編です。
 毎月20日過ぎに手に取っていたTMSでわたしが昨年のその日まで毎回楽しみにしていたのが小林氏の記事でした。

 徒な細密主義やリアル志向に溺れず、それでいて「模型の楽しさ」が横溢していた氏の記事はともすれば模型の世界でもカチカチになりそうになっていたわたしの頭を揉み解してくれる一服の清涼剤でした。
 氏のイラストに初めて触れたのは昔のGMのカタログのイラストからでしたが、氏がイラストだけでなく本文でも才を発揮されていた事を知ったのは本書のあとがきでです。
(レイアウトに飛行場を組み込む記事で「ゼロ戦の模型は黄色く塗ってテキサンに見せる(素人はだませる)」という一文も氏の執筆だったとは!!)

 本書の冒頭、氏の嗜好の原点となったのが「小レイアウトと小型車両」の小レイアウト「三津根鉄道」にあった事も書かれていますが、あの当時いわゆるスケール志向とは別に「省スペースで小型車両を走らせる楽しみ」をアピールした点でこのレイアウトが小林氏のみならず当時のファンに与えた影響は大きかったと思います。

 車両ではなく「鉄道そのものをものする」という愉しみをオリジナリティあるフリーやショーティで実現させるという方向性は16番の普及とNゲージの登場前後から一旦廃れたものの、後のナローの普及やBトレイン、初期の鉄コレで再び脚光を浴び始めたのは周知の通りです。21世紀の始めというタイミングで小林氏がこの方向で記事を上げ始めたのは偶然ではなかったと思います。

 イラストばかりか作例のレイアウトでも「良質の幕の内弁当」を思わせる、コンパクトな中にも密度と質と楽しさが詰まっている本書の写真やイラストは、それだけでも圧倒されつつ満腹感に浸れるものです。

 わたし自身、幼少時その三津根鉄道にリスペクトされたと思われる某氏の小レイアウトの製作記事(特に名を秘す)に酔っぱらったひとりなのですが、おそらくそれゆえに小林氏の記事には少なからぬ共感を感じていたのでしょう。その記事中でレイアウトと並んで紹介されていた小型車両の改造記事なんかも小林氏の模型ポリシーに近い物を感じましたから。

 その流れの中で車両に関しても氏がナインスケールの「KSKタイプCタンク」を手掛けたり、最晩年に「猫屋線」「ノス鉄」の箱絵でも健筆を振るわれていた訳ですが、それらに通底するのは「実車のメカニズムの知識・センスに裏付けられつつ、作者の趣味性とセンスを貫く」というフリーモデルの設計ポリシーだったと思います。

 それらが詰まった連載記事を一冊にまとめたのが今回出た本書ですが、改めて読み返してみると文章も図版も実に濃密で、イラストはもとより写真一枚・文章の1行に至るまでゆるがせになっていません。連載時の時には(わたし的には)「一服の清涼剤」だったのが、いざ一冊の本になったのを通しで読むと「強壮剤の一気飲み」に近い感覚の読後感を残すのです。

 再録中心の本なのに、これほど「趣味人としての元気をもらえる一冊」というのもそうはありません。

 あとがきに書かれていますし本文でも本人が軽く触れられていますが、小林氏自身一時期健康を害された時期があったりと決して順調とは言えない生涯だった様ですが、そんな時期を経てすらあれだけ溌溂とした筆致の記事や作例を次々にものしていた事を知るに及び、趣味人としての氏のバイタリティと生命力には驚嘆せざるを得ません。
 (それが端的に示されているのが本書にも載っている「初代レッドアロー」製作記事の件です)

 同時に、それらの記事を読むたびに無言の鞭撻を通して元気とやる気をもらい続けてきた事への感謝の念を改めて感じます。

 購入したその日のうちに「わたしの宝物確定」となる一冊に巡り合えたこと、それを久しぶりのJAMで手にできたこと、それが最大の収穫でした。

 最後に
 改めて氏のご冥福をお祈りいたします。

「オオカミが鉄道模型をはじめるマンガ」

2024-09-15 05:52:46 | 書籍
 今回もJAM2024の(わたし的に)狙い目アイテムのはなしから。

 前回紹介の「TEZMO SYNDOROME」と同時発売のコミック「オオカミが鉄道模型をはじめるマンガ」(作 らつた)をば。

 本作は同じ作者の「オオカミが電車を運転するだけのマンガ」の姉妹編として一昨年辺りからRM MODELSで連載されていたマンガの単行本化です。
 登場人物も前作から引き続き出ているキャラも多く(というより「前作の10年後」のはなしらしいです)

 指導運転士に昇格した主人公の大神たち(勿論オオカミ)が「会社のイベント展示でレイアウトを出展する事になり、大神はじめ毛鉄研修センターから急遽集められたスタッフたちが、ああでもないこうでもないとレイアウトを作り上げてゆく」という話を通して「鉄道模型とレイアウトの製作入門」をマンガ化した一種のハウツーコミックの体裁。

 てんやわんやの末にレイアウトが形になって行きますが、さてどうなりますか


 というのが大まかなあらすじ(も何もほぼ全編がこの通りの内容なのですが)

 鉄道模型に限らずかつてはこの種の入門マンガは見るからに「入門書をマンガにしただけ」レベルでマンガとしての魅力の点でやや見劣りする物が多かったものですが、かの「サルでも書けるマンガ教室」のヒット以降はマンガ単体でも楽しめる入門マンガが次々現れました。

 更に今世紀に入ってからは普通のマンガにハウツーの要素を加えて読者を引っ張る方向(最大の成功作が「ゆるキャン△」ですが、鉄道模型ネタでも「初恋れーるとりっぷ」「不器用な巧ちゃん」を以前紹介しています)増えていますが、殊本作はレイアウトマンガの入門書として決定版に近い一作ではないかと思います。

 その大きな要因となっているのがキャラクターが可愛らしいオオカミのキャラで成り立っているところ。
 鉄道模型という入門マンガには地味な題材だと人間を主人公にするとどんなイケメンや美少女が出てきても最後まで読者を引っ張ってゆくのが難しい気がしますが、オオカミをキャラクターに据え、しかもそのひとりひとりがキャラクターとして立っているので入門書を離れて単にマンガとして読んでも引っ張られるのです。

 「マンガとして立っている」という事は「テツドウモケイに興味のない人でもそこそこ楽しめる」という事でもあり、普通の一般人(まあ、そこそこマンガを読んでいる人、という但し書きが付きますがw)にもお勧めできる鉄道模型漫画と思います。

 それでいて前作の10年後という設定なので「オオカミが電車を運転~」のキャラクターの何人かも客演しているので前作を読んだ人ならさらに楽しめるというおまけつき(笑)

 わたし自身、自分用だけではなく模型趣味の弟(専らアニメモデル専業ですが)用にもう一冊買って送ろうかと真面目に考えているくらいで(そろそろ通販で買えるかな?)

「TEZMO SYNDOROME」単行本化!!

2024-09-10 05:39:14 | 書籍
 今回のJAMで「これだけは買って帰るぞ!!」と固く決意していた(笑)本がいくつかあり、幸いにしてその目的も達成できたので、購入順に紹介したいと思います。

 まずは当ブログでもここ2,3年前から紹介(感想文というか思い出ばなしみたいな駄文の形で当ブログでネタにしてきた)の佐藤一繝作「TEZMO SYNDOROME」が待望の単行本化!
 しかもそれが特典付きでJAM先行販売ときたらこれは行かなければならないでしょう(笑)

 今回はこのためにあの大行列に並んで待ったと言っても過言ではありません(って、他の本もそうなのですがw)
 開場20分後の会場に入ってまず探したのがRM MODELSのブースでしたから、あの時のわたしが如何に焦っていたかが知れようという物です(爆笑)

 それだけに真っ先に本書を包んでもらった時には「これでここに来た目的の半分は達成した」とすら思えるほどの充実感すら感じました。
 コミック2冊買うのにこれほど焦ったのも本作の前人気がどれくらいか見当がつかず、買い逃しを恐れたからだったのですが、全くいい歳したおっさんが何やってんだか(汗)

 ですが手に取った本作は期待に違わぬものだったので、帰りの電車の中で一気に読破する勢いでした(恥)

 今回はWEB掲載の14話までを収録していますが、各話の加筆・修正に加えて末尾についていた各モデルの解説ページがカラーでリライトされているのでWEBを読んだ方でも満足行く中身になっていると思います。
 で、改めて一冊の本となった本作を読んでみて思うのは(WEBの時にはそこまで意識しなかったのですが)各話に詰め込まれた旧型Nゲージモデルに関する蘊蓄の情報量の多さと濃さ!
 
 紙媒体でスマホよりも紙面が広くなったために本来の情報量が明るみに出た様な印象でした。
 キャラクターの描き分けやストーリーの運び方などは従来の鉄道模型漫画とは一線を画しているばかりか下手な専門書よりも濃い情報を破綻なく落とし込んでいる辺りは次回紹介の一冊を含めて「新世代の鉄道模型漫画」の姿を感じさせるものです。

 これはぜひ続刊を期待したいところですね。

 余談
 今回の単行本のオマケにはイラストカードの他「ステッカーが付属」しています。

 これをどう使うかは文字通り「わかるひとにはわかる」ものですが、このステッカーだけ別売りしてくれない物か(2冊買えば良かったのでは?)

「おとなの工作読本2・鉄道模型特集号」

2024-08-27 05:06:33 | 書籍
 先日の塩尻行きで1番の掘り出し物がこれでした。

 誠文堂新光社の「おとなの工作読本2・鉄道模型特集号」
 本書は2003年に上梓されたムックですが、2003年時点での鉄道模型の魅力を一冊に凝縮したような構成で非常に読みで(と使いで)のあるものです。

 冒頭の西村京太郎と加山雄三の鉄道模型ライフのインタビュー記事で鉄道模型ホビーの魅力を俯瞰して読者の関心を掴み、続いて当代著名な鉄道模型メーカートップのインタビュー紹介(専門誌はもとより入門書でも意外とこういう紹介をしているものは少ない)でメーカー毎のこだわりを伝える構成。

 この部分だけでも十分お腹がいっぱいになりそうなのですが、それに続いて石坂義久氏の「鉄道模型入門書、専門誌の歴史」が語られ、いのうえこーいち氏がHOを中心にしたゲージ論を俯瞰。小林健二氏の手になる金属模型工作の工具の作り方などよりディープな世界に読者を誘います。

 ですが本書の後半の白眉は前記の石坂氏による「Oゲージ交流3線式B形電機の作り方」(図面付き)松井大和氏の手になるパイクの制作法といった「鉄道模型工作」関連記事。
 とどめに当時の「模型とラジオ」で菊池文雄氏が執筆されていた「16番153系ペーパー車両の作り方」井上昭彦氏の「OゲージオシレーチングエンジンのライブスチームBタンク製作」の記事をそっくり復刻。

 極め付けは前にわたしも紹介した「紙で作る日本の蒸気機関車」からE10のペーパークラフトを型紙込みでそっくり復刻しているのです。

 つまり本書を買えば少なくともHOサイズのE10が作れるということでもあります(驚)

 これほど内容の濃い、読みでのある一冊がこれまで私の目に触れなかったのが不思議なくらいですが本書の上梓された時期が私が鉄道模型の趣味を再開する直前の時期だったからではないかと思います。
 もし、趣味を再開した後でこれを見ていたらわたしなら絶対に買っていた一冊ですから。

 わたし的には「名著」と読んでも差し支えない本ですが、これがたった110円で買えたのですから文字通りの掘り出し物。雨に降られまくった家族はともかく、わたし個人はこれだけでも塩尻まで出かけた値打ちは十分ありました。

 E10だけでもこの夏作ってみようかなと思っていますw
 (とか言いつつ相変わらず暑いのですが汗)

カラーブックスの「JRの動態保存車両」

2024-08-18 05:15:34 | 書籍
 今回は鉄道ネタのカラーブックスから。
「JRの動態保存車両」(諸河 久・花井 正弘 共著)をば。

 本書は平成4年現在JR各社が動態保存している車両を紹介しているものですが、本の性質上メインとなっているのは専ら機関車となっています。

 当時から有名だったEF58 61やD51 498などがメインを飾っているのは勿論ですがC57 1の「やまぐち号」やED18のトロッコ列車などの動態保存車両の牽くイベント列車の探訪記にも一章が割かれていたりします。

 本書に出てくる機関車の大半は後にNゲージの完成品としてリリースされているので、ガイドブックとしては今でも通用するかもしれません。

 さて、本書が出てから30年経ちますが、その間にC61とかC58などレストアを経て復活した機関車も出てきていますし、またそれらがイベントや観光用に運用されたりする様になりましたから、ある意味時代の様変わりを感じさせはします。

 今もカラーブックスが出続けていたら多分この本も続編が編まれていたでしょうが、そこが惜しい気がしますね。

今月の「TEZMO SYNDOROME」と秘境駅のはなし

2024-07-16 05:12:23 | 書籍
 4月の更新以来、随分と間が開いたWEBコミックの「TEZMO SYNDOROME」が先日2か月ぶりに更新されました。

 (その間に一部のコンテンツが有料化された様でバックナンバーを読むのが少しつらい状態になっていますが)

(鉄道ジャーナル社「日本の駅」112Pより画像引用)
 今回は「秘境駅」がテーマでした。

たまたま風奈が読んでいたレイアウト本を覗き込んだ同居人の麻里が「秘境駅」に惹かれたところから、風奈が麻里を「東京から日帰りできる秘境駅」に案内するというのが今回のストーリー。
まあ、風奈が案内するような場所だけに一筋縄にはいかなかった・・・という展開ですがw


 マンガの記事をネタにわたし個人の思い出話に浸るという当ブログの性質上、ここはやはり本編を読んでからブログに戻って頂く方が良いと思います。
 
 ご注文は「秘境駅」ですね?(ただし都会の)TEZMO SYNDROME(テツモ・シンドローム)39話

 今では旅チャンネルで「秘境駅専門番組」まで放送されるほどメジャーな趣味になりつつある(笑)秘境駅ジャンル。

(鉄道ジャーナル社「日本の駅」112Pより画像引用)
 流石にわたしの現住地周辺には秘境駅と呼べる様なところはないのですが、故郷の方は秘境駅の宝庫みたいな場所なのでこういう題材には少々惹かれるものがあります。
 うちの実家周辺で言うなら山田線にあった「大志田」と「浅岸」が秘境駅の双璧でしたが、現在はどちらも廃駅です。

 わたしの子供の頃に(勿論国鉄時代)遠足で停車した事があるのですが、どちらもスイッチバックの中継点みたいなロケーションで、見た目の秘境感がそれなりにある駅だった記憶があります。
 思えば県庁所在地なのにスイッチバックの駅がふたつもあるという事自体、結構凄いはなしではありました。

 昭和47年時点では駅舎もあって駅員もそれなりにいた様ですが、国道から離れ過ぎていた場所だけに周囲の人家も殆どなく、末期には一日2,3本しか列車が来ないホームと待合室だけの存在になっていた様です。
 今でも駅の跡は多少残っている様ですが、真面目に蛇や熊の心配をしなければならない所だけに、帰省の折でもあそこに出掛けるのは少々躊躇します(実家から三番目に近い駅だったのにw)

 まあ、この辺で話題を変えて
 本編に登場している鶴見線はわたしも行った事が無いにも関わらず模型だけは在籍している線区でして、趣味の再開直後くらいにラウンドハウスの205系を入線させていましたし、後にはクモハ12なんかも入ってきています。
 もちろん当時の購入動機は鶴見線が好きというよりも「短編成で様になる電車」という基準でしたから偉そうなことは言えませんが汗

 ですが、秘境駅のある様なローカル線というとわたし的には「単行のキハ52やキハ110みたいなのが人里離れた山の中でひっそり停まる様な駅」を連想していましたから「海と工場街」といういわば都会の秘境みたいなところを走る線区というのは意表を突かれると同時にかなり惹かれるものがあります。

 今気づいたのですが、1960年代頃の16番のレイアウトの駅は駅前に店一軒なく、駅前の道路も外部に繋がっていない様な物が大半でした。
 それでいてシーナリィは山間部や田園地帯の物が多かったですから、何の事はない「秘境駅のオンパレード」みたいなものでしたね(笑)

マンガ「ぱらのま」と終端駅のイマジネーション(笑)

2024-07-09 05:10:18 | 書籍

 以前、当ブログでも紹介した事のあるKashmir作の「ぱらのま」(白泉社・楽園コミックス刊)の最新刊をひと月遅れくらいで買ったのですが、その中の一編がわたし的に刺さるものがあったので今回はそのはなしから。

 本作は「ニートだか女子大生だかよくわからない主人公が気の向くままに鉄道やバスを使って首都圏からの日帰り旅、あるいは温泉旅を楽しむ」という、端的に言えばそれだけの内容・・・と数年前に本作を取り上げた時にはそう書きました。

 ですが、その後巻を重ねるごとに題材と主人公の蘊蓄がディープな雰囲気を醸し出し始め、元々の作風ともいえる一種独特のけだるさと相俟って「読み返す度に癖になる」という独特な読後感を味わわせてくれる一作となっています。
 特に旅先の街並みや田舎の風景を揺蕩う様に逍遥する主人公の描写は鉄道のそれに劣らず魅力的な部分で行った事のない処でも不思議な臨場感を感じさせるところが(わたし的には)魅力でもあります。

 で、今回収録のはなしですが、ある日突然「盲腸線の終着駅」にハマった主人公(名前は出てこない)がひたちなか海浜鉄道の阿字ヶ浦、東武佐野線葛生などの駅を探訪するはなしです。
 で、作中の白眉ともいえるのが帰宅した主人公が兄貴(これがまた無類の地図オタ)と「理想の終着駅(とその駅周辺)」を語り合いながら架空の地図や駅舎の見取り図をデザインしてゆくところでした。

 兄妹揃って夜伽代わりに「駅周辺の地形やら線路の配置、駅前にどんな店を置くか」を語り合い、デザインを煮詰めてゆくプロセスはまさに鉄道模型のレイアウトの創生に共通したワクワク感です。まあ、元が乗り鉄系旅マンガなので実際にレイアウトを作ったりはしないのですが(笑)最近はやりの架空鉄道の設定にも通じるところがあります。
(尤も地図オタの兄の方も「自分の理想の架空都市」の創生に余念がない様ですがw)

 このワクワク感はレイアウトのプランを作った事のある人ならば一度ならず経験した事のある物だと思いますし、読んでいたわたしも何か自分流の終着駅をデザインしたくなってきました(笑)

 余談ですがわたし的に好みの終端駅のモケイというと何といっても甲府モデルのペーパーキットです。

 自宅に居ながらにして頭端駅のこの雰囲気が堪能できるのですからたまりません(笑)

「鉄道模型修理ハンドブック」

2024-06-27 05:49:18 | 書籍
 この春にアキバのブックタワーで「オオカミが電車を運転するだけのマンガ」を買った話をしましたが、今回はその時に衝動買いした一冊から。

 鐡道書籍だけで1フロアが埋まっているこの店らしいというか、鉄道模型関連の本の充実度には目を見張らされます(というか、現住地の本屋では絶対に見られない充実度)
 何か面白そうな一冊でもないかなとか軽い気持ちで背表紙の並びを目で追っていて見つけたのが

 「鉄道模型修理ハンドブック」(伊藤 聡 著 幻冬舎MC)

 本書は鉄道模型修理歴10年の著者がモデルの故障の見分け方をはじめ修理の手順やノウハウを1冊にまとめたものです。

 従来、鉄道模型の関連書籍と言えば大概が「製作法」「作品集」「コレクターノート」のどれかでしたが、この間出たNゲージのレストア本に続き「旧モデルの再生」という第4の方向性で出された一冊と言えます。
 フローチャート形式で示された故障ポイントの見分け方や対処法は読んでいてわかりやすいですし実際の修理工程を豊富な写真で説明しているのも嬉しいポイントです。

 Nゲージよりも歴史が古い分修理の必要性が高い16番モデルに軸足を置いた構成ですが、実際わたし個人はHOや16番のレストアをする機会の方がはるかに多い(で、成功率が精々半分くらい)のでこういうハンドブックが出た事は単純にありがたいですし嬉しいものがあります。

 とはいえ、わたし自身の技量の問題(と性格的なせっかちさ)もあって本書を読んだくらいで修理が上手くゆくという保証がないのが辛いところですが(汗)本書を通しで読んでゆくとなんだか勇気をもらうというか「わたしにも修理が出来そうだ」という気分にさせてくれるのが一番の御利益と言えるかもしれません。
(流石にダイカスト変形を起こした蒸機のシャシを図面を起こした上で真鍮板切り出しで作り直すのはハードルが高いですし汗)

 で、その直後にさっそくこの本が役に立ちそうなジャンク品のHOモデルも入手しました。
 そのモデルについては次の機会にでも。

鉄道ミステリとNゲージ・その40「急行しろやま」

2024-05-30 05:16:02 | 書籍
 今回は久しぶりに鉄道ミステリと鉄道模型ネタから

 今回は徳間書店刊「犯罪交差点」所収の中町信作「急行しろやま」をば

 ある日、岡山県内を疾走する西鹿児島発大阪行きの急行「しろやま」から一人の男が転落死しているのが発見された。
男は広島から乗車した東京の教科書出版社の部長だったが、死体の頸部に絞められた跡があった事から殺人事件と断定され地元警察の樋渡、警視庁の津村の両刑事が捜査を始める。

 やがて捜査線上に被害者の部下の係長が浮かび上がるが、彼には犯行の前後には府中市の中学校にセールスに出かけていたというアリバイがあった―


 というのが大まかなストーリーです。
 作者が教科書の出版社に勤務していた経験があったとの事で出版社の内幕描写にはかなり力が入っており、当初は被害者の殺害動機も会社の労働争議に絡む軋轢が想定されていたりします(これ以上書くとネタバレになりそうですが)

 トリックの中心は例によって時刻表利用のアリバイですが、トリックの中心となる核は鉄道とは別な部分にあるので今でもそれなりに通用はしそうです(今ならアリバイよりも話題作りの豆知識のレベルだと思いますが)

 さて、本作に登場する「しろやま号」ですが、大阪~西鹿児島間を行き来していた寝台急行との事です。
 運行期間が昭和38年~47年のごく短い期間でしたが10系の寝台車とスハ43系旧客の組み合わせでスタートし、後期になるほど10系の比率が上がってゆく編成になっている様です(最終期には旧客は13両編成の1両だけになる)

 本作が書かれた当時(昭和44年)の牽引機はEF58、EF30、ED72、DD51がリレーしていた模様ですが、わたし的には「ED72」に特に惹かれるものがあります。
 いわゆる「鳩胸」と呼ばれる逆スラントノーズの前面はスタイリッシュに感じる上にわたしの故郷や現住地では見かけないデザインですから、これが10系客車を牽いている様を想像するだけでワクワクする訳でして。

 生憎フル編成のしろやまが組めるほど10系を持っていないので適当にショーティ化した編成しかできませんが、EF30やED72の牽く客車急行をレイアウトで走らせるのも愉しかったりします(最後の方はミステリそっちのけのはなしになってしまいました笑)

「日本プラモデル50年史」と鉄道模型のはなし

2024-05-16 05:27:30 | 書籍
 先日の上京では結構重いお土産が多かったのですが、これが「帰りの電車でくたびれ切ってしまい電車の間違えに気付かずに車内で眠ってしまった」遠因になっていますw

 その重量級のお土産の中から十数年前に出ていた「日本プラモデル50年史」(文芸春秋)をば。

 この本の存在自体は以前から知っていたのですが何分高価だったのと、ミリタリーとかアニメモデルとかのはなしが中心の様に見えた事もあってこれまで注目してこなかった一冊でした。
 中野の古本屋でこれを見つけて何の気なしに立ち読みしてみたのですが本の中ほどに「鉄道模型の一章があった」のを見て驚きました。

 元の題材がプラモデル全般の歴史を俯瞰する物なので、その性質上鉄道模型もプラ製系のモデルが中心に扱われているのですが、これまで、鉄道模型の歴史についてのはなしは専らブリキやブラスの模型の視点で書かれていた物が多く、プラ素材の観点から鉄道模型史を俯瞰する物には当たらなかったので、これだけでも面白く(わたし的に)新鮮さを感じる題材です。

 いわゆるプラキットとは異なる成り立ちの鉄道模型の場合、Nは勿論HOの方も完成品モデルが中心に取り上げられることになりますが、そこでも天賞堂やカツミ模型店はもとよりマイクロキャスト水野といったプラモデルとはなじみの薄いメーカーの名前がポンポン出てきて驚かされます。
 が、かつて飛行機なんかもソリッドモデルが主流でプラが傍系だった時代があった様に金属モデルが主体だった鉄道模型でもプラ素材はかなりの期間傍系として扱われた経緯があります。

 その壁を破ったのがNゲージの勃興にあったのも間違いありませんが、その後のHOでのプラ製品の増加や有井、長谷川といったプラモデルメーカーの鉄道模型進出など、これまでの専門誌の視点とは異なる形で「プラの鉄道模型の盛衰」が語られているのはなかなかに興味深い内容でした。
 この本は400Pほどのボリュームと本格的な装丁のされた本だったので、立ち読みしてもずっしり来る重さです。
 しかも400Pの中で鉄道模型の話はわずか10P弱のボリュームに過ぎないのですが、その10ページの内容がなかなか濃密だったのに加えて、定価の半額以下という安さと他のプラモデル史の部分も読ませる内容だった事もあってつい財布を開いてしまいました。

 で、帰りに道すがらで他の土産と共にこの本のずっしり来る重さが堪えたのも確かです汗

「オオカミが電車を運転するだけのマンガ」

2024-05-08 05:20:16 | 書籍

 先日の秋葉行きで入手した一冊から。

 一昨年くらいからWEBで話題になっていたコミック「オオカミが電車を運転するだけのマンガ」(らった作 NEKO PUBLISHING)
 これの単行本がWEB販売で売られ始めた事は知っていましたが、先日の上京を決めた時「どうせなら店頭で買ってみたい」と思い立って秋葉原の書泉ブックタワーに赴きました。

 開店直後の売り場で単行本を手に取りレジへ。
 紙の本はこの時の感動と手に取った時の本の重さ(軽さ?)と質感をも楽しむもの、それも家で配送を待っているよりも自分から買いに行く方が楽しい感じがします。
 (これの中間的なイメージが最近の「コンビニ取り置き」ですが本屋でもない店に本を引き取りに行くというのだけが違和感があります)

 まあ、余談はさておき

 本作の内容はタイトルそのまんま(笑)
 「関東の架空私鉄を舞台に電車を運転して、電車を車庫に入れて、電車を分割併結して、他社からの乗り入れ車両を運転したりする」という、それだけのマンガです。
 ですが本作の白眉と言って良いのはそれらを運転するのが「オオカミさんたち」であるという点。
 それも人間の世界にオオカミが紛れ込んだのではなく「元々がオオカミたちの世界の鉄道のはなし」として成立させているのが素晴らしいと思いました。

 それでいて運転に関してはこの種のファンタジーにありがちなおとぎ話的設定は一切なし。実車の電車を運転する時とほぼ同じ手順、運行システムが再現されていて職業人としての会話のノリも非常にリアリティがあります。
 (それでいて「俺は肉球に冷えピタを追加で」なんてセリフも飛び出してくる)

 第一実際の鉄道を舞台に人間を主人公にしたマンガでだったら、これだけ無味乾燥な専門用語が飛び交うだけのはなしに面白さのポイントをどこに感じたらいいのかわからなくなると思うのですが、キャラクターをオオカミにしたというだけで「まるでガンダムの日常描写を覗いている」様な面白さを出しているのですから。
 更にそれを支えているのが、一種温かみを感じさせるキャラクターの作画と丹念な日常描写。オオカミたちのキャラクター毎の描き分けもしっかりしていてリアルとファンタジーのバランスをうまく取っている印象でした。

 巻末の設定資料のボリュームも豊富で架空世界の架空鉄道創生の魅力が横溢しています。

 本作の作者は姉妹編としてRM MODELSに「オオカミが鉄道模型を始めるマンガ」というのも連載していますがこちらの方も(「TEZMO SYNDOROME」と併せて)単行本化を熱望いたします。

「残念な鉄道車両たち」

2024-04-16 05:42:23 | 書籍
 先日紹介した、近所の古本屋の閉店当日に拾えた本の中から。

 今回のキーワードは「ざんねん」です(笑)
 物はイカロス出版の「残念な鉄道車両たち」(池口英司 著)および講談社ビーシーの「ざんねんなクルマ事典」(片岡英明 監修)の2冊。

 近所の本屋の閉店で残念気分になっているわたしだというのに、そこで閉店当日に買う本まで「ざんねん」というのはなんだか因縁めいた気がしますが(笑)

 前者は主に国鉄時代からJR時代にかけて主に著者の視点から「設計当初の理念やコンセプトが貫徹できなかった残念な車両」を俯瞰した物です。
 なので一般的な知名度や人気の高いD51やキハ40系、185系なども含まれているのが面白いところでもあり、「はてな」と思いながら読み進めれば「なるほど」とうなずけるところもそれなりにある(一方で読む側の視点によって異論も出てきそうな内容でもありますが)ものです。

 鉄道車両の場合、設計に際して使われる環境に合わせて「どのような目的で、どのような用途で使われるか」が厳密に検討されるものですが、それでも実際に出てみるとその間の環境や社会情勢などの変化で期待された活躍が出来なかったりすることが往々にして見られます。

 また、従来になかった新機軸を取り入れようとする際には必ずと言って良いほど初期のトラブルが出てくるものですが、それが多発したり対応コストがかさむなどの要因でそれ以上の発展が出来なかったケースもあり、殊公共交通機関としての鉄道ではそれも致命的だったりもするものです(キハ81系とかDD54なんかが該当しますか)

 本書で取り上げられている車両の中にはファンの間で人気が高い車両も少なからずありますが、人気はあっても薄命に終わった物もまた多く、それが読む側にも「残念」として語り継がれる事にもなりましょう。
 (「不人気=マイナー」が直結しているクルマなんかと違って鉄道車両の場合は不思議と「判官贔屓」みたいに悲劇的な車両を推す向きが多い様な気もします。あ、わたしもそうかw)

 その点で本書の「残念な車両」にはどこか期待と挫折、という悲劇的な響きがノスタルジーと共に心に響きます。

 ところでもう一冊の「ざんねん」本についてはこのあとサブブログに上げる予定です。
 その際には以下のリンクをご参照ください(笑)

ホビーのごった煮「ざんねんなクルマ事典」