今回は少し推定の多い話です。
考察と言っても根拠の薄い所もあるのですがその辺はご容赦を。
この間TMSの76年2月号を読んでいてある記事に目が留まりました。
エコーモデルの阿部氏が製作していた「城新鉄道」の解体宣言、同時掲載されていた16番レイアウトの始末記です。
後者の記事では73年着工で8分通り出来上がっていた蒸気主体のレイアウトが諸般の理由から76年を持って解体されるまでの流れを記したものです。
ここで気になったのは「趣味として作られたレイアウトの寿命とはどれくらいのものだろうか」というものです。
さて、レイアウト全書、あるいはモデリング・テクニックを読んでいて気付くのは「第二次●●鉄道」「新●●鉄道」と言うのが散見される事です。
つまり、それらのレイアウトには第一次とか旧とかいった「先代のレイアウト」があった事になります。
JOHN ALLENのGD LINEの様に30年以上かけて仕上げられ、作者の死とともに消滅するようなケースもありますが、最初のレイアウトを作った物の諸般の理由から解体されるケースも結構あるように思えます。
上記の本で取り上げられているケースの記事からですとそれらのレイアウトの寿命は平均して4~7年位と推定されます。
これらはいずれも続編のレイアウトが作られているケースです。
中でも16番からNゲージに移行した銀河鉄道は面白いケースでこの第2次は10年近く経ても現役だったばかりか、そのベースの裏側に第3次レイアウトが組まれるという経緯をたどっています。
一方でレイアウトの中で長命と思われるのは宍戸圭一氏の手になる「鴨鹿鉄道」で初期のTMSに掲載された30年以上後に「とれいん」で再度取り上げられ改修を加えつつ現役だった事が知られました。
その他1975年7月のTMSに掲載された「国鉄香春線」も作者の自宅内に占有スペースを持ちつつ90年代頃のテレビ番組で紹介されるのを見た記憶があります。
クラブ所有としてはTSCのレイアウトも1960年代初めの建設開始から改修や移転を経て少なくとも1977年以降までは使われていたようです。
あいにくな事に専門誌ではレイアウトの製作記事は多いのですが解体記事とか長期にわたる維持の記事は極端に少ない(当り前か)です。
ですからこれらのデータをもってレイアウトの平均寿命を計算する事はできません。
ましてあの頃よりもレイアウトが普及している今、レイアウトの平均寿命はもっと大きく変化していると思われます。
長くなっているのでしょうか、それとも・・・
ところで、私の所属しているクラブでは運転会用のモジュールが保管されています。
10年前のクラブ発足当初から存在するものも多いらしいのですが最近問題となっているのが「旧モジュールの劣化」です。
作られっぱなしで改修の手が入っていないという事もあるのですが、レールの汚れや建物類の劣化による破損がそろそろ出ているモジュールもあるとのこと、
更にベース自体も経年変化で反りや歪みが現れ始め、モジュールの連結時の調整範囲が拡大する傾向もあるようです。
鉄道模型が大人の趣味である事が標榜される以上は長期にわたって楽しまれ続ける事も条件と思いますが、レイアウト、あるいは車両の寿命(賞味期限と言ってもいいかもしれません)は少し考えてみる余地がありそうです。
もちろん、その過程の中で「レイアウトの寿命を決める要因」という物も炙り出されてくると面白いですが。
ついでなので車両模型についての寿命とか賞味期限についても考えてみたいと思います。
プラやダイカストを使っているNゲージや海外HOなどでは素材そのものの劣化による寿命がそろそろ気になる時期に来ているのではないかと思います。
保存状態や使われ方によっても左右されますが、プラ素材やダイカストの動力ユニットのクラッキングや膨張・変形のリスクは決してゼロとは言えません。
私の持っている中で最古の物は1971年モデルと思われるKATOのキハ20(T車)ですがこれは今でも現役です。最初に購入したM車のキハユニ26も走りのガタつきがかなり出てきていますがまだ「動態保存」レベルと言えます。
(もっとも後者の場合20年以上の中断期間の間直射日光にも当たらず箱詰めされていた事情を考慮する必要があります)
それ以外のモデルでも明らかに劣化で使えなかった物はごく少ないです。
中古で買ったトキ15000の台車のカプラー部がクラッキング分解したケースとエンドウのEF57のダイカスト部分の変形が目立った程度です。
ブラス主体の16番モデルでも動力ユニットにダイカストを使ったものでは微妙に変形の出現しているモデルがあるようです。
伝達部のゴムなどの劣化もありますがこれもどうにか対処可能なレベルでしょう。おおむね動力機構の単純なモデルほど走りの劣化は少ないようです。
車体については、おおむねプラよりは劣化の度合いは少なそうです。
ただ物理的な「寿命」と「賞味期限」となるとこれはまた違った意味を持っています。
先日親類から譲り受けてレストア中の35年前のC58。
ご記憶の向きもあるでしょうが、このモデルについては昨年天賞堂のプラ製品を入線させています。
この二つを並べると細密感はもとより走行性までもが大きな差が付いている事が誰の目にもわかります。
何しろ旧型はライト点灯どころか「銀色に塗っただけ」というレベルですし。
大雑把に言ってバブル時代以降に作られたモデルの場合、Nでも品質的な安定期に入っていますし16番もブラスモデルに関しては行く所まで行った感があるのでそれほど極端な差は感じないかとも思えます。
ですが単純に「旧製品だから悪い」と言い切る事もまたできません。
骨董的価値と言うのもあるでしょうし、現在のモデルに進化する過程で置き去りにされた何か(多分にエモーショナルな要素も多いのですが)が旧モデルから感じられる事も多い筈です。
私はどちらかというと走行派にちかい立ち位置ですから「先ずは元気に走ってくれればいう事なし」で出来る限り長く活躍してほしいと思っています。
先日のC56、少し前のC58の例で認識しましたが少しくらいの細密さもレイアウトで走る分には大きなアドバンスにはなりませんし、飾り物に徹するなら別に動力モデルにもこだわりません。
それだけに「走れる寿命」についてはメンテナンスも含めてもう少しデータが欲しい所です。
(写真は本題とは関係ありません)
光山鉄道管理局