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堤卓の弁理士試験情報

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19.5.10 審査の進め方

2007-05-10 17:50:21 | Weblog
 下記の特許出願についての審査の進め方を説明します。

1.特許出願の審査時の請求項
 請求項1 AB
 請求項2 AC
 請求項3 ABC
 ※A、B、Cは、発明特定事項を表します。

2.先行技術
 出願前の刊行物Xに発明特定事項Aが記載されていたとします。

3.請求項1の審査
(1)審査官は、まず、最初の請求項1について新規性等を審査します。
 刊行物XにAが記載されていますが、ABは記載されていません。
 したがって、請求項1のABは、刊行物Xを引用して新規性を否定することはできません。
(2)次に、進歩性ですが、Bが周知又は慣用技術であったとすると、刊行物Xに記載されたAにBを組み合わせることは容易であるとして進歩性が否定されることになります。
 この場合は、請求項1については進歩性がないとする拒絶理由に該当します。

4.請求項2の審査
(1)はじめに、請求項1の発明との関係で請求項2の発明が発明の単一性の要件を満たすかどうかについて審査します。
(2)請求項1の発明(AB)と請求項2の発明(AC)が発明の単一性の要件を満たすのは、同一の又は対応する技術的特徴(A)が、先行技術に対する貢献を明示する場合です(特施規25条の8)。
 しかし、Aは刊行物Xに記載されていますので、先行技術に対する貢献を明示しません。
 よって、請求項2の発明(AC)は、請求項1の発明(AB)との関係では、発明の単一性の要件を満たさないことになり、37条違反の拒絶理由に該当します。

5.請求項3の審査
(1)はじめに、請求項1の発明との関係で請求項3の発明が発明の単一性の要件を満たすかどうかについて審査します。
(2)請求項1の発明(AB)と請求項3の発明(ABC)が発明の単一性の要件を満たすのは、同一の又は対応する技術的特徴(AB)が、先行技術に対する貢献を明示する場合です(特施規25条の8)。
 刊行物Xには、ABは記載されていませんので、ABは先行技術に対する貢献を明示するものといえます。
 よって、請求項3の発明(ABC)は、請求項1の発明(AB)との関係では、発明の単一性の要件を満たすことになります。
(3)次に、請求項3の発明(ABC)について進歩性等の特許要件を審査します。その結果、拒絶理由がなければ、拒絶理由の対象とはなりません。

6.まとめ
 請求項1の発明については進歩性がないとする拒絶理由が、請求項2の発明については発明の単一性がないとする拒絶理由が通知されることになります。請求項3の発明については、拒絶理由がないときは、拒絶理由の対象とはなりません。

7.出願人の対応
 請求項1の発明について特許権の取得を断念するときは、請求項1を削除する補正をすることができるかどうか検討します。
 ここで、17条の2第4項の要件について検討します。
 特許要件が判断された補正前の発明は、請求項1の発明(AB)と、請求項3の発明(ABC)です。
 補正後の発明は、請求項2(補正後は請求項1)の発明(AC)と、請求項3(補正後は請求項2)の発明(ABC)となります。
 補正後の発明ACは、補正前の発明(AB)との関係では発明の単一性の要件を満たしません。したがって、この補正は、17条の2第4項に違反することになります。
 以上より、発明ACについて特許権を取得するためには、発明ACを分割することが必要となります。
 なお、発明ABCについては、ACを分割すると同時に、請求項1(AB)と請求項2(AC)を削除する補正をすることにより、もとの出願において特許権を取得することができます。
 請求項1(AB)と請求項2(AC)を削除する補正が17条の2第4項の要件を満たすかどうかについて検討しますと、補正前において新規性等の判断がされた発明がABとABCで、補正後の発明がABCですので、補正後のABCは、補正前のAB及びABCのいずれに対しても発明の単一性の要件を満たすことになり、17条の2第4項違反とはなりません。