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堤卓の弁理士試験情報

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19.5.9 出願の分割

2007-05-09 10:16:49 | Weblog
★出願の分割

1.分割の時期的要件
(1)特許法44条1項1号
 1号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について、補正をすることができる期間内であれば、特許出願を分割することができる旨を規定しています。平成18年改正前と同様です。
 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について、補正をすることができる期間は、次の()~()の期間です。
 ()出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(17条の2第1項本文)
 ()審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、当該通知において指定された期間内(17条の2第1項1号、3号)
 ()拒絶理由通知を受けた後48条の7の規定による通知を受けた場合の、当該通知において指定された期間内(17条の2第1項2号)
 ()121条1項の審判請求の日から30日以内(17条の2第1項4号)

(2)特許法44条1項2号
 2号は、特許をすべき旨の査定(次の()()の特許をすべき旨の査定を除く)の謄本の送達があった日から30日以内であれば、特許出願の分割をすることができる旨を規定しています。平成18年改正により新設されたものです。
 ()前置審査における特許をすべき旨の査定(163条3項において準用する51条)
 ()審決により、さらに審査に付された場合(160条1項)における特許をすべき旨の査定
 ここで、注意しなければならないのは、特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であっても、特許料を納付したことにより、特許権の設定登録がなされた後は、特許出願が特許庁に係属しなくなるため、出願を分割することができない点です。特許出願が特許庁に係属していることが、分割ができる大前提となります。
 なお、分割ができる30日の期間は、4条又は108条3項の規定により108条1項に規定する期間が延長されたとき、その延長された期間、延長されたものとみなされます(44条5項)。

(3)特許法44条1項3号
 3号は、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば、特許出願の分割をすることができる旨を規定しています。平成18年改正により新設されたものです。
 なお、分割ができる30日の期間は、4条の規定により121条1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間、延長されたものとみなされます(44条6項)。

(4)査定と審決の違い
 拒絶査定不服審判における審決は、特許をすべき旨の査定や拒絶をすべき旨の査定ではありませんので、44条1項2号及び3号の「30日」の期間に審決の謄本の送達後の期間は含まれません。
 つまり、査定という場合は、審決は含まないということです。


2.分割の客体的要件
(1)出願の分割が補正をすることができる期間内になされた場合(44条1項1号)には、次の()及び()の要件を満たすことが必要です。
 ()原出願の「分割直前」の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の「全部」を分割出願に係る発明としたものでないこと
 全部でないことの要件は、分割直前の明細書等を基準として判断します。したがって、外国語書面出願の場合は、明細書等が存在することが必要であり、外国語書面の翻訳文を提出する前は、分割はすることができないことになります。
 ()分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の「出願当初」の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であること
 分割出願はもとの出願の時にされたものとみなされることになりますので、原出願の出願当初に記載されていない新規事項を含まないことが必要となります。特許請求の範囲には新規事項を含まない場合でも、明細書に新規事項となる実施例を追加した場合は、その後の補正により当該実施例を削除しない限り、出願時の遡及効が認められないことになります。

(2)出願の分割が、補正をすることができない期間である、特許査定後、又は拒絶査定後であって拒絶査定不服審判請求前になされた場合(44条1項2号、3号)には、次の()~()の要件を満たすことが必要です。
 ()原出願の「分割直前」の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の「全部」を分割出願に係る発明としたものでないこと
 1号の分割の場合と同様の要件です。
 ()分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の「出願当初」の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であること
 1号の分割の場合と同様の要件です。
 ()分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の「分割直前」の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であること
 2号又は3号の分割の場合は、分割と同時に補正をすることができませんので、分割できる範囲は、分割直前のもとの出願の明細書等に記載されている発明に限定されることになります。補正により明細書に取り込むことができない発明については、もとの出願においては特許権の取得ができない発明であり、そのような発明については分割も認めないということになります。

3.特許法施行規則30条
 特許法施行規則30条は、「44条1項1号」の分割をする場合にのみ適用されることになりました。44条1項2号又は3号の分割の場合には、規則30条は適用されることはありません。
 したがって、2号又は3号の分割をする場合には、もとの出願について補正をすることができる場合はないことになります。
 2号の分割については、特許査定になっていますので、特許になるはずの請求項の発明を分割して、あらためて出願審査請求の手数料を納付して、審査を受ける、ということが考えられません。したがって、分割と同時に補正を認める必要性はないといえます。
 3号の分割については、もとの出願について補正をしたいのであれば、拒絶査定不服審判の請求をしてから30日以内に補正をすることになります。拒絶査定不服審判を請求しないで補正を認める必要性はないといえます。