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意匠法3条の2の解説(18.4.27)

2006-04-27 09:26:34 | Weblog
意匠法第3条の2の解説

 本条は、先願の意匠公報に掲載された意匠(創作意匠)の一部と同一又は類似の意匠は、新しい創作とはいえないため、拒絶することを規定しています。

 引用意匠は、先願(同日出願は含まない)であって、後願(審査対象)の出願後に意匠公報が発行された意匠登録出願に開示された創作に係る意匠です。

 後願(審査対象)の出願前に意匠公報が発行された場合は、意匠法3条1項2号又は3号が適用されることになります。

 意匠公報が発行されるのは、意匠権の設定の登録がされた場合(20条3項)と、同日出願で拒絶が確定した場合(66条3項)とがあります。意匠公報が発行されると創作された意匠の内容が公表されるからです。
 秘密意匠の場合には、意匠公報が発行されても創作された意匠は掲載されませんので、この段階では本項の要件を満たさないこととなります。秘密期間が経過して秘密意匠の内容が掲載されてはじめてこの要件を満たすことになります。

 本条は、新しい意匠の創作ではないとして後願に係る意匠の登録を拒絶するものですので、先願の意匠公報に掲載されたものであっても、それが創作された意匠として掲載されたものでなければ、引用例にすることはできません。
 例えば、出願に係る意匠を現した6面図以外の参考図(例えば、使用状態を示す図)に掲載されたにすぎないものは、創作された意匠として開示されているものではありませんので、引用例にはなりません。

 後願(審査対象)が部分意匠の場合には、部分意匠の類否判断の4つの基準のうち、2つのみが本条の判断基準となります。つまり、後願の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能と、その部分の形態とを対比して、引用例の意匠の一部と同一又は類似していれば、本条の引用例となります。
 意匠に係る物品(願書に記載された物品)と、全体における位置、大きさ、範囲は、本条の判断基準にはなりません。

 先願が部分意匠の出願である場合には、意匠登録を受けようとする部分(例えば実線で現した部分)以外の部分(例えば破線で現した部分)についても引用例となります。なぜなら、破線部分についても創作されたものとして評価することが適切であるからです。

 後願の出願人が先願の出願人と同一であっても、創作者が同一であっても、本条は適用されることになります。この点は、特許法29条の2とは異なりますので、注意が必要です。

 後願の査定時に、先願について意匠公報が発行されていない場合には、後願について本条を根拠として拒絶査定にすることはできません。
 後願について意匠登録査定の謄本を送達した後に先願について意匠公報が発行された場合には、後願について意匠権の設定の登録がされた後、当該意匠登録は意匠法3条の2の規定に違反してされたものであり、意匠法48条1項1号の無効理由に該当するとして、意匠登録を無効にすることができると解されます。すなわち、特許法29条の2の適用に関する知財高裁判決と同様に取り扱うことができると解されます。