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2022年5月15日 弁理士試験 代々木塾 意匠法29条の2

2022-05-15 04:45:10 | Weblog
2022年5月15日 弁理士試験 代々木塾 意匠法29条の2

(先出願による通常実施権)第二十九条の二
 意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、又は意匠登録出願に係る意匠を知らないでその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をした者から知得して、
 意匠権の設定の登録の際現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者(前条に該当する者を除く。)は、
 次の各号のいずれにも該当する場合に限り、
 その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、
 その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する。
一 その意匠登録出願の日前に、自らその意匠又はこれに類似する意匠について意匠登録出願をし、当該意匠登録出願に係る意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者であること。
二 前号の自らした意匠登録出願について、その意匠登録出願に係る意匠が第三条第一項各号の一に該当し、拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した者であること。


 平成10年改正において9条3項を改正し、拒絶が確定した出願については先願の地位を認めないこととしたため、拒絶が確定した先願と同一又は類似の後願について意匠登録される場合があり得る。先願者が自己の先願に係る意匠を実施しているときは、後願の意匠権によって後発的に実施が制限され、不測の損害を被る。そこで、後願の意匠権者と拒絶が確定した先願者との利害関係を調整するために、29条の2を設けることとした。

「意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、又は意匠登録出願に係る意匠を知らないでその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をした者から知得して」
 29条と同様に知得のルートが意匠登録出願人と異なることを要件としたものである。

「意匠権の設定の登録の際」
 29条とは異なり、意匠権の設定の登録時を基準とする。拒絶が確定した先願意匠の実施の継続を認めるものである。
 後願の出願後に実施又は準備を開始したときに29条の2が適用される。
 意匠権の設定の登録時は、手続補正書提出時より必ず後であるので、29条かっこ書に対応する規定を設けていない。

「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者」
 先願者の実施している意匠は、後願の登録意匠と同一又は類似する意匠であることが必要である。

かっこ書は、「前条に該当する者を除く。」と規定している。
 先使用権(29条)との重複適用を排除することとした。
 すなわち、先使用による通常実施権(29条)が発生するときは、先出願による通常実施権(29条の2)は、認めないこととした

29条の2第1号

 後願の意匠と同一又は類似の意匠について、自ら先願の意匠登録出願をしていることが必要である。
 先願意匠と後願意匠が同一又は類似であることが必要である。拒絶が確定した出願が先願の地位がなくなることによる不都合を防止するものであるからである(9条3項)。
 意匠審査基準の改訂により、先願が部分意匠で後願が全体意匠の場合に、全体意匠が部分意匠と同一又は類似するときは、9条1項が適用されることとなったので、先願の部分意匠が拒絶され、後願の全体意匠が意匠登録された場合にも、29条の2第1号の要件を満たすこととなった。

 先願者が先願に係る意匠と同一の意匠について実施の事業又はその準備をしていることが必要である。
 先願に係る意匠と同一の意匠を実施していた先願者が、後発的に発生した後願の意匠権によりその実施が制限されるのは、不当であるからである。
 先願に係る意匠と類似する意匠を実施していても、29条の2第1号の要件は満たさない。この場合は、先願者の実施を保護する必要はないからである。この点において、衡平の見地から認められる先使用権と異なる。

29条の2第2号

「第三条第一項各号の一に該当し」
 拒絶査定の理由という意味ではなく、客観的に3条1項各号の1に該当していれば足りる。審査官の拒絶理由に拘束されない。
 先願意匠が3条1項各号の1に該当するときは、先願意匠と同一又は類似する意匠も同様に拒絶されるはずであるから、先願者は先願意匠の実施をしていても後発的に後願意匠権によって制限されることはないという安心感をいだくのが通例である。この安心感を保護するため、先願意匠が3条1項各号の一に客観的に該当することを要件としたものである。

 3条1項1号又は2号の意匠が、先願の出願前の他人の登録意匠である場合は、29条の2の先出願による通常実施権は認められない。他人の意匠権の侵害となる行為に、先出願による通常実施権を認めるのは適切ではないからである。

 先願の拒絶査定の理由が3条2項であったとしても、後願の意匠権の侵害訴訟において、客観的事実として先願の意匠が3条1項各号のいずれかに該当することを被告が立証すれば、この要件は満たすものと考えられる。先出願による通常実施権は、裁判所において判断されるものである。

 判断主体
 29条の2は、侵害訴訟における被告の抗弁事由となるものであるので、29条の2の通常実施権を有するかどうかを判断するのは、侵害訴訟における裁判官である。
 先願意匠が3条1項各号の1に該当するかどうかの判断は、被告の主張立証に基づいて裁判官が客観的に行うこととなる。侵害訴訟において、被告が3条1項1号又は2号の引用例を新たに発見した場合には、29条の2第2号の要件を満たす場合があり得る。


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