「メンタリング・マネジメント 共感と信頼の人材育成術」 福島正伸・著、ダイヤモンド社、2005年1月14日
p.7 そもそも人材育成の目的を、個人の職務能力の向上や上司と部下の関係改善、組織の活性化、そしてそれらによる企業の生産性の向上とすること自体に問題があるのです。
p.7-8 はじめにまず上司が常に正しく、部下が常に未熟である、という意識を捨てなければならないということです。同時に、人材育成は企業の都合によるもの、という意識も捨てる必要があります。企業側の都合で考えている以上、それが伝わってしまえば、相手は本気にならなくなってしまいます。
そうではなく、人材育成の目的を、社会人として、人間を成長させることで、その結果、企業の生産性が上がるようになる、と考えることが必要なのです。
p.9 メンターになるためには、決して高度で特殊な技術が必要とされているわけではありません。「見本」「信頼」「支援」、わずかこれら三つの行動基準に基づいて、考えて行動するだけなのです。
注意することは、これらを手法としてとらえるのではなく、メンター自身の生き方の問題としてとらえなければならないということです。
p.21 「私(社長)がやっていることは、会社のため、そしてそれはみんなのためだよ」
「社長はいつも、みんなのため、と言っていますが、本当はすべて会社の利益のため、つまり社長自身のためじゃないですか」
「そうかもしれない。しかしね、会社がなくなったら、困るのはみんなも同じじゃないか!」
「一番困るのは、・・・・・社長でしょ」
「そもそも、会社の業績が悪くても、きちんと給料を払っているんだから、感謝しながら働くのが当然じゃないのかな?」
「みんなの意識はそうじゃありませんよ。わずかな給与で働いているばかりか、これだけ社長を立てているんだから、感謝してほしいと思っているんですよ」
p.22 (これまでの人材育成プログラムの成果が芳しいものでなかった)理由は、人材育成の前提条件である、先生と生徒、あるいは上司と部下という関係において、「先生は人間的に成熟しているが、生徒は人間的に未熟である」、あるいは、「上司は正しいが、部下は間違っている」ということです。
p.26-7 事業を成功させようとした結果、(指導をして)相手の成長を止めてしまったのです。しかしその一方で、相手も成長してほしいと思っているという状況になっています。つまり、相手に対して、こちらの指示したことをやらせようとして、しかも、依存させるような接し方をしてしまっているにもかかわらず、反対に自立することを期待しているのです。
このような状況を変えるためには、支援の目的を変えることが必要です。つまり、「事業を成功させること」を目的にするのではなく、「事業を成功させる人を育成すること」を目標にするのです。
p.28 大きな壁があって前に進めないという人のために、壁を小さくするのではなく、その大きな壁を自分の力で乗り越えていkるような人材に育てることが必要なのです。
p.32 社会に価値と感動を提供するために、求められる知識や能力は環境の変化に応じて、日々変わっていきます。いや、変わらなければならないと言ったほうがいいでしょう。その一方で、どんな環境でも変わることがない「期待される人材像」とは、社会に貢献する企業のビジョンを、共に実現しようという共感者であるということです。
p.33 社会貢献できる人材が成長できてこそ、企業も成長することができます。つまり人材育成とは、企業の中だけで認められるような会社人ではなく、社会で認められる社会人を育成するということです。
企業人としてよりも、社会人として、人間として「期待される人材」を育成していくことが、結果的に企業を成長させることになるのです。
p.35 お客様に対しても、価値と感動を提供し、尽くすことを楽しみます。このように、仕事を楽しんでいる人は、手を抜かずにとことん良い商品やサービスを提供することに集中し、その結果、最大の成果を出すことができるようになります。
p.39 「すべての出来事は、前向きに考えればチャンスとなり、後ろ向きに考えればピンチとなる。問題が起きたことが問題ではなく、どう考えたかが本当の問題である」
p.44 何か良いことを期待しても、良いことは起きません。良いことは自分が起こすものです。
p.49 「自分自身が、部下のやる気を引き出すことができないのだ。相手のやる気を引き出せるように、自分自身が成長しよう。部下が成長できるかどうかは、自分次第だ!」
p.58-9 安楽に生きようとするほど、できれば自分が責任を負いたくない、面倒なことは避けたい、今までやったことのないことにチャレンジする気はない、という気持ちになります。その結果、会社や相手・顧客に責任を転嫁したり、トラブルの処理が遅れたり、能力が向上しなくなったりして、自分への信頼もなくなり、結果的には、安楽に生きていくことができなくなってしまうのです。
一方、充実した人生を送ろうとすれば、自分から責任を持って物事に取り組み、面倒なことから逃げず、今までやったことにない新しいことにもチャレンジしようという気持ちになります。
p.65 なぜ、依存型人材が生まれるのでしょうか? それは、人を管理しようとすることに原因があります。人は管理されることで依存型人材となり、支援されることで自立型人材となるのです。
p.70 依存型人材を育成できるのは依存型人材だけであり、依存型の上司が自立型の部下を育成することが、そもそも不可能なことなのです。
p.71 管理型マネジメントは、いわば「その時の成果だけのマネジメント」であり、発展的な経営を考えた場合、最も重要な仁z内という経営資源に、致命的な問題を引き起こすことになってしまいます。
管理するほど、徐々に生産性が低下していきます。それは、相手の意欲がなくなり、様々な問題が起きてくるようになるからです。
p.72 それでも細かく指示をしようとすれば、管理者の負担は増えるばかりとなり、管理者の限界が仕事の限界になってしまうのです。
p.74 依存型人材を育ててしまう管理型マネジメントは、その場限りの成果を求めてしまうので、結果的にはとても無駄の多いマネジメントとなり、企業を内から衰退させてしまうことになります。
p.79-80 働く目的も、ただ生活をするためだけではなく、自らの人生を充実した生きがいのあるものにするためへと、大きく変わってきています。働くことそのものが社会参加であり、自己の社会的存在価値の創造なのです。
p.86 指導には、一つ注意しなければならない点があります。それは何事にも万能な手法や知識があるわけではなく、なおかつ手法や知識は無限にあるということです。
p.90 メンターは、相手が本来持っている潜在的な可能性を最大限に引き出します。
ただ、ここで「引き出す」と表現すると、こちらが何らかの方法を使うことで、無理にでも引っ張り出すというイメージがあるかもしれません。そうではなく、「引き出す」というのは、自発的に潜在的な可能性を発揮したくなるように導くということです。人は自発的にならない限り、自分の能力と可能性を最大限に発揮することはないからです。
p.105 上司が目の前の成果にばかりとらわれると、部下を自分の思い通りに行動させることが一番の重要課題になってしまいます。つまり、上司が言ったことを、いかにきちんと部下にやらせるかということです。それは、部下の意思を無視することになり、たとえ部下がこちらの言う通りに行動したとしても、言われたことを嫌々やることになってしまいます。そのような意識で仕事に取り組んでも、その成果は小さなものにならざるをえません。さらにその繰り返しは、部下を疲弊させるだけで、企業の未来を閉ざすことになってしまうでしょう。
目の前の成果を目的にした場合は、人材を育成するというよりも、人材を管理(コントロール)することになってしまいます。そして、こちらがコントロールをすればするほど、相手はコントロールされることでしか、行動できないようになります。
p.109 メンタリングでは、仕事の成果がどうであるかよりも、自発的な行動による成果かどうかを重視します。目の前の成果よりも、将来的に今よりもはるかに大きな成果が得られるようになることを考えているからです。そのためには、すべてのスタッフが自発的になることが必要なのです。
p.110 人材育成の最終的な目的は、社員が成長していった結果、その企業が社会の中でなくてはならない存在になること、つまり顧客や社会から尊敬される存在になることです。
p.112 より存在価値のある企業をつくるため、そしてさらにより良い社会をつくるために、人材育成は行われなければならないものです。
その意味では、メンタリングの目的は、単に企業の利益のために人材を育成することではなく、社会の中で必要とされる自立型人材を、企業が育成するということになります。そして、そのような自立型人材によって構成される企業が、次々と新たな社会的な存在価値を創造して、その結果として、利益が得られ、さらにより高い価値を創造すべく成長していくのです。
p.140 特に、自分が後ろ向きな気分でいる時が問題です。そんな時は、相手を元気にするどころか、相手のほうがこちらに気を遣って、疲れてしまうことにもなりかねません。
ほとんどの場合、後ろ向きな気分でいる時は、物事をマイナス受信しているだけなのです。
p.145 信頼されるためには、自分の目先の損得よりも、相手や社会の損得で考えることが必要です。いわばそれは善悪で考えることです。善悪の判断がつかなくなり、損得だけを基準に活動する企業は、どれほど一時的に大きな利益を上げたとしても、いずれ必ず社会からの信頼を失ってしまいます。
p.148 「上司に自己責任の姿勢がなければ、部下は自己責任で考えることはできない」
p.157 人が育たないと言う人は、人材育成に短期的な成果を求めていることが、その根本的な原因であることに気づいていないのです。こちらが短期的な成果を求めている場合は、成果のために支援していることが相手にわかってしまいます。そうなると信頼関係はなくなり、相手は本気で行動しようとは思わなくなってしまいます。
支援は長い目で見るほど、本質的な支援となり、その成果は早く出るようになります。
p.175 やらせてみて、自分で体験を積み重ねさせるのです。失敗してもかまいません。大切なことは、失敗した時に、それをどのように受け止め、次にそれをどのように活かしていけばいいのかを、まず自分が見せて、そして教えていくことです。そうすることで、相手はどんな失敗があったとしても、それを糧にして成長し続けていく自立型の心材になっていくことができます。
p.193-4 「問題」―「プラス受信」―「自己責任による原因究明」―「見本、信頼、支援による解決手段」―「率先垂範行動」
「問題」―「マイナス受信(困ったこと)」―「他者責任」―「期待による(相手に要求することを前提とした)解決手段」―「強制、命令(飴とムチ)」
p.220 大切なのは、相手が自分の意思で、自分の判断でやっているという感覚を持ちながら行動することです。言われたことを仕方なくやるのではなく、言われたことを喜んでやる。依存するのではなく、自発的に行動する、ということです。その上で成果を出すことができれば、その時、真の自信が生まれるのです。
p.221 楽をするよりも努力することのほうが、どれほど充実感や感動があるかを伝えてこなかったのです。自分が仕事を楽しまない限り、部下も仕事を楽しむことはできません。
p.228 危機感でやる気にさせるのではなく、夢でやる気にさせる。相手をやる気にさせるために、危機感は必要ありません。
p.240 今日一日で、どれだけの売上があったかよりも大切なことがあります。それは、明日の売上の約束を、今日一日でどれだけつくることができたかということです。
p.242 私たちが売上を決めることはできません。収支計画の中で、私たちが決めることができるのは支出だけで、収入を決めることができないのです。どれだけの支出によってどんな価値と感動を提供できるかが問題です。なぜなら、収入は、お客様がどれだけの価値と感動を得られたかを評価し、その報酬としていただくものだからです。ということは、価値と感動を提供することができれば、企業は必ず成長していくことができます。企業は社会に貢献するほど、安定していくものです。
p.243 目指すべきは、数字的目標よりも感動的目標。つまり、どれだけお客様に価値と感動を提供できたのかということです。
p.246 私たちは、相互に支援し合うことで、将来にわたってより大きな価値と感動を提供することができるようになるのです。これこそが共創の戦略です。
p.249 共創によるすばらしい社会をつくることは、考え方としては、それほど難しいことではありません。それは、次の二つの基準で行動するだけでいいのです。
第一の基準は、自分が得ることよりも、先に相手に与えること。
第二の基準は、自分が得ることよりも、多くのことを相手に与えること。
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p.7 そもそも人材育成の目的を、個人の職務能力の向上や上司と部下の関係改善、組織の活性化、そしてそれらによる企業の生産性の向上とすること自体に問題があるのです。
p.7-8 はじめにまず上司が常に正しく、部下が常に未熟である、という意識を捨てなければならないということです。同時に、人材育成は企業の都合によるもの、という意識も捨てる必要があります。企業側の都合で考えている以上、それが伝わってしまえば、相手は本気にならなくなってしまいます。
そうではなく、人材育成の目的を、社会人として、人間を成長させることで、その結果、企業の生産性が上がるようになる、と考えることが必要なのです。
p.9 メンターになるためには、決して高度で特殊な技術が必要とされているわけではありません。「見本」「信頼」「支援」、わずかこれら三つの行動基準に基づいて、考えて行動するだけなのです。
注意することは、これらを手法としてとらえるのではなく、メンター自身の生き方の問題としてとらえなければならないということです。
p.21 「私(社長)がやっていることは、会社のため、そしてそれはみんなのためだよ」
「社長はいつも、みんなのため、と言っていますが、本当はすべて会社の利益のため、つまり社長自身のためじゃないですか」
「そうかもしれない。しかしね、会社がなくなったら、困るのはみんなも同じじゃないか!」
「一番困るのは、・・・・・社長でしょ」
「そもそも、会社の業績が悪くても、きちんと給料を払っているんだから、感謝しながら働くのが当然じゃないのかな?」
「みんなの意識はそうじゃありませんよ。わずかな給与で働いているばかりか、これだけ社長を立てているんだから、感謝してほしいと思っているんですよ」
p.22 (これまでの人材育成プログラムの成果が芳しいものでなかった)理由は、人材育成の前提条件である、先生と生徒、あるいは上司と部下という関係において、「先生は人間的に成熟しているが、生徒は人間的に未熟である」、あるいは、「上司は正しいが、部下は間違っている」ということです。
p.26-7 事業を成功させようとした結果、(指導をして)相手の成長を止めてしまったのです。しかしその一方で、相手も成長してほしいと思っているという状況になっています。つまり、相手に対して、こちらの指示したことをやらせようとして、しかも、依存させるような接し方をしてしまっているにもかかわらず、反対に自立することを期待しているのです。
このような状況を変えるためには、支援の目的を変えることが必要です。つまり、「事業を成功させること」を目的にするのではなく、「事業を成功させる人を育成すること」を目標にするのです。
p.28 大きな壁があって前に進めないという人のために、壁を小さくするのではなく、その大きな壁を自分の力で乗り越えていkるような人材に育てることが必要なのです。
p.32 社会に価値と感動を提供するために、求められる知識や能力は環境の変化に応じて、日々変わっていきます。いや、変わらなければならないと言ったほうがいいでしょう。その一方で、どんな環境でも変わることがない「期待される人材像」とは、社会に貢献する企業のビジョンを、共に実現しようという共感者であるということです。
p.33 社会貢献できる人材が成長できてこそ、企業も成長することができます。つまり人材育成とは、企業の中だけで認められるような会社人ではなく、社会で認められる社会人を育成するということです。
企業人としてよりも、社会人として、人間として「期待される人材」を育成していくことが、結果的に企業を成長させることになるのです。
p.35 お客様に対しても、価値と感動を提供し、尽くすことを楽しみます。このように、仕事を楽しんでいる人は、手を抜かずにとことん良い商品やサービスを提供することに集中し、その結果、最大の成果を出すことができるようになります。
p.39 「すべての出来事は、前向きに考えればチャンスとなり、後ろ向きに考えればピンチとなる。問題が起きたことが問題ではなく、どう考えたかが本当の問題である」
p.44 何か良いことを期待しても、良いことは起きません。良いことは自分が起こすものです。
p.49 「自分自身が、部下のやる気を引き出すことができないのだ。相手のやる気を引き出せるように、自分自身が成長しよう。部下が成長できるかどうかは、自分次第だ!」
p.58-9 安楽に生きようとするほど、できれば自分が責任を負いたくない、面倒なことは避けたい、今までやったことのないことにチャレンジする気はない、という気持ちになります。その結果、会社や相手・顧客に責任を転嫁したり、トラブルの処理が遅れたり、能力が向上しなくなったりして、自分への信頼もなくなり、結果的には、安楽に生きていくことができなくなってしまうのです。
一方、充実した人生を送ろうとすれば、自分から責任を持って物事に取り組み、面倒なことから逃げず、今までやったことにない新しいことにもチャレンジしようという気持ちになります。
p.65 なぜ、依存型人材が生まれるのでしょうか? それは、人を管理しようとすることに原因があります。人は管理されることで依存型人材となり、支援されることで自立型人材となるのです。
p.70 依存型人材を育成できるのは依存型人材だけであり、依存型の上司が自立型の部下を育成することが、そもそも不可能なことなのです。
p.71 管理型マネジメントは、いわば「その時の成果だけのマネジメント」であり、発展的な経営を考えた場合、最も重要な仁z内という経営資源に、致命的な問題を引き起こすことになってしまいます。
管理するほど、徐々に生産性が低下していきます。それは、相手の意欲がなくなり、様々な問題が起きてくるようになるからです。
p.72 それでも細かく指示をしようとすれば、管理者の負担は増えるばかりとなり、管理者の限界が仕事の限界になってしまうのです。
p.74 依存型人材を育ててしまう管理型マネジメントは、その場限りの成果を求めてしまうので、結果的にはとても無駄の多いマネジメントとなり、企業を内から衰退させてしまうことになります。
p.79-80 働く目的も、ただ生活をするためだけではなく、自らの人生を充実した生きがいのあるものにするためへと、大きく変わってきています。働くことそのものが社会参加であり、自己の社会的存在価値の創造なのです。
p.86 指導には、一つ注意しなければならない点があります。それは何事にも万能な手法や知識があるわけではなく、なおかつ手法や知識は無限にあるということです。
p.90 メンターは、相手が本来持っている潜在的な可能性を最大限に引き出します。
ただ、ここで「引き出す」と表現すると、こちらが何らかの方法を使うことで、無理にでも引っ張り出すというイメージがあるかもしれません。そうではなく、「引き出す」というのは、自発的に潜在的な可能性を発揮したくなるように導くということです。人は自発的にならない限り、自分の能力と可能性を最大限に発揮することはないからです。
p.105 上司が目の前の成果にばかりとらわれると、部下を自分の思い通りに行動させることが一番の重要課題になってしまいます。つまり、上司が言ったことを、いかにきちんと部下にやらせるかということです。それは、部下の意思を無視することになり、たとえ部下がこちらの言う通りに行動したとしても、言われたことを嫌々やることになってしまいます。そのような意識で仕事に取り組んでも、その成果は小さなものにならざるをえません。さらにその繰り返しは、部下を疲弊させるだけで、企業の未来を閉ざすことになってしまうでしょう。
目の前の成果を目的にした場合は、人材を育成するというよりも、人材を管理(コントロール)することになってしまいます。そして、こちらがコントロールをすればするほど、相手はコントロールされることでしか、行動できないようになります。
p.109 メンタリングでは、仕事の成果がどうであるかよりも、自発的な行動による成果かどうかを重視します。目の前の成果よりも、将来的に今よりもはるかに大きな成果が得られるようになることを考えているからです。そのためには、すべてのスタッフが自発的になることが必要なのです。
p.110 人材育成の最終的な目的は、社員が成長していった結果、その企業が社会の中でなくてはならない存在になること、つまり顧客や社会から尊敬される存在になることです。
p.112 より存在価値のある企業をつくるため、そしてさらにより良い社会をつくるために、人材育成は行われなければならないものです。
その意味では、メンタリングの目的は、単に企業の利益のために人材を育成することではなく、社会の中で必要とされる自立型人材を、企業が育成するということになります。そして、そのような自立型人材によって構成される企業が、次々と新たな社会的な存在価値を創造して、その結果として、利益が得られ、さらにより高い価値を創造すべく成長していくのです。
p.140 特に、自分が後ろ向きな気分でいる時が問題です。そんな時は、相手を元気にするどころか、相手のほうがこちらに気を遣って、疲れてしまうことにもなりかねません。
ほとんどの場合、後ろ向きな気分でいる時は、物事をマイナス受信しているだけなのです。
p.145 信頼されるためには、自分の目先の損得よりも、相手や社会の損得で考えることが必要です。いわばそれは善悪で考えることです。善悪の判断がつかなくなり、損得だけを基準に活動する企業は、どれほど一時的に大きな利益を上げたとしても、いずれ必ず社会からの信頼を失ってしまいます。
p.148 「上司に自己責任の姿勢がなければ、部下は自己責任で考えることはできない」
p.157 人が育たないと言う人は、人材育成に短期的な成果を求めていることが、その根本的な原因であることに気づいていないのです。こちらが短期的な成果を求めている場合は、成果のために支援していることが相手にわかってしまいます。そうなると信頼関係はなくなり、相手は本気で行動しようとは思わなくなってしまいます。
支援は長い目で見るほど、本質的な支援となり、その成果は早く出るようになります。
p.175 やらせてみて、自分で体験を積み重ねさせるのです。失敗してもかまいません。大切なことは、失敗した時に、それをどのように受け止め、次にそれをどのように活かしていけばいいのかを、まず自分が見せて、そして教えていくことです。そうすることで、相手はどんな失敗があったとしても、それを糧にして成長し続けていく自立型の心材になっていくことができます。
p.193-4 「問題」―「プラス受信」―「自己責任による原因究明」―「見本、信頼、支援による解決手段」―「率先垂範行動」
「問題」―「マイナス受信(困ったこと)」―「他者責任」―「期待による(相手に要求することを前提とした)解決手段」―「強制、命令(飴とムチ)」
p.220 大切なのは、相手が自分の意思で、自分の判断でやっているという感覚を持ちながら行動することです。言われたことを仕方なくやるのではなく、言われたことを喜んでやる。依存するのではなく、自発的に行動する、ということです。その上で成果を出すことができれば、その時、真の自信が生まれるのです。
p.221 楽をするよりも努力することのほうが、どれほど充実感や感動があるかを伝えてこなかったのです。自分が仕事を楽しまない限り、部下も仕事を楽しむことはできません。
p.228 危機感でやる気にさせるのではなく、夢でやる気にさせる。相手をやる気にさせるために、危機感は必要ありません。
p.240 今日一日で、どれだけの売上があったかよりも大切なことがあります。それは、明日の売上の約束を、今日一日でどれだけつくることができたかということです。
p.242 私たちが売上を決めることはできません。収支計画の中で、私たちが決めることができるのは支出だけで、収入を決めることができないのです。どれだけの支出によってどんな価値と感動を提供できるかが問題です。なぜなら、収入は、お客様がどれだけの価値と感動を得られたかを評価し、その報酬としていただくものだからです。ということは、価値と感動を提供することができれば、企業は必ず成長していくことができます。企業は社会に貢献するほど、安定していくものです。
p.243 目指すべきは、数字的目標よりも感動的目標。つまり、どれだけお客様に価値と感動を提供できたのかということです。
p.246 私たちは、相互に支援し合うことで、将来にわたってより大きな価値と感動を提供することができるようになるのです。これこそが共創の戦略です。
p.249 共創によるすばらしい社会をつくることは、考え方としては、それほど難しいことではありません。それは、次の二つの基準で行動するだけでいいのです。
第一の基準は、自分が得ることよりも、先に相手に与えること。
第二の基準は、自分が得ることよりも、多くのことを相手に与えること。
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