(前回からの続き)
「麻薬」の乱用のような米FRBの過度の量的緩和(QE)で、世界の金融市場、とりわけアメリカ市場では株&債券の「双子のバブル」が誕生し、優良株からボロ株、高格付け債からジャンク債に至るまで、ありとあらゆる金融資産にマネーがパンパンに注入された状態になっている、といったことを書いてきました。
どうやらそのQEの第3フェーズ終了でマネーがこれらのバブルから少しずつ流出を始めたもようです。そのへんは世界株式市場の足元の動揺や、前回書いた欧州PIIGS諸国債の利回り上昇とかジャンク債相場の足元の値下がりなどに表れていると思います。いつの時代も、やはりバブルが崩壊するときは、まずは高リスク資産からのおカネの逃避から始まるということなのでしょうか。
で、このあたり、これまでの歴代のバブルとは異なる、今回の「双子のバブル」で特徴的なポイントがあると思っています。それは・・・QEの波に乗って金融資産(とくに債券)のバブリーな価格上昇の主役を演じてきたのが、銀行等の金融機関ではなく、ヘッジファンド、ノンバンク、MMF(Money-market Mutual Fund:債券運用中心のファンド)等の「シャドー・バンキング」(影の銀行)であるということです。
2008年のリーマン・ショック以降の各種規制強化によって銀行は資産圧縮を迫られ、リスキーな投資に手を出しづらくなったわけですが、一方でこの規制を受けないシャドー・バンキングが銀行に代わって新興国債券などのハイリスク・ハイリターンな資産投資にのめり込むようになっています。その総額は世界全体でなんと!最大70兆ドル(約7,800兆円!)にまで膨張しているとのこと。これに危機感を募らせたIMFが先月、各国の金融当局に対して、監視の目が行き届かないこれらシャドー・バンキングシステムに細心の注意を払うよう警告しています。まあそう言いたくもなるでしょう。銀行と違ってセイフティーネットも不十分なのにそんなにデカい規模になっているわけだから・・・。
で、そのシャドー・バンキング・・・そう聞くとつい「中国」を思い浮かべるところですが、じつは中国や日本よりも欧州、さらにアメリカのほうがずっと大きかったりします。IMFの推計によると、上記のとおり合計70兆ドルの「影の銀行」の地域別の業界規模は、わが国で2.5~6兆ドル(これもビックリ)、新興国市場で約7兆ドル、EU圏で13.5~22.5兆ドル、そしてアメリカは・・・15~25兆ドルとのこと。ということは、マーケットが「リスクオフ」に転じたときに窮地に陥るヘッジファンド数やその損失額や混乱がもっとも大きくなりそうなのはアメリカ市場ということになりそう・・・。
シャドー・バンキングのほとんどは短期資金に依存しているため、投資家が至急の資金回収に乗り出したとき、資産の強制売却とか価格下落スパイラルが引き起こされるリスクがあるそうです。そうなれば株式&債券ファンドの多くが投げ売りされ、「双子のバブル」が崩壊の危機に瀕するでしょう。