Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

篭脱け改造

2006-01-31 15:30:33 | 時事
1月も終わりです。大寒と言うのに妙に暖かい昨日今日ですが、週末は冷え込むそうです。

さて、東横インの障害者向け設備の「改造」が問題になっています。
いったん作って実査をごまかし、すぐに撤去と言う、いわゆる篭脱けのような騙しはさすがにあまり例がないだけに、世間の批判も強いです。特に社長の悪びれない会見が火に油を注いでしまった格好で、経営の危機管理に相当難があるとしか言いようがありません。
もっとも先だっての耐震強度偽装に続いて騙された格好の自治体や国交省が、ここぞと追及していることも確かで、耐震強度の時もそうですが、これまで何をやっていたのかと言う感のほうが強いです。



この問題、ケシカランことはケシカランのですが、どうも引っ鰍ゥりを覚えることも事実です。
確かにバリアフリーのご時世、そういう設備を備えることは当たり前とも言えます。しかし、こう言ってしまうと失礼とは思いますが、健常者であっても出来ることと出来ないことがありますし、あらゆる行動を保証すべし、ということは言えません。
そう考えると、街に宿泊施設が東横インしかないと言うのでもない限り、総てのホテルに備え置く必要が本当にあるのかどうか。使わない時は健常者が使えば、と言うかもしれませんが、専用のトイレ等を見れば分かる通り、健常者にとっては逆に使い勝手が悪い施設でもあり、どこかが対応して、地域の他のホテルがそのコストを共同で負担する、というような知恵も必要でしょう。

駐車場の問題はちょっと悪乗りの感も否めません。もちろんそういう規則ということですが、自家用車で飛び込みでホテルに泊るというケースはラブホテルでもない限りないでしょう。そう言う時はあらかじめ判っているのですから駐車スペースを工夫するとか、それこそ従業員用のスペースを明け渡すとか、個別対応で可能なはずです。
どうも形から入り過ぎる感が強いと感じる日本のバリアフリーですし、条例がお願いベースだとしても、実際には充足しないと認可が下りないと言うようなヤミ規制の存在もあるでしょう。

しかし、ホテル業を営むのであればそれは最低限の条件、というのであれば篭脱けは論外ですが、この手の規制は条例施行前の既存業者にも充足を義務付けているのかどうかが問題になります。
もし免除、猶予されているとしたら、それはバリアフリー対策と言うより新規業者に対する事実上の参入障壁として作用します。こうした問題がなかったのか。東横インを叩くのも結構ですが、そう言う事情にも目配りが必要です。

国交省管轄で気合いを入れているようですが、ホテルは前に述べましたが他にもあるわけです。老若男女、自分の事情にあったホテルを選ぶことは可能であり、そうでないホテルに自分にあった対応を求めることはないでしょう。
一方で同じ役所の管轄には公共交通がありますが、こちらは基本的には代替手段がないわけです。そうなるとバリアフリー対策は必須です。

ところが交通機関を見ると、財源がないとか理由をつけてバリアフリー化を遅々として進めない事業者が多いのですが、言って見ればビジネスマンなど対象を特化したホテルにあらゆる来客の可能性に対応した設備を要求する傍らで、対象を特化していない万人に開かれた交通機関にはそれを免除、猶予すると言うのは筋が通りません。

また、形から入るという意味では、バスのノンステップ車もその一例であり、バスのステップはなくなったが、車内で着席しようとしたら車内の段差を乗り越えないといけないうえに、座席数自体も大幅減少という本末転唐ネ事態が進行しています。
淡路、鳴門を巡った時も、お年寄りが目立つ車内で、ちょっとでも元気そうな老人が車内の段差を乗り越えて座席に向かったり、座れずに立ってたりと、乗降の際の2段ステップさえ我慢すればみんなが座れて丸く収まったのに、というケースを目にしました。

形も大事ですが、それに拘ることで誰が満足するのか。そして社会が等しく負担しているのか。参入障壁と取られかねない事態も問題です。
お年寄りが座れないノンステップバスに、安価に泊れるビジネスホテルチェーンの「摘発」。バリアフリーの理想系とほど遠いと思うのは私だけでしょうか。