JR東海の経営陣は、将来に負の遺産を残す懸念がある「リニア中央新幹線」の工事を、来年にも開始する計画を暴走気味に走りだした。
安倍政権は遅すぎる転換であるが、「地方創生」を最重点政策に掲げる。
都市部の経済ばかりが発展しても、国が衰退する流れを止めることはできない。
豊かな地域社会こそが、日本の特質が活かした文化を熟成させることができる。
大都市の間を高速で結ぶことで、高度経済成長時代の夢を追いかける旧時代人間には、地方創生の意義が全く判っていないのだろう。
現状のままの人口減少が進むと、地方の経済的な衰退は加速して、半分近くの自治体は消滅の危機に向かってしまう。
この人口減少に対して、「国民の94%が望ましくない」と答えている。
「人口増加するよう努力すべき」33%、『減少幅が小さくなるよう努力すべき』は23.5%、「現在程度の人口を維持すべき」は18.6%である。
国民の75%が人口減少に最大限の対策をするべきだ、としているのだ。
安倍政権は、まずは「地方創生」の旗印を掲げて、人口の増加の役割を地方の人たちに期待をかけるしかない。
大都市圏の生活環境は、金銭的、利便性には優れていても、子育てには適さない環境で、東京都などは、出生率1.27の平均値をはるかに下回る。
この様な一極集中的な経済発展が、人口減少に拍車をかけたのは明らかである。
それにも拘わらず、2007年に「JR東海の経営判断」で、全額を自費で建設する「リニア中央新幹線」の計画に突入したのである。
この時期にはすでに人口減少は深刻になっていたのだが、JR東海にとっては、
「リニアは東海道新幹線の別線」というのが、本質的な性格だ、と説明する。
大動脈の東海道新幹線が、津波や地震の災害で、マヒした場合でも、「リニア中央新幹線」があれば、経営が続けられる、という理屈である。
しかし、JR東海の経営問題よりも、日本の人口減少対策の方がはるかに大きな問題で、最優先されるべきである。
それならば、第二新幹線(東海道かどうかは別)の計画をあたって、これからの国創りの方向に沿って、地方創成に向けた適切な交通インフラにすべきだ。
リニア方式では、停車駅を最小にする必要があって、品川~名古屋間には、わずか4駅しか設置しない。
しかも、その駅周辺は地域社会からのニーズとは、無縁の場所である。(続)