Chang! Blog
福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです





 日南市・油津の中心部、山形屋前で下車しました。人口5万人の街に、デパートが営業しているのだから立派です。
 2006年まで大分県臼杵市にあった、臼杵トキハを思い出しました。


 規模は小さめで、食品売り場はスーパーのようです。昔ながらの地方の百貨店という雰囲気が濃い中、コムサの一角だけはなんだか空気が違いました。


 入口には、中国語の案内が。クルーズ船の旅客は、宮崎市内などの観光やショッピングを楽しむ傾向があり、クルーは買い物を近場で済ます傾向があるのだとか。
 なるほど、大型クルーズ船ともなれば、クルーだけでも「特需」となりうるわけですね。


 クルーズ船の待つ港へはシャトルバスが結び、気ままな個人客やクルーの街歩きをサポートします。ボランティアのおっちゃん達がガイドに立っているので、言葉が分からずとも安心です。


 商店街のアーケードは、明るい雰囲気。よくよく見れば屋根が取り払われており、自然光が差しているのでした。アーケードの完全撤去はよく見るけど、骨組みだけ残すとは斬新です。
 そしてこの油津商店街こそ、今回日南海岸を下った目的の一つ。商店街活性化、地方創生のモデルとして全国から注目を集める現場を、歩いてみたかったのです。


 まずは商店街の油津駅側入口にある、ABURATSU COFFEEへ。油津商店街の活性化プロジェクトの第一弾として、2014年にオープンしたカフェです。
 正面から見ると、古くからの喫茶店をうまくリノベーションした、今風のカフェですが。


 側面にまわると、昭和の街中ならどこにでもあったような、喫茶店のたたずまいを残します(笑)。


 店内も、ほどよく昔の雰囲気が香ります。歴史ある店の再生だけに、デザインにあたっては昔の常連さんの意見も取り入れたのだとか。老舗に歴史ありです。
 午後3時前だというのに、若いお客さんで満席。今風のチェーンのカフェがなかなかやってこない地方だからこそ、集客のチャンスがあるのかもしれません。


 遅いランチは、九州パンケーキを使ったクロックムッシュにしました。フードのメニューもしゃれております。
 コーヒーも合わせて、972円でまったりゆったり、時空を超えたひとときを過ごせました。


 アーケード街(?)の中にある、油津Yottenへ。2015年11月にオープンした、正式名称を「多世代交流モール」と称する公共施設です。
 訪問した時は新築の施設だと信じて疑ってもいなかったのですが、なんとスーパーのマルショクをリノベーションした建物なのだとか。中庭部分を大胆に減築、ガラス張りで明るい内部からは、スーパーの面影を微塵も感じません。


 スケジュールがかかれた黒板には、「視察」の文字がいくつも。油津は今、全国から注目を浴びる商店街です。


 そして油津といえば、カープのキャンプ地としても半世紀以上の歴史を誇ります。昨年は、本家広島市にも負けず劣らず、盛り上がりました。
 そんな熱気を年中感じられる、ファンにはたまらない「油津カープ館」もあります。


 Yottenのアーケードをはさんで向かい側には、コンテナが並んだショップ街「ABURATSU GARDEN」も出現。コンテナの隙間は路地のようで、実際に奥へ通り抜けることもできます。
 「道は最低4m」が建築基準法の大原則として定義される現代でも、「路地」って作れるんですね。


 カラー舗装も、鮮烈な赤で施せば名所になる!? 球場へと続く「カープ一本道」は、優勝パレードのルートにもなりました。


 昔ながらの商店街の顔もあり、老舗っぽい花屋や魚屋も軒を連ねます。
 おしゃれなカフェや施設もいいけど、街で暮らしていくには欠かせないお店です。




 そして山形屋の向かい側にも、新たな施設がオープン。分譲マンションのほか、医療モールや市民活動センター、交流スペースなどを備えた官民協同型複合施設「Ittenほりかわ」です。
 見事な再生事例ばかり見てきましたが、さすがにこちらは新築。この4月8日にオープンしたばかりです。


 1階部分には、子育て支援センターも入居しているので、子育て世代には何かと安心ですね。
 入口のロゴを撮っていたら、やさしい職員さんが招き入れてくれました。




 入った瞬間に漂ってくる木の香りに、心が安らぎます。もちろん使われているのは県産の飫肥杉で、お値段もなかなかのものだとか。
 幼い頃から木に親しんでもらい、良さを理解し、将来の木材利用拡大につなげる「木育」の一環なんだそうです。




 遊具も木製で、オリジナルのデザイン。IT系や既製品のおもちゃは一切置いておらず、徹底してます。
 一時預かりもOKとかで、キャンプ見物やYottenのイベントの時にも安心ですね。




 商店街を抜ければ、昔からの市街地。ボウリング場からは、昭和の香りがプンプンします。


 大通りを挟んだ向かい側には、SAPIAなるショッピングセンターも。核店舗だった寿屋は撤退しましたが、ディスカウントストアのダイレックスが入り、山形屋とはうまくすみ分けできているようです。
 2階には大きなゲーセンがあり、夜7時過ぎにいったら、幅広い世代を集めていたのが印象的でした。むしろ、若者の方が少なかったかも。


 1階には市役所のサービスコーナーもあって、なにかと便利そう。徒歩圏内で一通りの物が買えて、飲食店や遊ぶ場所も揃っている街です。Ittenの分譲マンションなら、車なしでも暮らせるかも。
 当たり前のことのようだけど、5万人クラスの地方都市では、今や稀有な方だと思います。


 さらに交差点を挟んだ向かい側には、車でもアクセスしやすい大きな観光案内所があります。市の観光課と観光協会も入っており、日南観光の情報なら何でも集まりそう。
 公共施設らしからぬ建物は、もともとレンタルビデオ屋、さらにその前は電器屋だったものだとか。宮崎方面からの玄関口でもあり、空き店舗にしておくのはもったいないとばかり、有効活用をはかったんだそうです。 


 時間は4時をまわったので、一旦商店街に戻り、今宵の宿にチェックインします。やはり商店街のお店をリノベして、2月にオープンしたばかりのゲストハウス「fan! Sports Bar & HOSTEL」です。
 代表は現役大学生で、開業にあたっての資金はクラウドファンディングで集めたという、異色のホステルです。




 リノベといっても、コンクリートの床や外壁材そのままの壁、むき出しの鉄骨はオリジナルの建物のまま。建物として新しい部分は、間仕切り壁くらいなものです。
 でも新しい家具がうまく雰囲気に溶け込んでおり、不思議と落ち着けます。


 ツインベッドの個室も、ご覧の通り。部屋は広いし、ベッドの感触も良好です。
 ドミトリーとして使うことが想定されていた部屋のようで、2段ベッドの上段と下段の位置には、無数のコンセントがあります。


 最近まで、新規起業した会社の事務所として使われていたそうで、渡された鍵は「事務所」のままでした(笑)。
 トイレ、シャワーは共用。1泊1部屋7,000円で、ここだけでしかできない経験ができます。




 宿の名が表す通り、ロビー部分は夜はBARとしても営業するそうです。帰ってからのお楽しみ。


 暑さも落ち着いてきたので、夕方の散歩に出かけました。油津は戦前から、マグロ漁と飫肥杉の出荷でおおいににぎわった街。海側は、歴史的にも貴重な街並みが広がります。
 良港を作るべく堀川を開削した堀川運河も、港町・油津らしい景観の一つ。建物のはみだし感もたまりません。


 外壁はトタンになっているものの、縦長の窓から近代建築らしい香りを感じ、建物の前にあった看板を見ればやはり。登録有形文化財の旧外山医院でした。


 同じく登録有形文化財の、油津赤レンガ館。もとは材木商の倉庫だったとか。


 レンガのアーチを眺めながら…


 インスタントではあるけど、お安くコーヒータイムを楽しめます。


 2階は、コワーキングスペースになっています。油津活性化の重要なポイントの一つ、仕事場の創出にも一役買っている文化財です。
 耐震補強もガッツリ施され、安心感があります。


 油津はかつて、NHKの連ドラ「わかば」の舞台にもなったんだとか。「わかば通り」と名付けられた通りには、ロケ地となった建築物も残ります。


 「村上酒造」の「飫肥錦」は、当時ドラマに登場した架空の焼酎。モチーフは「飫肥杉」なんでしょうね。
 「あまちゃん」の舞台になった北三陸市を再現していた、久慈の街を思い出しました。


 ご立派な木造3階の、杉村金物本店。洋館風の外観に張られた銅板は、金物店らしい意匠です。


 路地に入れば、杉村金物店の倉庫と赤レンガ館が対面に並び、ちょっとレトロな景観に。自動販売機も景観に溶け込もうと、カメレオン状態です。


 運河沿いにたたずむ、旧服部家別荘。広大なお屋敷で、庭園も広々としています。これが別荘とは、どんな豪商だったんだろう…。


 そして岸壁には、今日の宮崎に特需を導いたクルーズ船が停泊していました。で、でかい…。


 商店街のYottenに戻りました。並木とパラソルの広場には明かりが灯り、いい雰囲気。街頭パフォーマーのギターも聞こえてきます。


 Yottenの施設の一つ、あぶらつ食堂は、6つの店舗が並ぶ飲食店街。焼き鳥から洋食まで、幅広く選べます。


 6店舗は、建物の中でつながっています。酒類はそれぞれのお店で頼むのが原則だけど、おつまみ、食事は他店からの「出前」もOKという、ゆるやかなシステム。
 これならいろんな人と集まっても、好きなものを食べられますね。




 というわけで、ダイニング居酒屋「Yakiyaki」へ。宮崎へ来たからには、地鶏も外せませんね。うまい!


 地元の焼酎も一杯。たっぷり、徳利に入って出てきます。


 2軒隣りの「魚匠 和さび」から、太巻きを出前。ノリからはち切れんばかりの魚介類、これもうまかった!


 いい気分になってホステルに帰れば、すっかりバーの雰囲気になっていました。ビールのメニューも充実。あぶらつ食堂でも飲んできたけど、まあ1杯と腰かければ、1杯で済むはずもありません。
 明日も早いし、早く眠らねばと理性は騒ぐのですが、大学生の宿主さんや鉄っちゃんの旅人さんとの話も盛り上がり、いつの間にか時計はてっぺんに近づいていました。

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 3日目・5月5日の行程は、宮崎市内から日南・油津まで下るのみ。早起き続きだったので、朝9時のバスまでゆっくり過ごしました。


 小林方面からの長距離タイプのバスで、市街地へ。リクライニングシートで、1時間を超える行程も快適そうです。今後ノンステップ化の波が押し寄せたらどんなタイプの車両になるのか、心配でもあります。
 晴続きの予報は覆り、今朝も雨模様です。


 繁華街の橘通り沿いに建つ、アートセンターを訪ねてみました。中心市街地活性化を狙った、まちなかの自由度が高い公共施設です。


 1階の太陽の広場には、自由に弾けるピアノが置かれています。NHKの「ドキュメント72時間」でも一度、テーマとして取り上げられてましたね。
 連休中日の朝も、ふらりと立ち寄って鍵盤に向かう市民の姿を見かけました。まちなかに響くピアノの調べは、なんとも豊かな気分にさせてくれます。


 お目当てだったのは、アートセンター1階に入居している きっちょううどん。県内で9店舗を展開しているチェーン店で、久留米で言えば人力、福岡なら牧のうどん的なポジショニングのお店…なのかな?
 340円なりの朝うどんセットを、ぞぞー。やわ系の麺はダシの味がよく染みて、うまかったです。


 nimocaバス、宮交バージョンはアロハのフェレット!一昨年、独自規格のICカードを放棄し、全国共通カードに組したのは大英断でした。


 今日のところはパスを持っているので、nimocaは財布に入れたままです。1バス停だけ、気軽にバスに乗って向かった先は橘通2丁目。


 県庁前交差点を曲がれば、楠並木通りに入ります。青々とした木々の葉は、南国の日差しも和らげてくれそう。全国数ある並木道の中でも、好きな道の一つです。


 そして、こちらも南国ムードたっぷりの宮崎県庁。東国原旋風の頃、一躍有名になった近代建築の県庁舎は、今でも朝9時台に観光客の姿がチラホラ見えました。


【宮崎交通宮崎線】橘通~青島~サンメッセ日南~油津


 橘通2丁目から青島まで下ります。名だたる観光地を結ぶバスながら、途中の住宅団地にはフリー乗降区間(バス停以外でも乗り降りできる区間)があり、生活に密着した雰囲気も感じられた路線でした。
 さすがはゴールデンウイークの観光地、途中何度か渋滞にはまります。それでも、ほぼ定刻で青島に着きました。




 バス停の目の前が、宮交ボタニックガーデン青島のエントランスです。よく手入れされた花々を見ながら、青島へ近道。入場無料で、ここでも贅沢な気分になれました。


 3度目の青島。


 砂浜には、誰が書いたのかネズミの姿が。


 そして沖には、無数のサーファーが。宮崎はサーファーのメッカ。知人の中にも、久留米から宮崎まで波乗りに行く人を、少なくとも2人は知ってます。


 奇勝、鬼の洗濯岩。どのようなメカニズムでこのような造形に至るのか、いろんなテレビ番組で見る機会はあるのですが、分かったところで不思議な風景です。


 青島へは、3輪タクシー「トゥクトゥク」が活躍中。本場では都市交通なんだろうけど、青島の南国の風景だとマッチしているように感じられます。


 僕らは徒歩で渡り、青島神宮を参拝。


 修学旅行、職場の同期旅行に続く3度目の参拝なのに、元宮まで参拝したのは初めてでした。亜熱帯の植物の中に、無数の絵馬がぶら下がります。


 元宮まで至る参道も、植物園のようでした。


 「本土」へ戻る頃にはすれちがいに、同じ名札を付けた無数の中国人が青島へと渡っていました。
 この日はGWに加え、油津港に大型クルーズ船が着岸した余波で、宮崎の観光名所は大いに賑わい、潤ったようです。先々でも、クルーズ特需を実感することになりました。


 本土側には、青島ビーチパークなる小公園が出現。今年で3年目になる取り組みで、10月末までの期間限定なのだとか。


 テナントは白いコンテナ。ビーチの雰囲気にもマッチして、どこかの南の島のリゾートのような、異国情緒すら感じさせます。
 ゆっくりしたいけど、バスの時間が迫って来たので退散。公共交通の旅は、時間の束縛からは逃れられません。


 青島12時発のバスは、宮崎県産スギで装飾された「日南レトロバス」でした。
 車内も杉材をふんだんに使った内装が特色ですが、大混雑で内装にはまったく目が届きませんでした。


 堀切峠では、太平洋を一望!いつの間にか晴天に恵まれ、入口ドアの窓ガラスに押し付けられながらも、絶景を堪能できました。
 道の駅フェニックスで昼食にしようかとも思ったけど、大混雑のようでパス。バスの進みはスムーズながら、観光地の入口では渋滞に巻き込まれます。


 サンメッセ日南の手前でも渋滞に巻き込まれ、約10分遅れに。やれやれ、疲れた。


 高台にあるサンメッセ日南へは、海岸のバス停から急な登り坂を10分ほど登らねばなりません。
 バスが乗り入れてくれればと思うものの、駐車場待ちの車で渋滞中。バスが乗り入れたら、1時間の遅れでは済まなさそうです。


 麓の駐車場に止めた人は、「歩き入場料金」で100円割引に。バスで来た僕らも、自動的に割引になりました。
 SUN Q パスの所持者は、いつでも100円引きなんだけどね。


 サンメッセ日南からは太平洋の大海原も、180度のパノラマで広がります。うねりもすごい。




 そしてサンメッセ日南の名物が、モアイ像。しかもイースター島から公認を得た、「本物の複製」モアイです。晴天の下、なかなか写真映えします。


 サンメッセ日南でもランチは混み合いそうだったので、14時前のバスで油津へと下ります。バスは空いており、ようやく座ることができました。


 鵜戸神宮からは中国人観光客が乗り込み、賑やかに。彼ら、油津ではクルーズ船の待つ港行きのシャトルバスへと乗り換えて行きました。
 クルーズ客でも、寄港地では公共交通で自由に旅する派がいるというのは、新たな発見。次回の訪日時には完全個人旅行客になる可能性は大です。宮崎交通も、外国人専用の県内1日1,000円パスで応援します。 

 つづく。

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