Chang! Blog
福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです




【1】からの続きです


新八代から約1時間、佐敷着。「つばめ」廃止以来、少しさみしい雰囲気になっていましたが、シックな装いの列車に、賑わいを取り戻したようです。


歓迎イベント「駅マルシェ」の様子。1号車の乗客には地元の特産品が手渡される他、2号車の乗客向けに販売もあります。
揚げたてのカレーパンは絶品だったし、から揚げも帰路まで美味しさが残っていました。ただここで食べすぎると、後に響いてくるので要注意!


水俣駅でも14分停車の「駅マルシェ」。観光列車らしく、乗りっぱなしの退屈を感じさせない工夫が盛りだくさんです。下り1号の場合、食事まで2時間近くあるのですが、思いのほか短く感じられた時間でした。


水俣駅を発車すると、いよいよ目玉となる昼食の準備が始まります。メインディッシュの積み込みは次の出水なのですが、それまでに準備を整えておくようです。「調理室のない食堂車」だけに、段取りには一工夫してあります。


背後には、先を急ぐ新幹線の姿が。こちらにはゆったりした、まったく別の時間が流れます。


出水到着、5分停車。この間に業務用扉から、料理の積み込みが始まります。スープや保温ジャーなど重いものもあって、なかなかの重労働です。見学してみようと近づきましたが、早々に退散しました。


苦労の末に各席に届けられた、本日の昼御膳。写真では伝わりにくいのですが、深い御膳にびっしりと沿線の名物料理が詰まっています。洋風コースにするなら、4皿分くらいあるんじゃないかな?魚も肉も絶品。ピリっとしたタレにつけて食べる温野菜も、新鮮さが感じられておいしかったです。


季節を映した さくらご飯も、スープも、ホカホカ。揺れる列車での温かい食事、まさに食堂車です。
スープはお代わりOK。ご飯がお代わり自由なのかは分からないけど、お願いしたら持ってきてくれました。小皿の「ご飯のお供」が、またおいしかったんです。遠慮しなければ、4杯はいけました。


料理にお品書きに絶景に、忙しく目と口を動かしていたら阿久根着。こちらでも駅マルシェがあるのですが、2号車の乗客はほとんどご飯に熱中していました(笑)。
阿久根のことも忘れないでとばかり、黄色のハッピを来た市の方が、ウニ丼祭りのパンフに絵葉書、ボンタン漬けを配りに回りました。嬉しい心遣いだなと思っていたら、車内から「市長!こっち向いてください」との声が。なんと阿久根市の西平市長、その人だったんです!

阿久根市といえば佐敷と同様、新幹線に通過されてしまった街。沈下してしまった市の勢いを背景に、数年前には市政が混乱したことでも知られていますが、接戦を制した新市長の地道な仕事ぶりから、沿線の期待を感じました。
帰路に沿線でどこか1駅降りることにしていたのですが、敬意を表し、阿久根市内にすることに決定(笑)。


食後のデザート。これもまた、一つ一つがおいしかった。


南に下るにつれて、透明度を増していく海。食後のコーヒーを味わいつつ、南国の海岸線の風景を楽しみます。

東シナ海沿いに走る「おれんじ鉄道」は、九州内でも1、2位を争う絶景路線だと思います。これだけの資源を活かしきれていなかったことに もどかしさを感じていましたが、これまでの三セク観光列車の概念を大きく超える列車が走り始めました。

この日は連休ということもあり、7~8割の乗車がありましたが、従来にない列車だけに、この先も集客できるのかは何とも予想ができません。食事のメニューは月替わりとのことですが、各地の観光列車や寝台特急のように、いかにリピーターを獲得していくかが鍵となりそうです。

九州という、鉄道サービスにかけては先進的な地域だけに、乗客の求めるサービスもハイレベルなはず。今後の乗客の獲得のためにも、例えば食事のボリュームは適切なのかだとか、サービス提供のタイミングだとか、一部では研究の余地はあるようにも思えました。

それでも、地方の3セク鉄道がここまでの企画を実現させたのは、驚くべきことだと思います。列車という形こそ水戸岡氏の労作ですが、コンセプトの立案や沿線とのタイアップなどなど、超えるべきハードルは数えきれないほどあったはずです。だからこそ、磨きをかけたサービスでいつまでも走り続けてほしいと思います。


使用済み食器の山。すべて駅で洗うようです。裏方の苦労も、大きそうな列車です。


3時間の満足度120%(TBSへのコメントです)の旅を終え、川内に到着。狭いホームは、さっそく記念撮影の会場になりました。折り返し列車に乗る人も交錯し、ごった返します。


折り返し2号ではすぐに食事の時間になるらしく、料理の積み込みが行われていました。こちらは洋食の肉料理メインらしく、お皿にナイフ・フォークを使った、本格的な料理コースとなるようです。


ホースを接続しての給水作業。容量は100リッターしかないらしく、給水しなければ2号の途中で水切れを起こしてしまう計算になるのだとか。わずか30分の「開店準備」は、とても慌ただしい雰囲気でした。

これらの努力の一つ一つが、大きく実を結ぶように祈ってます!

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2013年3月23日、南九州の第3セクター鉄道「肥薩おれんじ鉄道」に、新たなる観光列車が走り始めました。

その名は、「おれんじ食堂」。工業デザイナー・水戸岡鋭治氏のデザインによる観光列車…といえば、JRの観光列車ではすでにお馴染みですが、この列車のコンセプトは大きく異なります。調理室こそないものの、沿線とタイアップして本格的な食事を提供する、限りなく「食堂車」に近い列車です。このような列車が生まれた背景からは、おれんじ鉄道の挑戦と覚悟も垣間見えます。

話題性充分の列車ながら、運行開始当初はマスコミへの露出は少なく、前例もない列車だけに成功するかはなんとも未知数。ぜひ実際に乗って、「体験」したい列車の一つでした。
そこでGW前半戦の中日。職場の仲間5人とともに、満を持して走り出した西海岸のグルメ列車を体験してきました。


おれんじ食堂は、JR線を1駅乗り入れた新八代駅が始発駅です。新幹線との連携も視野に、福岡、関西方面からでも便利な駅が出発地として選ばれました。狭いホームには、期待に胸ふくらませた乗客であふれていました。


はやる気持ちを抑えながら、車内へ入ります。こちらが、僕らの乗車した2号車の海側の「座席」。しっかりしたテーブルに、スマートな椅子がしつらえられた車内は、カフェのような装いです。


山側の座席は、ゆったりしたソファ席。海への眺めは遠いかわりに、ゆったりとくつろげます。


カーテンを引けば、個室のような落ち着きも…


発車するとさっそく、おしぼりのサービスが。布製の、温かいおしぼりが嬉しいです。


各席には、ペットボトルのミネラルウォーターが置かれています。雰囲気に合わせるなら、ペットボトルよりガラスの水差しが合いそうだなと思いますが、使い勝手重視かな?


八代駅を出発しておれんじ鉄道に入ると、さっそく絶景の区間に差し掛かります。おだやかな不知火(しらぬい)の海です。


青い背景に、ドアに記されたロゴが映えます。


景色が良くなってきたところで、コーヒーをオーダー。コースターはゴムでできていて、すべり止めの役割も。コーヒーメーカーで淹れた普通のドリップコーヒーではありますが、絶景のおかげで、どこのカフェにも勝る味に感じます。
肥薩おれんじ鉄道がJR鹿児島本線だった頃、特急「つばめ」のビュッフェで味わうコーヒーも格別でしたが、さらにグレードアップしました。


忙しそうな乗務員さんをわずらわせたくなければ、セルフでコーヒーを貰うこともできます。揺れる車内での持ち運びには注意!お代わりは、駅の停車中がよいかもしれません。


よくばりに、フレッシュジュースも注文。デコポンをジューサーで絞った、絞たてのジュースです。つぶつぶも残り、これがまた美味しいのなんの。
このジュースも、道中ではフリードリンクとして楽しめます。2号車の指定席料金は1,400円と、指定券としてはかなりの値段ですが、ゆったりした座席や、ジュースやコーヒーのサービスまで考えれば、お値打ちとも感じられます。


一方の1号車は、解放感のある内装です。大人数で楽しむには、こちらが楽しそう。
2号車と大きく違うのは料金で、全区間の乗車に食事、各駅での「駅マルシェ」でのお土産も含めたパッケージ料金になっています。昼間の列車は12,800円、夜の列車は14,600円と、高級レストラン並みのお値段です。

JR九州の観光列車は「特急」と銘打っているものの、特定料金の500~1,000円の追加で乗れるものが多いです。沿線の観光バスをからめた割引きっぷがある列車もあり、豪華な内装とも相まって、お値ごろ感があります。
ただこれも、アクセスに新幹線を使ってもらうことで、トータルでペイすればいいという考え方があればこそ。一方で「独立採算」のおれんじ鉄道では、列車単体で稼ぐことが条件になります。高い料金の代わりに、JR九州をも上回る手厚いサービスを提供することで勝負しようという戦略が伺えます。

2003年の新幹線開業後、地元に委ねられた おれんじ鉄道は、慢性的な乗客減と赤字に悩まされてきました。各地の「並行在来線」会社も同様で、各社とも模索が続けられています。
その中でも「おれんじ食堂」は、観光に特化した挑戦と言えそうです。

なお2号車では、オプションとして4,500円の追加で食事を付けることもできます。また各種割引きっぷと組み合わせての利用も可能。僕らも、1回当たり3,500円で九州内の全鉄道の普通列車乗り放題になる、「旅名人の九州満喫きっぷ」を使って来ました。
福岡からの交通費に、食事も含めて9,400円。片道は普通列車になりますが、目下、一番安く「おれんじ食堂」を楽しめる方法です。その分、おれんじ鉄道の売り上げへの貢献は少ないかったかも!


1号車には、食事の準備と飲み物やグッズの販売を行うバーカウンターが。ビールやワインだけでなく、土地柄から焼酎を各種取り揃えていて、大人の雰囲気があります。結婚式明けの二日酔いじゃなければ、いろいろ飲んだだろうな(笑)。
ちなみにこの日は、TBS「朝ズバ」の取材チームが入っていて、3時間の間ずっと取材に奔走されていました。実際のオンエアは2分程度だったのに、ご苦労さまです。
僕もインタビューを受けて、ディレクター氏の誘導通りにコメントしたら、見事オンエアとなりました。列車の雰囲気に合った乗客とは思えないんだけど(笑)。


トンネル内での2号車。海岸線を走っている時の雰囲気とは、またぐっと変わります。夕暮れから、夜にかけて走る列車も良さそう。アルコールの味もひとしおでしょう。


では子どもが退屈な列車かといえば、さすがは水戸岡トレイン。最前部と最後部には、お子様用の展望シートがしつらえてあります。連休中とあって子どもの乗客もあり、このシートは気に入ったようです。客室乗務員と遊んでもらいながら、3時間の間、終始ゴキゲンでした。
ちなみに大人はとても座れない寸法に作ってあり、「大きなお友達」としては子どもが羨ましかったです。


▽続く

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