12月25日・クリスマスの朝は、富山の温泉地・宇奈月で迎えました。
窓を開ければ、眼下には地鉄・トロッコの駅と、雪を頂いた山々。時間は朝7時。ちょっと寒そうだけど、朝の散歩に出てみました。
寒いながらにも、外気は爽やか。ツェルマットの朝を思い出す…なんて言ったら、「かぶれ」かな?でも、今年2月に吸ったスイスの空気以来の爽やかさだったのは、間違いないです。
朝の、人気のない駅。温泉噴水が、モクモクと湯気を上げていました。
駅のホームには足湯があり、由布院駅を思い出しました。宇奈月温泉駅では、入場券を買わずとも外から入れるのはいい配慮です。
雪山を見ながらの朝風呂を浴びて、朝食会場へ。富山の味覚がずらりと並ぶ、ホテル自慢のビュッフェです。あれもおいしい、これもおいしいと手を伸ばしていたら、朝から お腹いっぱいになりました。
せっかくの温泉地、11時前の列車までゆっくりしようと計画を立てていましたが、大幅に繰り上げて9時の特急で、宇奈月を離れることにしました。
理由の一つは、昨日見られなかった富山市ガラス美術館に行くため。そしてもう一つの理由が、9時発の特急が観光列車・アルプスエキスプレスだからです。
元は、西武鉄道で特急レッドアローとして活躍した名車。外観はロゴを入れられたくらいで、大きな変化はありません。東京からの観光客だと、懐かしく感じるのでは。
しかし車内は一新。九州でお馴染み、デザイナー・水戸岡鋭治氏の手で大改造されています。
自由席の1・3号車には、コンパートメント席を新設。
そして指定席の2号車は、水戸岡ワールド全開。九州の観光列車でも見かける形の、書棚を組み合わせたくつろぎの空間が展開されていました。
客室乗務員が乗り込み、ビュッフェカウンターのサービスもあります。コーヒーが200円と、値段はなかなかお手ごろ。
しかし旅の醍醐味は、朝から開けるコレでしょう。観光特急だから許される、贅沢な時間。まわりの観光客も、やることは同じです。
指定席に乗るには、特急券210円に加え、指定券の220円が必要。そんなに高くない気もしますが、地鉄は運賃自体が高めなので、1時間の宇奈月~富山間に2,090円となかなかな金額になります。
天気は回復の兆しが。田園風景の中に、立山連峰が見えてきました。
窓枠を通して見れば、一幅の絵のようです。
地鉄には、レトロな雰囲気あふれる駅が多いです。
1時間の旅路はあっという間で、電鉄富山駅着。窓向きの席から、のんびり景色を眺められて、楽しい時間でした。
目的地は決まっているので、さっそく電停へ。企画きっぷの広告看板が立っていました。なになに、年末年始のうち7日間地鉄電車に乗り放題で、2,500円ですと!?
この3日間で地鉄電車に投じた運賃より、数百円は安い!よく調べてから来ればよかった…。
路面電車で、1日ぶりの富山キラリへ。環状線のセントラムと合わせて撮ると、なんだか未来都市を見ているかのようです。
ガラスの街を標榜する、富山市を象徴する美術館。常設展の入場料は200円と、良心的です。展示室は撮影禁止。6階のグラスアートガーデンは撮影OKだけど、公開はNGとのこと。
硬いガラスならではの質感を生かした作品あり、ガラスとは思えないふわりとした造形の作品あり。ガラスの可能性は、想像以上のものでした。
2階のFUMUROYAカフェで一休み。図書館と同じく、明るいながらも、木の色合いで落ち着ける空間です。
金沢の不室屋さんが経営する、県外資本のお店。加賀棒茶は、ポットで出てきてゆっくり味わえます。付け合せの麩菓子がまた美味しくて、お土産も求めてしまいました。
交差点にあり、行き交う電車を眺めながら休めるのも、また格別な気分です。
「あいの風とやま鉄道」に乗り、富山を離れます。新幹線開業に伴う、JRからの経営分離で生まれた三セク鉄道は、いつ乗っても混んでいる印象が。今日も2両編成の電車は、補助席まで満員でした。
高岡駅で、城端線に乗り換え。本線格の北陸本線は三セクに転換されましたが、支線格の城端線・氷見線はJRとして残りました。
やって来た列車は、新幹線開業に伴い生まれた北陸の観光列車群の一つ、ベル・モンターニュ・エ・メール。長い列車名はフランス語で「美しい山と海」を意味するのだとか。「べるもんた」なる短い愛称もあるので、以下べるもんたと表記します。
べるもんたは、在来のキハ40形式の改造車です。しかも通勤時間帯には普通列車にも運用されるため、山側の座席はオリジナルのボックスシートのまま。ロングシートもあります。
ラッシュに備えてつり革も。木製の握り輪に、吊り部分には伝統工芸品も仕込まれた、おそらく日本一 手間暇のかかっているつり革だと思います。
編成は1両きりで、運転扱いをするのは運転士一名のワンマン運行。お値段も安く、指定券520円の追加だけで乗れます。快速なので、青春18きっぷでもOKです。
海側の席は、窓を向いたカウンター。窓も大きく取られ、日曜日の城端線では立山連峰、土曜日の氷見線では富山湾の眺めを楽しめます。広いテーブルは、通学時の勉強もはかどりそう。
高岡駅の発車時には3割程度の乗車率でしたが、新高岡駅で新幹線の乗り換え客を受けて、7割くらいの乗りになりました。
車両の後方では、べるもんたのウリの一つである、軽食の準備が進んでいます。お弁当でも、スイーツでもないそのメニューとは、富山湾の鮨!
板さんがネタケースを持ち込んで、その場で握る、ホンモノの握りたて鮨です。
そうそう、マツコの番組で観光列車特集があった時、この板さんも出演してましたっけ。なぜかガリの方が絶賛されていたような(笑)。
列車には板さんのサポートや、ボランティアの沿線ガイドさんも乗り込んでおり、わずか1両の列車にスタッフが6人という体制です。
列車に揺られていると、ぷち富山湾鮨セットが運ばれてきました。5貫で2千円となかなかなお値段ですが、動く列車内で握られたものなんだから、そのもの以上の価値がありますよね。国内で同じ経験ができるのは、「ななつ星」くらいでは?
味ももちろん、とろけるおいしさでした。
鮨の予約はJRの窓口ではできず、VISIT富山のホームページで別途予約するシステム。当日でも余裕があれば注文できるそうですが、ひと手間かけてでも予約しておいた方が安心です。
列車は、沿線を代表する街、砺波へ。大歓迎の人波が迎えてくれました。
今回は通過するだけの砺波。チューリップの産地として有名で、GWには盛大なチューリップ祭も開かれるとか。社会科の授業で習ったその場所に、行ってみたいものです。
さらに田んぼの中では、歓迎の人…と、かかし?
出発から40分、終点・城端が近づいてきました。雨晴海岸という景勝地を持つ氷見線に比べ、車窓は地味な印象がある城端線。そんな中でもハイライトの一つ、立山連峰は、最後まで全貌を見せてくれませんでした。
城端駅に到着。木造平屋建てで、古いけれども人手の温もりが感じられる、好感が持てる駅舎です。
折り返し時間は、わずか9分。駅舎内は、特設のお土産屋さんに早変わりです。
1日の乗客が300人にも満たない駅が、ひと時にぎわいます。べるもんたの運行開始は、駅の存在感を地元にアピールする機会にもなっているのかもしれません。
帰路の高山行きべるもんたは、新たな乗客も加えてほぼ満席状態になりました。僕自身も、当初はきっぷを抑えらず、キャンセルを待って指定券を入手しました。
某近鉄系の、団体さんのツアーに組み込まれていたようです。指定券を持たない飛び込みの夫婦もおり、ロングシートが活躍します。
帰路は、沿線の地酒3種の飲み比べセットを2つ、押さえておきました。6銘柄から3つを選ぶシステムなので、2セット頼めば制覇できます。1セット1,500円で、鮨と同様、ホームページで予約しておけば安心。
個人的には、苗加屋が好み。酒蔵は城端線の駅から近く、蔵の見学も受け入れているとか。次回訪問時の楽しみが、また増えました(笑)。
下り列車では、車外から手をふるだけだった砺波の中学生たち。上りでは停車中に乗り込み、差し入れしてくれました。どこにでも売っているような小袋のお菓子だったけど、気持ちが嬉しいですね。
心はぐっと砺波に捕まれ、沿線の広告塔としての「べるもんた」の役割は、少なくとも僕に対しては充分果たせていました。
1日2往復の「べるもんた」。今日の運行はこれにて終了ということで、鮨カウンターでは撤収作業が始まりました。夕方の通勤列車では、出入り口になる部分なので、終点を前に片付けておかなくてはならないのです。
新高岡駅では団体さんを降ろしたと思ったら、1駅間だけの体験乗車の家族連れが乗ってきて、賑やかなまま高岡駅に到着。
駅についてからも、撤収作業は続いていました。大変なお仕事のおかげで、富山の味覚を堪能できました。ありがとうございます!
高岡駅から富山駅までは、あいの風富山鉄道~IRいしかわ鉄道の直通電車で。やはり2両の電車は満員で、先頭の補助席に居場所を求めました。
ドアは半自動扱い。補助席に座っていると、いきおいドアボーイを買って出ることになります。
金沢駅に到着。もてなしドームを見ると、ああ金沢に来たという気分になります。
夜の福岡行き飛行機に接続するバスまでは、1時間半の余裕が。しかし市内へ観光に出るには、時間が足りない感じです。
そこで未訪の地、小松の駅前を探検してみようと、北陸本線の下り電車に乗車。あいの風やIRで乗り慣れた、521系電車の「本家」JR西日本バージョンの4両編成でした。
約30分、立派な高架の小松駅で下車。
さすがは世界のコマツの本拠地。駅前東口には、超大型ダンプがどんと展示されています。夜は遠巻きに眺めるしかないけど、ライトアップされた姿もまたきれいです。
そしてモノづくりの街にふさわしく、サイエンスヒルズこまつ・ひととものづくり科学館なる立派な施設も。科学館は夕方までだったけど、公共スペースは開放されていました。
繁華街は西口。企業城下町だけあり、ビジネスホテルやチェーンの居酒屋が林立しています。イルミネーションもきれいです。
小松駅から小松空港までの路線バスは、20分毎の頻発運行。しかも駅からは、わずか12分という距離で、街に近い空港という印象でした。
金沢から東京は北陸新幹線の圧勝といわれるけど、小松だとまだまだ飛行機の方が有利なのでは。敦賀延伸時には、また新幹線優位に動くのでしょうけど。
離陸の1時間半前に空港到着。どことなく、昭和レトロなイメージがただよう空港です。
金沢カレーの夕ご飯を食べて、お土産を選んで、ラウンジでのんびりして疲れを癒しました。明日からは仕事…。
機体に問題が見つかったとかで、搭乗時間が少し遅れました。
飛んでしまえば、1時間と少しで福岡へ。タラップを降り、ターミナルまでは乗り慣れた西鉄バスで移動です。非日常感たっぷりの旅でしたが、空港で早くも、気分は日常に帰って来てしまいました。