Chang! Blog
福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです





 Sバーンの駅に潜り、空港直通の電車に乗車。留置線に止まる長距離列車群に見送られながら、フランクフルトを後にしました。


 空港に戻り搭乗手続きを済ませれば、楽しかったヨーロッパでの9日間はほぼ幕を閉じたも同然です。


 出国審査と保安検査を終え、搭乗口へ。入り口だけが見えたJALラウンジには雛人形が見えて、3月も近づいてきていること、そして帰国を目の前にしていることを実感します。
 出発した時は、まだ2月の「中旬」といえる時期でした。


 カフェバーにビールがあったので、名残惜しくも最後の一杯を味わうことにしました。さすがは空港、日本並みの値段だったけど、日本に帰れば飲めなくなる味です。
 おっちゃんのウエイターさん、「パニーニ、パニーニ、パニーニ!」としつこく勧めてくるわ、小ビールを「ベビーサイズね!」とからかってくるわで、とても楽しかった。まだ旅は終わっていませんでした(笑)。


 帰路の便は、フランクフルト夜7時発、成田昼2時着という夜間飛行便。東へ向かうので、夜がとても短くなります。
 というわけで飛行時間のほとんどは睡眠時間。起きて朝ごはんを食べれば数時間で着陸と、往路よりは違和感のない行程でした。ただ熟睡にはほど遠いし、ケツは痛かった(泣)。学生時代、座席夜行に何連泊もできていた僕は、若かったんだな。


 おかえりなさい、の字に、なんだかジーンときてしまいました。


 定刻に着いてくれたおかげで羽田までの時間は余裕ができたので、直通のアクセス特急を利用してみました。1時間40分とリムジンバスより時間はかかるものの、お値段は1,787円と安めです。
 特別料金不要のアクセス特急は、スカイライナーと違って純然たる通勤電車。広々としたロングシートに、日本の電車を実感します。


 北総線から京成線に入ると、街の雰囲気がぐっと庶民的になります。東京の街だから決して身近な場所ではないのだけど、日本というだけでどこかホッとする空気です。
 きちんと改札を行う不公平感のないシステムも、殺人ラッシュに備えた大量輸送の仕様も、これはこれで鉄道先進国の一つの姿。当たり前と思っていたものも、決して当たり前ではないことを今なら感じられます。


 電車も当たり前のように定刻だったので、1本はやい福岡便に変更することができました。最後くらい新婚旅行らしくファーストクラスにでもしようかと思っていたけど、この便にも後の便にも空席がなかったのは残念。
 狭いエコノミーで締めるのも、僕ららしい旅…かも?


 福岡空港着。日本に帰ってからの初めてのメシを何にしようか散々迷った挙句、ターミナルで海鮮丼を食べました。新鮮な海の幸、ビバ日本、ビバ福岡!
 というわけで10日間の長きに渡る旅から、無事帰宅。思い出はたくさんできたけど、一番印象的だったのは、流暢に英語を操るヨメさんかな? これからも夫婦ともども、よろしくお願いします。

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 朝6時、この旅最後の朝を迎えました。早朝の人通りが少ないのは、ストラスブールも同じです。
 日曜の早朝、いつもの僕なら絶対に起きていない時間ではありますが。


 ドイツ・フランクフルトまでは気分を変えて、ルフトハンザ航空直営のエアポートバスを利用してみました。バスには「便名」が割り振られ、リムジンというよりは飛行機の代替便のような位置付けです。ルフトハンザのHPで予約できるし、マイルも貯まります。
 ヨーロッパでは、同じように飛行機のコードが割り振られた列車もあるそうです。発想が違いますなあ。


 早朝とあって、乗車率は2割程度。リクライニングシートに座るのは、ずいぶん久々な感じもします。
 TGVに見送られ、半日と少し足らずで離れることになったストラスブールに別れを告げました。


 バスは4列座席ながら、大柄な車体でゆったり快適。トイレも付いていて安心です。
 仏独国境のライン川をわたらず、しばらくはフランス領内の高速道路A35号線を北上していきます。


 国境の検問所を通過。もちろん例によって審査もパスポートチェックもなく、検問所のブースには人っ子ひとり見当たりませんでした。無料化された直後の有料道路みたいです。


 ただ国境を越えると、道路と景色が様変わり。高速道路から、ドイツ領内に入ったとたんに農道になってしまいました。地図上は一応、9号線の番号が割り振られていますが、センターラインは破線です。
 車窓も牧草地から、急に森の中へ。街づくり…というか、田舎づくりの考え方が国境を境に変わってしまうんでしょう。


 アウトバーンに乗り、再び快走を始めたバス。ドイツといえば風力発電所だらけなイメージを持っていたのですが、ここまで見る限り、思っていたほどの数ではありませんでした。
 ようやく間近で見られた発電所は、それはすごい勢いで回っていました。


 ドイツ南部を縦貫する、主要幹線のアウトバーン5号線へ。バス自体も100km超のスピードで走っているのに、自家用車が軽々と追い越して行きます。ドイツ車に伍して、トヨタやズスキの車も負けていないのは頼もしいです。
 これだけ自由に走れる車に対抗せねばならないドイツ鉄道も、大変な環境ではあります。


 約2時間半で、フランクフルト空港着。運賃49ユーロ(6,420円)は高いなと感じていましたが、走行距離は、同じ所要時間の日本の高速バスに比べれば長いはずです。
 着いた場所は空港ターミナルではなく、空港駅の長距離列車ターミナルでした。地下のSバーン駅に比べ、大きなドーム型の駅舎は明るい雰囲気です。直接ICEに乗って全国各地に行けるのは便利。JALの正規運賃だと、フランクフルトからの接続ICEが無料になる特典もあります。


 JALの搭乗手続きは16時からなので、空港の荷物預かり所にバックを預け、身軽になってSバーン乗り場へ。夕方の飛行機まで、初日は満足に見られなったフランクフルト観光に飛び出しました。
 チケットは、券売機に悪戦苦闘しながら市内有効のグループ用1日乗車券を購入。5人まで有効で15.8ユーロ(2,070円)なのだから、市内までの片道運賃に比べ、だいぶ割安です。ドイツやスイスのゾーン運賃制度だと、自ずと1日券に誘導する流れになるのかも。


 フリー乗車の1日券と、検札・改札なしの信用乗車の組み合わせは、かなり気楽で自由に動き回れる感があります。
 市内直通のSバーンを街中で降りてやって来たのは、パウラナー・アム・ドム。大聖堂側にある地ビール工房レストランです。あれ、昨日と同じ行動パターン?


 メニューには日本語もあって、安心。郷土料理をさかなに地ビールをぐいっと傾けます。ドイツビールはもう何杯目か分からないけど、やっぱり最高。
 個人的には昨日のフライブルクの方が好みの味ではあるけど、あえて比べれば、のお話です。


 裏から見た大聖堂は工事中の様子なのでパスしていたのですが、表に回り込めば市で賑わっていたことを後から知りました。


 ふたたびSバーンで市内を移動。電車はどれもクロスシート主体で、大都市の地下鉄なのに大丈夫かな?と思いますが、日本の地下鉄のようには混まないのでしょう。
 大都会なのにゆったりとした通勤事情、うらやましい限りです。


 オステントシュトラーセ駅で下車。広々とした広場には屋外用の?本棚が置かれ、無人図書館になっていたのは面白い光景でした。
 近傍の動物園電停から、フランクフルト名物のリンゴ酒電車に乗るつもりだったのですが、出口を間違えたため遠回りになり、その間に刻々と迫る発車時刻。ようやくたどり着いたのに、タッチの差で乗れませんでした。オーマイガッ!


 気を取り直して街中に出たものの、やはり名物の電車はあきらめられません。市内一周は無理でも、せめて途中までは乗ってみたい!時刻表とにらめっこして、出直してみました。
 余談ですが、この間に立ち寄ったハウプトヴァッヘ駅のトイレはチップ制。清潔ではあるけど、男子トイレは溝があるだけでびっくりしました。日本でも一昔前は公園で見られたものですが…


 というわけで1時間後の動物園前駅に戻り、改めてリンゴ酒電車を出迎えました。近代的なLRVが行き交うフランクフルトのトラムにあって、旧型の赤いかわいい電車は、目立つ存在です。


 車内はボックスシート。陽気な車掌さんが切符(6ユーロ=786円)を売りに回り、1本ずつ名物のリンゴ酒をサーブしてくれます。


 フランクフルトの街を眺めながら、ラッパ呑みでぐびっと傾ける名物のリンゴ酒。ビアホールもいいけど、電車で飲むリンゴ酒も最高の味です。ついつい、追加料金を払ってお代わりをしてしまいました。


 トランジットモールや芝軌道の区間ばかりではなく、リンゴ酒電車の区間には道路と完全に併用する所もあります。車に挟まれ走る電車は、なかなか窮屈そう。
 写真で見たことがある、トランジットモール化される前のフライブルクの写真を思い出しました。


 リンゴ酒電車は1時間に1本(観光シーズンには30分に1本)走っていて、市民には見慣れた電車のはずだけど、注目度は抜群です。


 フランクフルト中央駅を通過して、初日に泊まったメッセ周辺へ。メッセ駅の先まで線路は続きますが、途中折り返し列車用にループ線があり、ぐるりとまわって元きた方向へ引き返しました。
 これなら運転士さんが前後を移動する必要はなく、折り返し時間は最小限で済みます。観光電車としても、楽しいアトラクションのひとつです。






 繁華街から大聖堂広場、住宅地と、街のハレとケ両方を眺められるのは、都市の毛細血管である路面電車ならでは。車窓を眺めているだけで、ひととおり街の雰囲気を感じ取ることができます。
 日本で同じコンセプトの路面電車といえば、鹿児島の観光電車くらいしか思い当たりません。かの地も『芋焼酎電車』にでもすれば、結構ウケそうな気がします。いや、間違いなく流行る。


 コース中盤のフランクフルト中央駅で降りようかと思っていましたが、DBのアプリとにらめっこした結果、リンゴ酒電車の終点1つ手前、オステントシュトラーセまで乗っても余裕を持って空港に行ける事がわかり、ほぼ全コースを楽しむことができました。
 旅の最後も最後ですが、楽しい電車に乗れて大満足です。

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 あまりの居心地のよさに、もう1泊してしまいたくなったドイツ・フライブルク。しかし先の行程もあるので午後1時前、名残惜しくも街を離れました。


 ドイツでは特急ばかりに乗ってきたので、今度は普通列車にしようと予定を組んでいましたが、ゆったりビールを飲んだお陰でタイムアウト。結局、3度目のICEになりました。
 ただ今回は、最新型のICE3。機関車牽引ではなく、日本の新幹線のような電車タイプになっているのが特徴です。2編成併結で、細かな需要に対応しています。


 下車駅のオッフェンブルクまでは45分程度。席に着くのも面倒だし、コーヒーを飲みたくもなってきたので、食堂車のカフェコーナーを目指しました。
 食堂車区画はICE1と違い、1等用の座席がついています。レストランらしい雰囲気に劣るのは、ちょっと残念。営業しない時は、座席として使えるような配慮でしょうか。


 カフェ区画はスタンディングタイプ。窓の高さは他と同じなので、景色を眺めたければちょっと腰をかがめないといけません。
 ICE1の食堂車の方がよかったけど、それは比較の上での話。最新型になり、1編成あたりの両数が減る=営業がしにくくなっても、食堂営業が続けられているのは素晴らしいことです。


 オッフェンブルクで乗り換えて、フランス・ストラスブールを目指します。トラムのような、軽快な姿の低床式ディーゼルカー。わずか2両編成で、ローカル線の雰囲気です。


 特徴的な「垂直に立っていない窓枠」を、車内から見るとこんな感じ。
 

 クロスシート主体の車内は、発車する頃には満席近くなっていました。


 晴れ渡る穀倉地帯を、各駅に停車して結んで行きます。駅周辺へあまり家は張り付いていないけど、各駅ごとに一定の乗降客はいます。
 のんびり、ゆったりしつつも、地域の足として活躍するローカル列車です。


 ライン川を渡ればフランス領。この旅、4カ国目を迎えたけど、国を超えたという実感も緊張感も気負いも、まったくありません。手間がないとはいえ、パスポートにフランクフルト空港のスタンプしか残らないのは、ちょっと寂しくもあります。


 鉄っちゃんとしてフランスを実感できるのは、やっぱりTGV。ただこれとて、スイス領内でも見かけました。


 駅の端の、ローカル列車用ホームに着いて終着。駅本屋の方に行くと、細かな装飾が施された鉄骨の上屋が迎えてくれました。


 しかし、それよりも驚いたのが駅舎。歴史ありげな重厚感のある駅舎を、鉄骨とガラスのドームが覆っていました。「旧駅前」は、中性的な空間になっています。


 ペダルを漕いで、自分で発電する充電スポット。これは楽しい。日本でもウケるのでは?


 そして駅の外に出れば、もはやガラスドームしか見えません。宇宙から降り立ってきたかのような、およそ駅には見えない建物です。
 これを新旧の共存というのかは判断できないけど、少なくとも旧駅舎を取り壊すことなく、未来的な景観を造りだしたことには間違いありません。


 駅前はホテルやレストランが並んでいて、ちょっとした駅前通りを形成していました。


 今宵の宿は、そんな並びにあるホテル・ビクトリア。最後の宿なのに55ユーロ(7,200円)とこの旅最安値の宿だったので不安もありましたが、エントランスはきれいでひとまず安心。建物自体は古くても、きちんと手は入れられているようです。


 エレベータが、止まる時にガクン!となる古いタイプだったり、増築を重ねたのか廊下に段差があって大荷物に難儀したりはしたけど、部屋はこぎれいで不満なし。色使いもポップでかわいいです。


 窓を開けば、駅前通りを俯瞰できました。


 明日の朝には発たねばならぬストラスブール。早速街歩きに出かけてみましょう。
 トラムの1日券(3人までのグループ券で5.7ユーロ=747円)を買い、階段を下ります。トラムの駅は、なんと地下にあるのです。上下移動が伴い、地上レベルで乗れるトラムの利点は失われていますが、水平移動の距離は短く設計されています。


 すぐに地上に出て、街の中心部へ。複数系統が十字に集うオム・ド・フェール電停は、円形の屋根がかけられ中央駅といった風情です。


 そしてこの街も、中心部の街路はトランジットモール。歴史的な街並みの中を、デザイン性の高い流線型のトラムがすべるように走って行きます。新旧の融合が面白い街です。


 広場には市が立っていて、夕方の時間でも多くの市民が立ち寄っていました。トラムと広場で街の骨格が形作られる様子に、午前中に見たフライブルクが重なりました。


 街の中心に立つ、ストラスブール大聖堂。装飾は、これまで他都市で見てきたどの聖堂よりも細やかです。一つ一つの彫刻に、作り手はどんな思いを込めたのか。思い巡らせて外を巡れば、1週間あっても時間は足りないでしょう。




 細やかさは、内部も同じ。緻密に作られたステンドグラスからは、CGでは再現できないような光が差し込んできます。
 とても言葉に表すことができない感情が渦巻き、なんでだろう、涙が出ました。建築物を見て涙腺がゆるむだなんて、初めての経験です。


 からくり時計が17時になる瞬間を待ちましたが、ちょこっと動いただけで周囲の人ともども拍子抜け。実は本格的に動くのは12時30分だけらしく、その時間帯には別途入場料が必要なんだそうです。見てみたかった!


 5ユーロを払えば塔に登れるとのことで、せっかくなのでチャレンジしてみました。エレベータなんて便利な文明の利器はもちろんなく、ぐるぐると回る螺旋階段をひたすら登らなければなりません。
 寒いし、目が回るし、結構怖いし…少し後悔しつつ、息を切らしつつも登った先に待っていた景色は…


 中世ヨーロッパにタイムスリップしたかのような、赤い屋根の家々。そして夕暮れ。心臓の底まで震わせるような鐘の音が、街中に鳴り響いていました。
 登ってよかった。1分前までの疲れはどこへやら。心底、そう思いました。


 上り下りの途中では、外壁の装飾も間近で見ることができるのも、登った人だけの特典です。




 ロアン宮から、イル川のほとりをそぞろ歩き。大切な人と仲良く歩きたい、夕暮れの散歩道です。




 川の分岐点上にある、プチフランスと呼ばれるエリア。ここフランスじゃん!と思ってしまいますが、いろんな歴史的な経緯があるようです。
 木組みの建物が並ぶ、雰囲気のいい街並み。人通りは少ないけれど、レストランはぼちぼち開き始めていて、優雅に食事する人たちが窓辺に映ります。


 ぐるりと歩いて、広場に戻ってきました。ライトアップされた大聖堂は、昼とはまったく違った姿です。
 昨日のフライブルクは昼夜の人通りの差が大きかったけど、こちらは夜になってもなお賑やかさが続きます。


 この旅最後の夕食、ちゃんとした所で食べたくて、広場近くのレストランへ。ところがウエイターさんがまったく英語が分からず、かといってこちらの意図を分かろうと頑張ってくれるわけでもなく、最終的には放置されてしまいました(泣)。
 ちょっと気分も害してしまいました。大学の第2外国語で履修「させられていた」仏語、もっと頑張っておけばよかったかな。ちなみに、写真の場所と記事は関係ありません。


 ただ夜の街並み、そして大きな窓に車内の様子を映しながら走るトラムは、本当にきれい。今度は時間を取って来たいと思える街であることには、変わりありません。


 駅前のホテル1階にあるレストランに、英語を積極的に話してくれるウエイトレスさんがいて、ようやくほっとした気持ちで食事にありつけました。ご当地、アルザス料理のコースです。
 発酵させたキャベツがベースの煮込み料理、シュークルート。ちょっと食べなれない味ではあるけど、食べ進めるうちにクセになる味でした。大満腹のお腹をかかえ、ヨーロッパ最後の夜は更けて行きました。


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 旅もいよいよ終盤。すでに「帰路」の途上ではありますが、体力の続く限りめいっぱい楽しんでいきたいと思います。


 ドイツ南部のフライブルクで、8日目を迎えました。今日は土曜日、朝7時。電車もトラムも動いてはいますが、昨夜に比べれば本数は少なめで、行き交う人もまだまだ多くはありません。


 習慣的に?1階のレストランで朝ごはんを食べてましたが、別料金だったことに後から気付くという失敗(笑)。ホームの真横にあり、電車を見ながらのブレックファストは、鉄っちゃんとして悪くありませんでした。


 身支度を整え朝9時、トラム乗り場に行ってみれば、だいぶ人が多くなっていました。まずは3系統に乗り、中心部を経由して郊外へと向かいます。


 約15分、終点のヴォーバン着。軍事基地跡に作られた、職住近接型の新興住宅街です。トラムの終点はループ線になっていて、すべて芝に覆われ公園のようになっています。
 真横にはバスが発着して、さらに郊外へ乗り継ぐ際にもシームレスな環境です。


 トラムが走るメインストリート。幅はゆったりと取られ、路面電車の軌道は芝に覆われています。ここも、縦に長い公園のようです。
 メインストリートに面する集合住宅の1階は、店舗やオフィスにすることを義務付けられています。日本のマンション団地のように、住む人は多いのに通行人がいない、という状況にはなっていません。


 1階部分を、歩道に開放しているアパートもあります。真下を通行人が行き交う住まいって、どんな気分なんだろう…という我が家も南福岡駅ビル上にあり、家の下を2万人近い人が毎日通っているわけではありますが(笑)。


 メインストリートから、わき道の住宅街へ入ってみましょう。ラッパーズヴィルのような車の通行規制はないものの、メインストリートからメインストリートへ「コの字」状に戻ってくる形になっているので、自ずと関係のない車は入ってこない構造になっています。
 地面に書かれたサインは「遊びの道路」を現してます。歩行者はもちろん、路上で遊ぶ人も優先です。車がない時代の、路地裏遊びの現代的発想といえます。


 個性を発揮しつつも、全体としての調和が図られた集合住宅群。居住予定者同士が設計段階から作り上げていく、コーポラティブハウスも多いのだとか。
 集合住宅ばかりだけど、押し込まれた感がないのは、住宅の間にゆったりと緑地が取られているから。水路も四方をコンクリートで固めるのではなく、のり面を草で覆い緑地の一部を成しています。


 コの字型の「遊びの道路」を結ぶのが、歩行者専用道路。住宅間を移動するなら、歩くか自転車が一番便利です。


 では住民なら家の前に駐車する権利があるのかというとそうではなく、メインストリートからはだいぶ裏手にあたる場所に、住民用の立体駐車場があります。車を持つことは否定しないけれども、意図的に不便にしているという点は徹底してます。
 ほとんどの家では、マイカーを停めているの駐車場よりもトラムの電停が近く、そもそも車を持たないという選択をする人の方が多いのだとか。


 エリア東側の駐車場は、太陽光発電所とスーパーも兼ねています。木ルーバーで覆われた外観は、ガラスで覆われた上記の駐車場とは好対照。
 平面駐車場のような雑然さをも排除されていて、景観上好ましいものです。


 駐輪場はアパートの前にあるので、買い物程度のお出かけであれば、自転車が一番便利な乗り物かもしれません。
 フライブルク市内までも、自転車道が整備されています。


 世界が注目する環境先進地だけあり、住宅地でありながらホテルも備えています(電車の後ろの右側の建物)。こちらの外観も木ルーバーで、環境へのやさしさをアピール。通りに面して開けた内装もオシャレで、泊まってみたかったです。
 またホテルは、障がい者雇用の場にもなっているのだとか。人にもやさしいホテルなのでした。


 住宅地南側はビオトープとして保全され、自然のせせらぎと、土の散歩道が残されています。
 ヴォーアンの人口密度は集合住宅が多いため140人/1haに達し、これは東京並みの数値なのだとか。そこかしこに残された緑地は、高密度居住だとはにわかに信じられないほど、自然に恵まれた印象を与えます。 


 小川にかかる橋を渡ったエリア外には、乗馬クラブまであります。街に近いのに緑が多くて、乗馬までできる住宅地。車の不便さを差し置いて、人気のエリアというのも頷けます。
 以前から聞き及んでいた、環境先進住宅地のヴォーバン。その計画から実現までには大変なプロセスがあったとのことですが、難しい理屈を抜きにしても、単純に住んでみたいと思える素敵な住宅街でした。


 大いに刺激を受けた街から、再び3系統で市街地へ。トラムには低床の最新式電車ばかりではなく、高床のちょっとレトロな車両も健在です。
 高床とはいっても部分的には低床になっていて、体が不自由でも安心。運賃を払いに運転席まで行かなくてもよいからこそ、実現できた構造でもあります。




 お昼も近づいてきた、中心部で下車。土曜日の午前中、僕だったら家で寝ていたい時間ですが(笑)、街は賑わってきていました。


 中心部はこの人通り!フライブルク市の人口は23万人で、久留米市よりもだいぶ小さな都市ですが、ごった返すような人通りです。
 もちろん観光客も一定いること、大学が多いこと、広域圏の中心都市であることなど差し引いて考えるべき要素はいくつもありますが、それにしても…トラムと歩行者が共存するトランジットモールの光景も、実際に目にすると衝撃的です。


 街の通りには水路が張り巡らされ、時々足がはまりそうになったり、つまづきそうになったりしますが、景観上はいいアクセント。小舟がプカプカ浮かんでいます。


 それに興味をひかれた子どものすぐ側を、電車が通過。見ている方がヒヤヒヤしますが、電車も親も意に介する風ではありません。
 「慣れ」のなせる業なのか、自己責任の社会ゆえなのか。なにかとうるさい、日本では真似のできない部分ではあるかなと感じました。


 街には大道芸や楽団、アーティストなどなど、街角という街角にパフォーマーが出ていてお祭りのようです。歩いているだけで楽しく、テーマパークにでもいるような気分になりますが、この街では日常なのでしょう。


 パフォーマンスを見ながら、オープンカフェでコーヒーやビールを飲みながらくつろぐ市民。うらやましすぎる、嫉妬するほどの豊かな週末です。


 水の豊かさは川にも現れています。街の中心部を流れる川は、ざあざあと流れる勢いです。歩道やビル地階の窓の高さギリギリを流れていて、大雨の時が心配になります。


 (笑)


 街のもっとも中心となる位置は、デパートでも市役所でもなく、大聖堂とその広場です。


 その広場では、市が立っていました。観光客向けの特産品もあまたあるけど、主に扱っているのは地元向けの生鮮品です。
 大道芸、日曜市、トラム…久留米でも街を元気にしようと様々なことに取り組んでいる団体がありますが、それらがすべて花開いた姿はきっと、フライブルクのような街なんだろうと思います。


 広場に面して、地元ビール工房の直営レストランがあるあたり、いかにもドイツです。お昼時少し前で、入ってみれば1階席がちょうど埋まったところ。おかげで、だれもいない2階席の窓際に案内されました。


 大聖堂を仰ぎ見ながら、ビールで乾杯!香り立つ、うまいビールでした。
 僕、幸せです。

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 もう乗り慣れた感も出てきた、湖畔の線路をチューリッヒへ。首都に近い場所ではありますが、湖畔の丘には、牧草地やブドウ畑も見えます。
 おいしい乳製品やワインは、人の暮らしに身近な場所でできているんですね。


 5日ぶりのチューリッヒ中央駅に到着。乗り継ぎの時間が少なくて、初日に見忘れていた駅舎と対面することができませんでした。まあ、きっとまた来る機会もあることでしょう。古いものも大切にする国だから、何年かそこらで駅舎が建て変わることもないだろうし。


 国境の駅・バーゼルまでのインターシティは、平屋の客車列車でした。リズミカルに並んだユニット窓、外向きに開く乗降ドア、むき出しの最後尾の貫通面にはバッファ式の連結器。


 車内は、ゆったりとしたクロスシート。
 昨日まで乗ってきたような二階建ての新型車もよかったけど、子どものころ「世界の車窓から」で見てきた典型的なヨーロッパの長距離列車のような列車に、なんだか顔がほころんでしまいました。


 SBBアプリにはミニバー連結と出ていたのに、そのような車両は見当たりません。運用変更かなと思っていたら、ほどなくして「ミニバー」と書かれた車内販売ワゴンが回ってきました。コーヒーを飲んでほっと一息です。
 バーゼルまではノンストップ。到着直前に、向かいの席のマダムから「あななたち、ドイツ方面?」と聞かれました。うなずくと、「あななたちが乗る予定の列車は、キャンセルになったそうよ。ひとまずドイツ側のバーゼルに向かえと言っているわ」。


 終点バーゼル着。SBBの案内所で聞いてみても、ドイツ側の詳しいことは分からないので、ひとまず普通列車でドイツ側に行くようにとの案内でした。


 JRの境界駅で相手のことは分からないと言われたら「ちゃんと連携しろよ!」と思ってしまいますが、ここは国境。仕方のないことかなと割り切り、ホームに止まっていた普通列車に乗り継ぎました。
 DBのアプリを見てみれば、バーゼル~フライブルグの「線路上で急病人が発生」とのこと。僕らの乗る予定だった列車は先々に遅れを広げないよう、フライブルグ折り返しになったようです。


 ドイツ側に到着。駅員さんに聞けば、ひとまずホームに止まっているICEに乗れとのこと。上がってみれば、1時間前に発車しているはずのICEが抑止中でした。
 90分遅れの予告が出ていて、ならばあと30分で発車か。フライブルグまでも40分だし、席を探すのも面倒だからとデッキに立ちました。これがとんでもないミステイクだったわけで…


 待てど暮らせど発車しません。時々車掌さんの案内放送が入りますが、その声もどこかお疲れ気味です。
 アプリで公開されている遅れ時間は120分、150分とどんどん伸びていきます。デッキは寒いし、後続列車でやって来た人たちでどんどん混んでくるしで、疲労困憊モード。適当な空席に座っておけばよかったと思っても、後の祭りです。拡大していく遅れ、ドイツ鉄道ではよくある話なんだとか。


 ようやく発車したと思ったのもつかの間、トンネルを出たところで列車は止まってしまいました。平行する近郊電車は動いているのに、一体どうしたことやら。
 その後も発車、徐行、停車を繰り返し、遅れはどんどん拡大していきました。


 結局、フライブルグの到着は3時間遅れ。僕らの予定の列車からも、2時間の遅れになってしまいました。夕暮れのフライブルグを散策しようという計画も、おじゃんです。
 駅のコンコースは、列車に乗れない人、変更しようとする人で大混乱になっていました。


 気を取り直して、今夜のホテルにチェックイン。駅と一体になっている、インターシティホテルです。
 1泊109.2ユーロ(14,310円)とあって、設備も整った清潔な部屋。




 でも一番うれしいのは、窓から見えるこの景色でしょう。線路には、遅れを出しながらもICEが走り去り、陸橋の上には長いトラムが頻繁に行き交います。
 地上のホームについた近郊電車から、改札を経由することなく、トラムへスムーズに乗り継げる様子が手に取るように分かりました。これはすごい。


 夜も8時を過ぎていましたが、いてもたってもいられなくなり、トラムの乗り場へと向かいました。市街地方面へは複数系統が経由しており、待たずに乗れます。信用乗車方式なので、長い編成でも乗り降りはスムーズです。
 乗車券はホテルの宿泊特典で2日乗車券が付いてきたので、きっぷの買い方で迷うこともありません。


 電車で5分の旧市街へ。中心部は車の乗り入れが禁止されており、メインストリートは歩行者天国。トラムだけは走ることができる、トランジットモールと呼ばれるものです。
 店のほとんどは閉まっているけど、飲食店は開いている所が多く、多くの人が行き交っていました。




 歴史的な建築物は残し、もともとあった足もとの道路にトラムを通した結果、こんなワクワクする光景も。決して、マクドに電車が飛び込んだわけではありません。


 治安も悪い感じではなく、公共交通先進地の金曜の夜を楽しみたい気もしましたが、旅も終盤。疲れもたまっているので、街の空気だけ吸って早めに切り上げることに。
 駅構内のビストロで、軽めの晩御飯にしました。


 駅地下には珍しく遅くまで開いているスーパーがあり、安いビールに目を輝かせていたら「買えないよ」。ドイツでは、商店での酒類販売は22時までという決まりがあるらしく、数分過ぎていてアウトになってしまいました。
 仕方なく、部屋のミニバーのビールで一献。スーパーより高いとはいえ、さすがはドイツ、ミニバーでも日本の市販品レベルの値段です。列車とトラムを見ながらのドイツビール、ここはパラダイスでしょうか…。

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 7日目は、住み慣れた(?)スイスのラッパーズヴィルを離れ、ドイツの環境先進都市・フライブルグへと向かいます。毎朝おいしかったエリー&マヌやん宅のモーニングとも、しばらくのサヨナラです。


 さすがスイスだなと思うのは、スキーの競技がずっと放送されていること。野球やサッカーを抑え、一番人気のスポーツなのだとか。ウインタースポーツが、それだけ身近なものということなんですね。


 夕方の列車でスイスを発つので、午前中は改めて、ラッパーズヴィルの街をお散歩しました。
 4日前はビルに飲み込まれたガソリンスタンドに驚いてたけど、日本で見られるような独立型のGSももちろんあります。ガソリン代は日本の1.3倍程度で、内陸国の割に思ったほどの高さではありません。


 幹線道路から住宅街に分岐するわき道は、ほとんどエリア外の車両が進入禁止になっています。住環境を守ることはもちろん、車を一定不便にすることで、公共交通が頼られているという側面もありそうです。


 街中の一角にある公園は、バラ園なのだとか。美しい街並みに咲く赤いバラ、見てみたいです。


 駅の地下道は駅施設の一部だけど、改札がないので通行自由です。くぐれば大学構内で、ここも門や守衛があるわけではなく、街の一角のような雰囲気です。
 緑も多く、公園のような役割も果たしています。


 そして大学を抜けた先には、オーバー湖が待ち構えていました。背景には雪を頂いた山々が連なり、いい景色です。こんな環境での研究、いい成果が出せそうですね。




 対岸まで続く木橋は、昔からある歴史的な橋を修理しながら使われているのだとか。ところどころにベンチが置かれ、湖上の散歩道になっています。


 もちろん、湖上を渡る列車ウオッチングにも最適です(笑)。いろんな会社の列車が乗り入れており、頻繁に走っていくので、カメラが手放せません。


 線路をくぐりチューリッヒ湖側に出てくれば、そこはもう旧市街です。


 広場の奥に聳え立つ、教会と古城。街のシンボルであり、中心となる一角です。


 息を切らしながら階段を登り、城へ。エリーとマヌやんの結婚式も、ここで挙げたのだそうです。城で式とはなんとも優雅に感じますが、公民館を借りるような感覚なのだとか(笑)。
 今日も新たな夫婦が、門出の日を迎えていました。


 そして高台にある城からの眺めも、また素晴らしいものです。


 もちろん列車の走り去る姿も(笑)。


 旧市街には住宅街もあって、真ん中の通りには緑地帯があり、ゆったりしています。駅にも近いし、街にある分、買い物にも何かと便利そう。
 ただ古いアパートが多い分、設備もちょっと時代遅れのものが多いのだとか。真剣に家探しをしていた人だからこそ分かる、実感がこもった意見でした。


 おお、鉄道模型屋さんがある! これだけ鉄道に恵まれた国ならば、きっと鉄道趣味人口も多いことでしょう。
 日本でも高価な鉄道模型、いわんやスイスを於いてをや…とても「ちょっと土産に」と手に出せる金額ではありませんでした。もとよりお昼休み中で、下手に買える状況でなかったのは幸いです。


 ケバブ屋さんでランチタイム。お気軽なファーストフードスタイルの店でのランチでも、千円以上の出費は不可避ですが、あまり細かいことを言っても始まりません。地元の学生や工事作業のおっちゃんに囲まれて食べたケバブ、おいしかったです。
 一緒に頼んだ瓶ビール、変わった味だなと思って飲んでいたら、ノンアルコールタイプでした。


 スイスの2大流通チェーンの一つ、ミグロで買出し。コープと同様、清潔で分かりやすく、安心して買い物が楽しめるお店です。
 お土産にも使えそうなチョコレートの詰め合わせがあったので、ごっそり買い込みました。お、重い…行きはエリーへの「救援物資」である日本食材が結構な重さになったけど、帰路もそれに負けない重さになりそうです。


 こちらでは選挙が近づいており、街中には候補者のポスターがあふれています。日本に比べて色使いが大人しいのに、ちゃんと伝わるデザインはさすがですね。
 ポスターのサイズも大きいのに、景観は破壊されていないように感じました。


 右手の建物は小学校で、芝生は学校敷地内です。ここも、大学の頃に習ってきた「開かれた学校」のイメージそのものでした。お散歩の老人がベンチで休んでて、街の共有物になっています。


 電線がなく、植栽も整備された美しい住宅街。道路には障害物が置かれ、スピードが出せないようになっています。


 低密度の戸建て住宅街であっても、連接バスの輸送力を必要とする環境は整っているのでした。


 午後2時、ラッパーズヴィルを離れる時間になってしまいました。悪戦苦闘しながら、なんとかチューリッヒまでの切符を購入。もう乗り慣れてきた、2階建ての普通列車に乗ってケンプラーテン駅を離れました。
 エリー、お世話になりました。そして、お見送りまでありがとう! 必ずや、数年のうちに再訪します。つづく


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 ティラーノの街を、旧市街方面へ歩いてみます。歩道が広く取られた、ゆったりとした街並みです。
 広い歩道にはレストランが張り出してきていて、どういう許可が下りているんだろうと不思議な気分に。オープンカフェに屋根と壁が付いた様な整理になってるのかな。


 川を渡れば、旧市街です。




 縦横がはっきりしない、迷路のような狭い路地が入り組む旧市街。方向感覚が狂いそうになるけれど、教会の塔を目印にすることで自分の位置を掴めます。
 人通りが少なくて少し怖くはあったけど、中世の世界に迷い込んだような気分の赴くままに、歩いてみたくなりました。


 路地が少し広がり、石畳を積もったばかりの落ち葉が飾るちょっとした広場。その前に立つ歴史がかった建物は、美術館なんだそうです。
 残念ながら冬季休館で、見学はかないませんでした。


 もっとも、たったの2時間しかないイタリア滞在。一番のお目当ては、イタリアンのランチを食べることです。
 旧市街にはあまり人がおらず、開いている店は駅前が多かったので、戻ろうかと思った矢先。路地の突き当たりに、雰囲気のよいレストランを発見しました。


 陽気なウエイターさんにランチのアラカルトと伝えると、中庭のオープン席に案内してくれました。


 イタリアに来たからにはと、マルゲリータピザに地産素材のタリオリーニパスタ、そして地ワインを頼みました。ピザは5ユーロ(655円)とお手ごろで、さすがは本場。スイスの高い物価に慣らされた身には、特に際立つ安さでした。
 タリオリーニパスタは10.5ユーロ(1,380円)と少し張り込んだけど、それ以上のおいしさ。パスタというより、生蕎麦に近い食感がクセになりそうでした。これだけ食べに、また訪れたいと思うほどです。


 大満足のランチを食べ終えれば、イタリア滞在はもう残りわずか。長い汽車旅に備えて水でも買おうとスーパーに行ってみたら、なんと昼休業中! 閉店時間も早く、「買える時に買え」はイタリアでも鉄則のようです。
 他に開いている店もなく、自販機もなくて困った困った。どこかで水は手に入らないかと駅員さんに聞いてみれば、ボトルを持ってますか? 駅を出て左に行くと「マシン」があります、と。自販機なんてなかったはずと思って出てみれば…


 オートメーションの給水所がありました!しかも出てくる水は、強が付く勢いの炭酸水です。どこで買った炭酸水よりも、口に合うものでした。
 イタリアなら、どこにでもあるものなのかな? ともかく駅員さん、感謝!


 短いティラーノ滞在を終え、4時間かけてまずはクールまで戻ります。スイスの3大観光列車に名を連ねる、ベルニナ急行の指定席(10フラン=1,190円)を抑えておきました。


 ベルニナ急行も、1、2等車ともにパノラマカー。天井までアーチを描いた窓には窓桟がなく、氷河急行よりも大きなパノラマを楽しめます。ブラインドが付いていて、手元で操作できる電動式。これは氷河急行にもほしかった…
 1等車は革張りのゆったりしたシートで、贅沢な雰囲気です。


 食堂車はありませんが、全区間に渡って車内販売が乗務。イタリアワインを飲んだばかりだけど、オリジナルのベルニナ急行ワインを1本入れてみました。周りの乗客もワインを傾けていて、優雅な雰囲気です。




 再び峠道に入ります。


 レンガ造りの駅舎のアルプグリュム駅では小休止。乗客も降りてきて、雪深い駅でのひとときを楽しみます。


 駅舎には展望台が張り出していて、山々を一望です。


 車掌も気さくにシャッターに応じて、旅の思い出作りに一役買ってくれます。
 なぜか僕には雪玉を思い切り投げつけてきましたが(笑)。


 往路は雲ばかりだった空も青の範囲が広がりつつあり、また違った車窓を見せてくれます。ゆったり座って天まで広がる車窓を楽しめるパノラマ車も、空気に触れられる普通列車もそれぞれの良さがあり、ぜひ往復で車両を変えて楽しみたいところです。


 サンモリッツとの三角線の分岐駅・ポントレジーナでは観光客が大挙下車。「箱根号」と別れ、ベルニナ急行には専用の機関車が連結されました。ところが今度はサメーダン駅でサンモリッツからの列車と連結し、機関車はわずか1駅でさようなら。
 きめ細かいながらも、ずいぶん手間のかかる運用ではあります。


 ガラガラになった列車は、一路クールへと向かいます。再び空は曇り始め、横殴りの雪が舞い始めました。
 山の天気は変わりやすいけど、そんな中を事も無げに定時運行する列車の陰にある努力にも、思いを馳せました。


 コース終盤では車内の明かりが落とされ、いい雰囲気に。星空が眺められるようにとの配慮だったのか、真意は不明です。クールを前に明りが灯され、車掌さんが「おはよう」と声をかけて回っていました。
 ベルニナ急行4時間の車窓は、往路で一度見たものとはいえ、氷河急行より短時間ながら変化に富んだものでした。人気があるのも、頷けます。


 10分少々遅れたため、クールでは大急ぎでチューリッヒ方面の列車へ乗り換え。お馴染みの2階建て列車に、ひさびさの対面です。


 快速タイプのレギオで、1等車はガラガラでした。山岳鉄道とは違う、幹線級の列車のゆったりシートに身をゆだねます。




 ツィーゲルブリュケでラッパーズヴィル行きのレギオに乗り換え。短編成のディーゼルカーで、1等車は運転席後ろの十席程度です。
 ラッパーズヴィルからはバスに乗り換え、無事にエリー&マヌやんの家へと戻ってきました。

 ここまで3日間使ったスイストラベルパス、お値段は1等用で336フラン(40,090円)でした。高いか安いかはそれぞれの価値観だとは思いますが、お値段以上の楽しみ方はできたのではないかと思います。
 ちなみに2等用であれば、210フラン(25,050円)。ひとり旅なら2等でも充分だっただろうけど、一生に一度の新婚旅行としては、1等にしておいて良かったです。


 お家では、マヌやんのお父様がキッチンで腕をふるってくれていました。すりつぶしたジャガイモを焼いた素朴な家庭料理、ロスティです。
 3日間の旅の成功を、スイスワインで祝ったのでした。

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 長い新婚旅行もようやく後半、6日目を迎えました。


 スイスのテレビでユニークなのが、ラジオの画面つき放送。画面には、DJの顔と道路情報が流れていています。「ながら視聴」になりがちな朝の忙しい時間には、普通のテレビより便利なのでは?


 朝食は「本館」のホテルゾンネのレストランだったので、身支度を整えて行きました。昨日の朝ほど豪華ではないけど、味はおいしいかったです。


 旧市街方面へと向かいます。凍結したサンモリッツ湖は公園的に使われていて、氷上に散策路やベンチ、ゴミ箱まで設置されているのは面白いです。
 もちろん足元はしっかりしていて、湖上にいるなんて微塵も感じませんでした。


 湖畔の幹線道路。横断歩道の真ん中には必ず「安全地帯」が設けられていて、一気に道路を渡れない高齢者でも安心です。
 歩行者優先の考え方は徹底していて、待っていれば必ず車が止まってくれます。


 さてサンモリッツにも、3,000m級の展望台があります。中でもピッツネイル展望台へは、旧市街からケーブルカーとロープウェイを乗り継いで行けるという手軽さ。
 ところが今日は山の上の天気が悪く、登ったところで視界はきかないようです。そもそも時間に余裕もないので、ケーブルカーの終点であるコルヴィリアまで登ってみることにしました。


 コルヴィリアまで往復の運賃は49.2フラン(5,870円)。スイストラベルパスの割引もありません。
 車内はスキーヤーばかりで、普通の旅姿の僕らは、他の列車以上に場違いな感じが。でも眼下に遠ざかっていくサンモリッツの街の風景は、やはり登ってよかったと思えるものです。


 チャンタレッラで別のケーブルカーに乗り継ぎ。2本のケーブルカーで1路線を構成していることを現地で初めて知り、一瞬理解ができずに焦りました。
 日本だと、近鉄の生駒ケーブルくらいしか例がないと思います。


 さらに高度を稼いでいくケーブルカー。チャンタレッラでも充分高かったのですが、さらなる高みを目指していきます。ただ景色には、だんだんともやがかかったようになり…


 コルヴィリア着。スキー場の玄関口で、レンタルショップやスキースクールなどが入り大賑わいです。


 そして外は、吹雪の様相。仮にロープウェイで3,000mまで登っても、これでは何も見えなかったことと思います。
 スキーウェアを着ているわけでもない我々は、外に出たら凍え死んでしまいそう。行き場もないということで、早々に次のケーブルカーで下山しました。


 ほぼスキー場専用のケーブルカー、下りに人が乗っているわけがありません。貸し切り状態で下山していきます。
 すれちがった登り便は、もちろんウェアに身を包んだスキーヤーでぎっしり満員でした。


 終盤コースはトンネルに入り、地下鉄のような雰囲気で麓の駅に到着。お値段も高度もちょっとお高めの、朝の散歩でした。


 ケーブルカー乗り場前のロータリーに立つ、歴史ありげな建築物。ネットには旧学校(現在は図書館)と書かれていたので遠慮なく扉を開けたら、現役バリバリの学校です。
 側にいた子どもが、流暢な英語で教えてくれたので分かりました。それにしても小学校の高学年(もしかしらた中学年?)で、英語を操れるとは…


 旧市街のドルフは、夜とはまた違った表情を見せてくれます。
 サンモリッツの駆け足滞在は、これにて終了!あまり観光もできなかったし、展望台にも登れなかったので、また行きたい場所が増えました。いい思い出ができたらできたで、また行きたくなるんですけどね。




 11時発のレギオ(普通列車)で、イタリア領のイタリアのティラーノを目指します。
 列車はわずか3両編成で、珍しく電車です。姉妹鉄道の縁で「箱根」の愛称つき。へえ、機関車牽引の客車ばかりじゃないんだなあと感心していましたが、実は見た目を裏切る実力者だったことを後から知ります。


 わずか3両の電車なのに、半室の1等車がついてます。ゆったりしたクロスシートで快適。結局、ティラーノまで1室貸切という贅沢さでした。


 サンモリッツの街を抜け、ポントレジーナでクール方面の線路と合流します。ここで後部にベルニナ急行の客車を連結。機関車はなく、つまり僕らの乗っている3両編成の電車が、機関車代わりに客車をひっぱるのです。
 普通の電車と見せかけて、実は自身よりも長い客車を従えて急勾配を登り降りできる、パワフルな車両でした。


 標高1,822mのサンモリッツでも充分標高は高いのに、さらに高みを目指すのがベルニナ線です。湖も凍りつく寒さだったサンモリッツから上がるのですから、雪もどんどん深くなっていきます。
 そしてここでも、列車はスキーヤーの足。接続列車は、リフトです。


 ベルニナ急行を従えた長い編成は、急カーブにかかると全容を見渡すことができます。僕らのローカル車両だと、窓が開くのも嬉しいところ。1等には他に乗客もいないので、遠慮なく窓を開けて零下の空気を吸い込みました。
 パノラマ窓のベルニナ急行もよさそうだけれど、普通車もイイネ!


 車窓左手には、ビアンコ湖が広がっています。ビアンコはイタリア語で白…なんて意味を知っているのは、彼らのお陰(笑)。
 湖に流れ込む岩盤の成分で白く見えるのが名前の由来らしいですけど、冬場は雪で真っ白です。どこからどこまでが湖なんだか、分かりません。


 湖畔のオスピツィオ・ベルニナ駅は、ビアンコ湖畔の駅。ラックレールを使わない一般的な鉄道(特殊な鉄道と比較して、粘着式鉄道ともいいます)としてはヨーロッパ最高峰の駅になります。
 しんと静まり返った、白の世界です。


 均整の取れた合理的な姿が美しい石橋も、列車に乗りながら見ることができます。
 カーブが続き、見上げれば今通ってきた駅が、見下ろせばこれから進む線路が見える車窓はめまぐるしいです。昨日の氷河急行よりも、短時間で車窓が変化していきます。


 ポスキアーヴォの谷を下ると、麓の街が見えてきました。


 麓に降りれば、あれだけあった雪もすっかり消えてしまい、どことなく春が近い雰囲気も。イタリア語圏に入り、街の雰囲気も変わります。


 麓には小まめに駅が設けられていて、地域の足としても活躍します。


 道路と平行して走っていた線路は、やがて境界が曖昧になり、とうとう路面電車の状態になってしまいました。地元の人は慣れっこなのか、真横を過ぎ去っていく登山電車に驚くこともありません。


 道路と離れた列車は湖畔へと飛び出し、水際をトレースするように走っていきます。山岳区間に負けず劣らず、次々に車窓が展開していきます。
 線路と湖の間には、ところどころにベンチが置かれた散策路もあり、歩く人は気持ち良さそう。


 そしてベルニナ線のハイライトであり、世界遺産のポイントの一つでもあるブルージオのオープンループ橋に差し掛かりました。
 鉄道のループ線はたいていトンネルを組み合わせいることが多く、弧を描いた線路を眺められる場所は、世界的にも珍しいと思います。




 ループ線の役割は、円を描いて距離を稼ぐことで勾配をゆるやかにすること。そして石橋のも、力学に基づいた合理的なものです。
 でもこの美しいループは、作り手の美意識がなければ生まれないものではないのかとも思います。百年前の技術者に、問うてみたいです。


 そして、いつの間にか国境を越えてイタリア領へ。再び路面区間を走れば午後1時、終点のティラーノ到着です。ベルニナ急行併結の列車とはいえ、気分はローカル線鈍行列車の旅でした。


 パスポートのチェックも、管理官の巡回もなかったけれど、ここはもうイタリア。レーティッシュ鉄道の駅舎と隣り合って、イタリア国鉄のティラーノ駅が建っています。発着する列車も、見慣れぬイタリアのものです。
 2時間のイタリア・ティラーノ探検に出発!つづく。

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 標高1,130mのディゼンティスでは、30分間の大休止。この先は会社がマッターホルン・ゴッタルド鉄道からレーティッシュ鉄道へと変わり、機関車も交換が行われます。
 乗客にとっては、二度目の貴重なリフレッシュタイムです。駅のお土産屋さんも書き入れ時。お土産品が、どんどん売れていきました。


 ホームには、姉妹鉄道の箱根登山鉄道から贈られた、日本語の駅名版も。スイスほどのスケール感ではないけれど、箱根の登山電車も、急カーブやスイッチバックが続く本格的な登山鉄道です。
 サンモリッツやベルニナなんて地名を以前から知っていたのも、姉妹鉄道が縁で箱根の電車に愛称がつけられていたからでした。


 高度を下げた列車は、渓谷沿いをクールへと向かいます。森林限界を超え平原だった雪山とは、うって変わった風景です。


 沿線最大の都市、クール着。チューリッヒまで1時間15分の距離にあり、ほとんどの乗客は降りていってガランとしてしまいました。反面、列車には普通車が大挙増結され、停車駅も増えて、サンモリッツまでは普通列車の役割も担っていきます。
 停車時間は20分あまりあったので、少し降りてみました。ホームを覆う、大きなドーム屋根が印象的です。


 エスカレーターを上がればもうそこは駅の外で、黄色いポストバスが大集結していました。駅前広場(駅上広場?)が路線バスのターミナルを兼ねていて、乗り継ぎの便の良さには感心します。


 ガラガラになった列車は、進行方向を反対にして出発、第3部の旅が始まります。サンモリッツまでのアルブラ線は、有名な世界遺産の区間です。
 クールの街を抜けた列車は、まずは川沿いを進路に取ります。渓谷とも違った、やさしい表情の川です。


 カーブが増え始めれば、今日2度目の山登りにかかります。景色もよくなってきたので、編成なかほどのバー車両へと足を向けてみました。
 食事サービスの厨房を兼ねた車両は、半分がスタンディングのバーコーナー。山々の風景を肴に、瓶ビール(5.1フラン=608円)を空けました。


 右へ左へとカーブし、停車した駅が眼下に、それも右へ左へと移っていく車窓は見ていて飽きません。ツェルマット発車から6時間を過ぎましたが、退屈知らずの道中です。
 世界遺産の構成要素のひとつでもある、ランドヴァッサー橋を通過。目もくらむような高さです。


 途中駅では、食堂車を連結した列車とすれ違いました。外観も内装もレトロな調度の車両で、今風の氷河急行とは好対照です。帰路の列車に連結されていたらいいな。


 標高も再び1,000mを超え、今日3度目の雪景色になってきました。


 ブレダ駅前では、老朽化した現トンネルに代わる新トンネルを建設中。大規模なヤードが組まれた建設現場の前には、広報コーナーが設けられていました。ドイツだと何か公共事業を起すときは、1割程度が広報費に充てられると聞いたことがありますが、スイスも同じような考え方なのでしょうか。
 列車をリフト代わりに山を登り、ソリ遊びに興じる人々が、現場を横目に降りていきました。


 トンネル工事の知識まで仕入れられたのは、音声ガイドサービスのおかげ。ポーンとチャイムが鳴り、表示板にヘッドホンの絵が出れば、オーディで沿線案内が流れる仕組みです。僕が分かるくらいだから、もちろん日本語も対応してます。
 アルプスの伝統音楽を流し続けるチャンネルもあり、風景とそれはよくマッチしていました。


 サメーダンでティラーノ方面の線路と分岐し、ラストスパート。コテージ風の建物が増えてくると、山岳リゾート地・サンモリッツは間もなくです。


 午後5時、8時間に渡る長旅を終えてサンモリッツ着。変化に富んだ、楽しい旅路でした。
 手元のガイドブックには、「ますはシャンパン気候とも呼ばれる爽やかな空気で深呼吸してみよう」とあったので、ホームで深呼吸。うむ、爽やかだ。


 今日の泊まり先であるバート地区はサンモリッツ湖の対岸です。歩いても大した距離ではないので、湖畔を散策してみました。
 湖とはいえ、氷点下の世界では凍結中。車も乗れるほどの強さで、「駐車禁止」の看板があったのは面白かったです。


 旧市街・ドルフ方面へのエスカレーターへは、カンチレバー(片持ち梁)好きにはたまらない階段か湖に飛び出しています。


 そのカンチレバーの上には、望遠鏡のようなものが。覗いてみると…


 夏場のサンモリッツ湖が見える仕掛けになっていました。夏場には、冬の景色を映すんでしょうか?


 ドルフ方面にはエスカレーターと斜行エレベーターが通じていて、エスカレーターはギャラリーコーナーになっています。エスカレーターに乗りながら絵画鑑賞ができて、こちらがオススメ。
 今はサンモリッツのユニークイラストがテーマになっていて、シュールなギャグからちょっとした下ネタまで、クスリと笑える作品が楽しませてくれました。


 泊まりはカーサフランコなるホテルですが、「チェックイン手続きはホテルゾンネへ」と書いてあったのを、今日は見落としませんでした。
 昨日みたいに、実は同じ棟でした!なんてオチいいんだけどなと思ってチェックインしましたが、外に出て左へ、さらに左へ、もう1回左へ…と案内されました。


 というわけで、徒歩3分のカーサフランコへ。ツェルマットでは山小屋風のホテルが目立ちましたが、サンモリッツではここに限らず、こざっぱりしたキューブ状のデザインの建物が多勢です。


 部屋は、う、狭い。そしてちょっと古めかしい…実は昨日のホテルよりも宿泊費は高かったので、少し期待をして来たのですが、さすがは超が付く高級リゾート地。宿泊費の相場そのものが、かなり高めのようです。


 テラスも申し分程度。これで2万ウン千円かあ…ただあくまで昨日との比較であって、寝る分には充分快適なホテルではありました。


 夜の帳が降りると、サンモリッツ湖には対岸の旧市街が輝き始めます。少し寂しいバート側に泊まったからこそ見られる景色です。


 旧市街方面へは、路線バスで向かいました。スイストラベルパスがあれば、バスも無料で乗れます。信用乗車方式なので都度チケットを出す必要もなく、ヒョイと飛び乗れる感覚も気軽です。
 昼間は、きれいな10分間隔で運行されていて便利。ただ19時を過ぎると、急激に本数が減ってくるので注意です。深夜は3時まで走っていて、夜が早いのか遅いのか分からなくなります。


 サンモリッツの旧市街、ドルフ。サンモリッツのシンボル、太陽のイルミネーションがおしゃれです。ロータリーを、連接バスがぐるりと折り返していきます。


 ただ開いているのは飲食店くらいで、スーパーのCOOPでさえ19時には閉まったようです。もとよりコンビニという便利なものはなく、自販機もないので、何も手に入りません。
 これという飲食店も見つからず、バスでバートの中心部へと戻りました。


 こちらにもレストランは何軒もあるのですが、コンビニ的な役割の「Kキオスク」は店じまい後。自販機があったのでどうにか水は手に入ったけど、「お昼ご飯でお腹一杯だから、買い食いで済ませよう」という魂胆は崩れました。
 日本は便利、スイスは不便と断じるのは簡単。ただ日本と比べて短い労働時間が、過度な便利さを追い求めないことで実現できているのだとすれば、見習うべき部分なのかもしれません。


 ひとまず「食料は手に入れられるときに手に入れよ」という教訓を得て、夕ご飯はホテルゾンネのイタリアンレストランで済ませました。お値段はもちろんスイス価格でしたが、おいしかったです。
 明日は、ホンモノのイタリアまで足を伸ばします。

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 スイス鉄道周遊編の2日目は、ツェルマットからスイス東部の山岳リゾート地・サンモリッツまで、氷河急行に乗って駆け抜けます。


 窓を開ければ、昨夜からさらに雪が降り積もっていました。日の出前だけど、天候は回復に向かっているみたい。よし、マッターホルンを見に行くぞと、身支度を整えてホテルを出てみれば…


 ホテルの敷地内から望めました!人を寄せ付けないながらも親しまれてきた、荒々しい雄姿です。イモトすごいな…という、別次元の感想もじんわり湧き上がりました。
 もっとよく見える場所に行ってみようとウロウロしていたら、いつしかその姿は雲の中へ。山の雲は、気まぐれです。


 ホテルに戻れば、朝ご飯の時間。昨日は入れなかったレストラン、こちらもいい雰囲気です。


 ビュッフェ形式のモーニングもどれもおいしく、ついつい食べ過ぎてしまいます。コーヒーもたっぷりポットで持ってきてくれて、朝から贅沢な気分です。
 駅や目抜き通りからは少し遠いホテルではあったけど、大変というほどではありません。2人合わせて1泊2食4万円未満で、とても満足な時間を過ごすことができました。


 駅まで向かう道すがら、ゴルナーグラート鉄道の鉄橋の下へ。朝一番で見たほどくっきりではないけど、霧の中にうっすらとマッターホルンが姿を現しました。また今度は夏にでも、雄姿を拝みに来たいものです。


 今日は朝9時前に出発する氷河急行に乗って、東部の山岳リゾート、サンモリッツ駅へと抜けていきます。平均時速は40km/h以下、世界一遅い急行との異名を持つ列車は、アルプスの絶景を思う存分楽しみながら移動できる観光列車です。
 幼い頃は海外の鉄道にあまり関心がありませんでしたが、「世界の車窓から」で見た氷河急行は別格。憧れだった列車でもあります。




 アルプスの山々を眺められるよう、全車両が天井まで窓になったパノラマ車両です。あまり指定席を取る習慣のないスイスでも、氷河急行は例外。今日もほとんどの席が予約済みです。氷河急行は日本からでもネットで予約ができるので、慣れぬ英語と格闘しながら抑えておきました。座席指定料金だけで13フラン(1,550円)かかります。
 とはいえ全区間を乗る人ばかりではなく、僕らの車両は日本人の一人旅の青年が乗ってきただけ。ガラガラのまま、ツェルマットを出発しました。


 さっそく乗務員が「コーヒーorティー?」と聞きに回ってきたので、コーヒーをオーダー。ウェルカムドリンクと思っていましたが、下車する前にきちんと5.8フラン(692円)請求されますのでそのつもりで(笑)。
 続いて車内改札があり、ヨメさんのパスを見た車掌さん、「オー、ハッピーバースデー!」と祝ってくれました。こういうの嬉しいねと話していたら、戻ってきた車掌さんの手には氷河急行名物の傾いたワイングラスが。なんとも嬉しい、バースデープレゼントなのでした。


 2等車もパノラマ車両で、4人用のボックス席。景色を眺める分には1等車と変わりません。今回は新婚旅行なので、ゆったりした1等の2人席で過ごしましたが、気ままな一人旅なら、ふれあいのある2等車も楽しそうです。


 先頭車の窓ガラスの向こう側では、いかつい電気機関車が、下りの急勾配で つっかえ棒役になっていました。


 昨日来た道をフィスプ駅まで戻ると、すっかり雪は消えて平地の風情。続くフィーシュ駅で本線からの乗り継ぎ客を受け、車内は満員近くになりました。
 平地では、さきほどまでの山岳鉄道の顔はどこへやら。軽いリズムを奏でながら、急行列車らしいスピードで走っていきます。


 油断?していたのもつかの間、いつしか線路は再び隘路の様相を呈してきます。

 
 氷河急行には食堂車はありませんが、座席には立派なテーブルが備わり、厨房で調理した食事を席まで運んでくれるサービスがあります。雰囲気だけ見れば、全席が食堂車と言ってもいいかもしれません。
 比較的お手ごろなワンプレートランチもありますが、今回は張り込んで、3コースランチ(43フラン=5,130円)にしました。これもネットで予約できます。


 さっそく11時頃にはテーブルクロスが敷かれ、頼んだワインも早々に運ばれてきました。山々に乾杯して、ランチコースの登場を待ちます。


 上げ膳据え膳でくつろいでいる間にも、列車は山越えに挑み始めています。ラックレールが表れ、車体もぐっと傾いてきました。さきほどもらった傾いたグラスも、この勾配に対応したもの…というのはちょっと誇張したもので、今は写真の通り、普通のワイングラスです。
 どちらかというと、揺れや振動でナイフやフォークが滑っていくことにハラハラします。肥薩おれんじ鉄道・おれんじ食堂の「滑り止め機能つきランチョンマット」を輸出してあげたいところです。


 目もくらむような高さの、つり橋の人道橋。九重の観光用とは違って日常の通行路のようで、歩く人の姿が見られました。こわい…




 標高が上がるにつれ、また雪深くなってきました。空は快晴、直射日光と雪に反射した太陽光がまぶしくて、目がクラクラします。澄んだ空気の日光は思いのほか強烈で、下手すると目を傷めてしまいそう。サングラスは必携でした。
 車内でロゴ入りサングラスを、比較的お手ごろな10フラン(1,190円)で売っているのを知ったのは、もっと後の話です。


 窓に日よけはありません。パノラマを楽しむ列車ですから、陽を避けたければ各自で準備を、といったところでしょう。


 標高1,435mのアンデルマットでは、5分の小休止。昼も12時前、始発から乗っていれば3時間を越えていて、外の空気を吸いたくなるタイミングです。
 乗客が三々五々降りてきて、爽やかな空気や、雪の感触を確かめていました。


 1時間近くの「おあずけ」の末、ようやく3ランチコースの1皿目が運ばれてきました。スープは、冷えた体に嬉しい暖かさです。




 ぬくぬくと食事を楽しんでいる間にも、列車はサミットのオーバーアルプ峠に向けて、より厳しい勾配へと踏み出していきます。
 ついさっきまで降り立っていたアンデルマットの街と駅が、あっという間にはるか眼下へと遠ざかって行きました。


 同じ路線には全席指定の氷河急行だけではなく、普通列車も走っています。リフト代わりに電車が使われているのは、この路線も同じ。スキーだけではなく、クロスカントリーのコースも整備されていて、雪道を競歩する人の姿も少なくありません。
 スイスのウインタースポーツの世界、奥が深そうです。


 景色を楽しんでいる間に、ランチの2皿目が登場。今日のメインディッシュは、ポークのソテーです。とびきりのご馳走ではないけど、大パノラマを見ながらの暖かい食事は、どんなレストランにも負けない味でした。
 のちほど、付け合せのお代わりがやってきたので喜んでお願いしたら、2分後にはなんとお肉のお代わりが回ってきました。平らげたはずの2皿目、完全復活(笑)。


 乗客がメインディッシュを楽しんでいる間に、列車は最高地点となる標高2,033mのオーバーアルプ峠を制覇。氷河急行の名の由来ともなった氷河は、長大トンネルの完成で見られなくなりましたが、それでも充分ドラマチックな山越えです。
 高度が下がれば、再び雪は少なくなってきました。カーブを繰り返し、時にはアーチ橋そのものもカーブを描いて、苦労して登った峠道を下ります。


 コースは3皿目のデザートへ。チーズの盛り合わせかケーキを選べて、手持ちのチーズがあった僕らは二人ともケーキをリクエスト。コーヒーも頼んで、満ち足りたひとときが過ぎていきました。

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