sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ロブスター

2016-04-09 | 映画


変な映画だというのはわかってる上でも賛否両論があって、
実際見てみると、それぞれの意見になるほどと思いつつも、
こんな捻くれた、こじれた監督のくすぐりに身を委ねるのは中々快感だと思いました。
ラストの突き放し具合も、この映画なら納得。
こじれた映画に慣れてない人にはお勧めできないけど。笑

映画だけじゃなく本でもなんでも、この手のフィクションを見るときに
「なんで?」を考えたらもやもやしますね。
ファンタジーは「なんで」をつじつまの合う虚構で埋めていく細やかさが
面白いしファンの心をくすぐると思うんだけど、
こういうナンセンス的な作品は、もやもやせずに「なんで?」を捨てて楽しむもの。

wikiには「ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリスの共同製作による
2015年のSF恋愛映画作品である。」と書かれてるけど
この5カ国の組み合わせがなんとなく腑に落ちる映画ではあるけど、
「SF恋愛映画」というのは、えー!そうだったの~!?って感じです。
そうなのか?ブラックコメディというのが一番近い気がするけど。笑

こんな変てこな映画なのにキャストは豪華。
ハリウッドからコリン・ファレルが主演で、ヒロインはレイチェル・ワイズ。
コリン・ファレルは悲しそうなやる気のなさそうな無表情で、
もっさりした、人柄のよくわからないおじさんを演じています。
出てくるのは変な世界の変な人たちばかりだけど、
わからなさ具合では彼が一番よくわからないキャラかな。
レイチェル・ワイズ、なんとなく鼻につく女優だったんだけど
いい感じになってきたなぁと思いました。
評価が高いのに、ずっと好きじゃなかったけどやっと少し好きになってきた。
「007」からはレア・セドゥとベン・ウィショー。
レア・セドゥは、いつ見ても、きれいだなぁ、でも大根だなぁと思うんだけど
世間的には演技も?評価が高いので、わたしの見る目がないのか。笑
「アデル、ブルーは熱い色」で、ものすごく印象的だった女優さんですね。
ボンドガールもしてたけど、変な映画の変な役も似合いそうです。、
そして、わたしの周りの女子たちに絶大な人気を誇るベン・ウィショー。
アンチ・マッチョ・ヒーローですかね。
でもこの映画の中ではへんてこな角刈りっぽい髪型で、目つき悪く
中途半端におどおどしたような役をやっています。
これがうますぎてえ?これってベン・ウィショー?って迷うくらいでした。笑

独身者が許されない世界。見つかったらとあるホテルに連行され
45日以内にパートナーを見つけないと動物に変えられてしまう。
私物は許されず全員同じ服を着て、研修を受け、出会いパーティみたいのもあって
森へ逃げ出すとそこには、反体制派の、独身しか許されないグループがいて
そこは逆に恋愛などするとおそろしい罰が待っている世界。
どっちも極端すぎて、笑えます。かなりブラックな笑いですが。

この映画のおもしろいところをチョコチョコ書くとものすごく長くなる。
全編、ヘンテコが普通のことのように描かれ、真面目な顔で話が進むんですが
それらがいちいちブラックでおかしいんですよ。
おかしいと言ってもなんかくすっと笑うのとも違うおかしさですけどね。
たとえば主人公の連れてる犬は彼の元お兄さんだったし(今もか?)、
なりたい動物は選べるんだけど管理側の人が「犬は大変人気があります。
そのため世界は人気のある動物であふれています。」みたいなことを言う。
主人公がロブスターになりたいというと「ロブスターは大変良い選択です」。
そういう感じでずっと進むので、実際に見てもらわないと伝わらないかな。
でも実際に見てもらっても、この気持ち悪いような変な世界を
面白がれるかどうかは、保証できないので、あんまり人には勧めない映画かな。
でも映像はきれいで上質感がある。そのきれいさまでもが奇妙でへんてこですけど。

独り者禁止の世界も、恋愛禁止の世界も、どちらも、人を好きになるのに、
相手と何か共通点があることが、ものすごく大事なこととして描かれています。
足を引きずっているとか、鼻血が出やすいとか、目が悪いとか、冷酷であるとか。
現実の世界でも、ちょっとした共通点から人に惹かれることはあるけど、
それがあたかも恋愛に不可欠な最重要事であるかのように、ここでは描かれている。
映画の後半は恋愛(純愛?)物語になっていくと書かれているものを見たけど
この映画の中の恋愛というもの自体が、
こういうバカバカしい奇妙な前提の上のものなので、
それを素直に後半は愛の物語になっていってると読むことはできないと思うんだけどな。
あくまでもふざけていてこじれていて、ブラックと思う。


ーここからちょっとだけネタバレー


だから、この映画のラストは春琴抄もどきを予想させて終わるんですけど、
わたしは彼は逃げ出したのだと考えたいんですよねぇ。
あくまでも恋愛なんてそんなもんという、
後味の悪い冷めたブラックさが最後まであってほしいのです。ここでは。

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