田布施町や平生町をウォーキングしている途中に史跡を訪れた時に、石碑に刻まれている文字が風化して読めないことがあります。そんな時、夜に行って石碑を斜めから光を当てると読めることがあります。そして、そんな石碑文字を読む別の方法の一つに拓本があります。近所に拓本をしている方がいないか聞きましたが、少なくとも田布施町にはいないようです。そこで、まったくの初心者ですが、拓本を勉強してみることにしました。
届いた初心者用拓本セット セットに入っていた用具一覧
インターネットでいろいろ調べていると、京都に初心者用拓本セットを通信販売で売っている会社があることが分かりました。さっそく取り寄せてみました。セットに含まれている用具は初めて見るものばかりです。そこで、我家近くにある祇園牛頭天王社、通称「天王さん」の石鳥居の文字をこの拓本セットを使って採拓してみることにしました。
初めての拓本で、文字を読むことにした祇園牛頭天王社の石鳥居
拓本には乾式と湿式(拓本と言うと通常は湿式)があります。最初比較のために乾式で試みました。乾式は拓本セットには含まれていませんが、私が持っている絵画のコンテ用黒炭を使ってみました。しかし、石鳥居は凹凸が激しいため全く解読不能でした。
次に湿式拓本セットを使いました。最初、スプレーで水を石鳥居に吹き付けて濡らしました。その濡れた場所に素早く薄紙を張り付けました。そして、微妙な凸凹に張り付くように上からタオルやブラシで押しつけました。
乾式拓本は全く歯が立たす゛ 湿式拓本、「文」の文字が
浮かび上がる
薄紙をピッタリ押し付け終わると、油性墨をたんぽに薄く付けて押しました。すると、文字がうっらと浮かび上がってきました。拓本をしないで文字を読もうとすると、斜めから光を当てたり、指でなどったりと相当な根気が必要です。しかし拓本にすると、手軽に早く読めますし家に持ち帰ることができます。そして、誰にも見せることができ、皆が納得できる物的証拠の一つになります。
はっきりと浮かび上がってきた、「文政」の文字
今回初めて拓本をしてみて、一番難しいことは石碑の微妙な凹凸にいかにピッタリと薄紙を張り付けるかです。水は蒸発しますので、手際よく張り付けることも大事です。うかうかしてると乾いたところから紙がすぐ剥がれてくるのです。さらに、張り付ける時にわずかでも擦ってしまうと、紙が薄いためすぐに破れてしまうことです。
石鳥居に薄紙を慎重に張り付け 破れた個所は、やむなく紙を上から追加
このようにして、初めて拓本をしてみました。まだまだ練習する必要があることを痛感しました。今回の成果として、祇園牛頭天王社の石鳥居の建立年代が「文政十一子六月吉日」、建立した「世話人」は「浅海屋勘助 吉田藤兵衛」と分かりました。なお、「文政十一」の次の「子」の意味が分かりません。北の方角を「子」と言うこともあるようで、石鳥居が北を向いていることと関係があるのでしょうか。干支と関係があるのでしょうか。
ところで、浅海屋は屋号なのでしょうか。ちなみに我家の屋号は「東沢」で、遠い明治・大正時代に会社名を「東沢洋行」と言っていたようです。「吉田」は幕末の豪商吉田家に関係があるのでしょうか。謎が増えるばかりです。
追申:いろいろ調査したところ、「文政十一子六月吉日」は、「文政11年(=1828年)(子=ねずみ年)6月吉日」でした。「子」(ね)はネズミ年を表すことが分かりました。この石鳥居は、今から186年前の6月に建立されたことになります。
今回初めての拓本で採拓した、石鳥居に刻まれた文字
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