ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 井田 茂 著 「系外惑星と太陽系」 (岩波新書2017)

2018年12月15日 | 書評
天文学の進歩で相次いで発見される系外惑星と太陽系を比べると、多様な惑星の進化が見える  第5回

序(その5)

③ 巽好幸著 「なぜ地球にだけ、陸と海があるのか」(岩波科学ライブラリー 2012年)
 本書は地球科学であり、地球の誕生に関する天文学の部分のみを概括すると惑星地球は次のようになる。一般的に星は宇宙空間に漂うガスとダストを原料として誕生した。衝撃波の揺らぎで分子雲の凝縮が進むと、中心に太陽を持つ「原子太陽系円盤}が作られた。太陽から三天文単位(地球・太陽間距離1.5億Km×3)に位置する「雪線」(H2Oの昇華温度170°K)の内側では岩石や金属、外側では氷が主成分である。雪線ないでは岩石の微惑星(大きさ数Km)が形成され、重力による衝突・合体を繰り返す。大きいものほど重力によってさらに大きくなる「暴走的成長」が進み、月程度の大きさの岩石型「原始惑星」と成長する。太陽からの距離が遠くなるほど広い範囲から微惑星を集めることができるので、大きな惑星が形成されやすい。地球型惑星の領域では、原子惑星がさらに衝突・合体して惑星が作られた。木星よりさらに外側の惑星は衝突頻度が低いためガスが散逸し密度の低い惑星になった。太陽からの距離によって、しっかりしまった地球型惑星、巨大な木星型惑星、天王星型惑星に分けられる。地球型惑星の外側には、木星の巨大な質量によって星になり損ねた小惑星帯がある。この帯から隕石が地球に落ちることがある。そのなかには「始原的」な「炭素質コンドライト」の岩石も僅かながらある。いまから45億7000万年前に太陽系惑星の形成が始まったとされている。それはビックバンより93億年後の事である。集積と合体のエネルギーは熱に転換された。その岩石の揮発成分がガス化して宇宙へ散逸したものもあるが、十分大きな質量を持つ地球では重力によって原子大気の誕生となった。原始地球は高温で全体が溶融して「マグマオーシャン」が分布していた。密度の高い金属は中心に沈んでゆき地球に金属核が作られた。45億2000年前、巨大惑星「ティア」が地球に衝突し月が誕生した。隕石の集中的落下・集積は、38億年前から40億年前で止まった。微惑星の集積がほぼ終了し地球表面が冷却に向かったのは38億年前となる。45億年前から38億年前の時代を「冥王代」と呼ぶ。冷却に伴い地殻が構成され、プレートテクトニクスが作動しはじめた。グリーンランドのイスアにその滑り込み地層に付着した「付加体」が発見され、地球最古の生命の誕生を物語る。ここから「始生代」とよぶ。よく知られているように地球最初の生命は、今から35億年ー38億年前に原始の海洋で熱水が噴き出す場所で誕生したようです。水がないと生命の誕生はなかった。確かに水の存在は地球の惑星としての進化にも決定的な影響を与えた。同じ地球型惑星である金星や火星の大気に比べて圧倒的に二酸化炭素に乏しかった地球大気は、生物の光合成による取り込みや、海水への溶け込みによる炭酸塩としての岩石への固定のためである。地球の変動を支配するプレートテクトニクスは、地球を覆う蓋(地殻)が水を含むために、流動性や脆弱性によって動くことができたのである。水が存在しない金星では剛体の蓋がしっかり地殻を固め、その下でマントルが対流するだけで、蓋(プレート)が移動することはなかった。そこで注目したいことは地球表面の三割は陸でおおわれている。つまり陸と海は相補的に働いているのです。海底の下に陸の起源があることに注目して本書が生まれたのです。なぜ地球だけに陸地と海があるのかという問いに本書は大陸地殻の形成モデルを利用して展開しています。しかしながらなぜ地球だけに海があるのかという問いには答えていません。海ありきからスタートし、それが大陸地殻形成に与えた影響とその動因を議論しているようです。

(つづく)