ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 佐藤栄佐久著 「知事抹殺」 平凡社

2012年06月26日 | 書評
原発と地方自治で国と「闘う知事」、特捜検察権力と闘う 第7回

1)原発を巡る闘いープルサーマル計画反対と原発全基停止 (4)
 東電は新潟県刈羽原発のプルサーマルを1年間延期と表明した。翌2000年1月7日東電の南社長は福島県を訪問し正式にプルサーマル延期を表明した。2002年6月4日経産省原子力部会において、河野資源エネルギー庁長官は「プルサーマル計画は原子力長期計画で着実な実施がうたわれており、力ずくでも進めて行く課題である」と挨拶した。2002年8月29日、「原発事業者の自主点検記録に係る不正調査について」というファックスが原子力安全・保安院からファックスで送られてきた。福島第1,第2原発で1980年代と1990年代にかけて東電が実施した点検作業で不正な記述があるということだった。不正の箇所は刈羽原発を含め29件に及ぶという 。この件はGEの技術者が2000年7月に経産省に内部告発したことに始まる。なんと2年間も経産省・東電は福島原発に関する内部告発を隠し続け、一方では福島原発にプルサーマル推進を強行していたのである。これは経産省というひとつの組織が同時にやっていたことである。佐藤知事は県副知事に「国との全面対決の決意」を伝えたという。
(つづく)

文芸散歩 村松 剛 著 「帝王後醍醐」 中公文庫

2012年06月26日 | 書評
建武の中興から南朝滅亡まで 後醍醐帝の光と影 第21回

4の卷)建武の中興から足利尊氏の反乱 (2)
 後醍醐帝は復位し、持明院統の光厳院には上皇の尊号が贈られ、その父後伏見院は出家した。新朝廷のなかでも分裂があった。建武の中興の朝廷人事でときめいたのは、隠岐・船上山派であった。千種忠顕、名和一族、結城親光、皇妃阿野廉子らの勢力である。名和一族への恩賞は楠木一族をしのいだのは、楠木は大塔宮の吉野派と見られていたからであろう。冷や飯を食らったのが吉野派である。高間氏、村上水軍の大三島祝、赤松氏らは碌な恩賞を得ていないばかりか、赤松氏は新田氏に所領を奪われている。吉野派の正規軍といえば楠木氏と赤松氏の軍だったので、赤松氏の没落は大塔宮の翼をもぎるようなものだった。帝の寵妃阿野廉子の第1皇子恒良親王が皇太子となったため、年長の親王5人(尊良、宗良、護良、玄円、躬良)の立場は一挙に不安定となった。建武の中興は僅か二年半でその間も戦乱は絶えなかった。建武元年1334年だけでも北条の残党が起こした乱は2ヶ月に一度ぐらいで頻発し、紀州飯盛山の大仏・長崎らの北条残党の乱やなかでも1335年7月の北条時行の中先代の乱では一時鎌倉が占領された。そして朝廷では恩賞方と雑訴決断所を設けて戦後処理を行なったが混乱を極めたという。建武朝廷の無能ぶりと社会の混乱は二条河原の落首にも書き残されている。諸国荘園の検注の2年間停止や公卿らの借金の徳政令は混乱に拍車をかけたといわれる。1334年10月突然クーデタ未遂事件が起きる。足利尊氏が阿野廉子に大塔宮謀反を讒訴したのである。大塔宮は逮捕され鎌倉に流罪となり、親王の直臣である日野浄俊らは斬られた。足利直義の手に大塔宮が渡されたと言うことは、これはいかに帝が大塔宮に冷淡であったということでそれが大塔宮の悲劇となった。1335年7月の中先代の乱で北条時行が鎌倉を攻めたとき、直義はまず手足纏となる大塔宮を刺殺した。8月上野太守であった成良親王を征夷大将軍とし直義が占領された鎌倉を攻めて奪い返した。尊氏はこの功で従2位と昇進し、かってに斯波家長を奥州管領に任命した。これは北畠顕家の奥州鎮守府に対抗させるためであった。建武2年10月15日に尊氏は鎌倉に下り実質的に幕府を創設し、地頭職や荘園を与えた。鎌倉幕府の再興であり、天皇親政の建武朝廷への反逆となった。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「水軒夏夜」

2012年06月26日 | 漢詩・自由詩
山影南薫首夏天     山影南薫 首夏の天  

風江潮動翠微煙     風江潮動 翠微の煙

月前蛍火当窓外     月前蛍火 窓外に当たり
 
水裡飢蚊襲枕邊     水裡飢蚊 枕邊を襲う


○●○○●●◎
○○○●●○◎
●○○●○○●
●●○○●●○
(韻:一先 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD  今日の一枚 マイルス・デービスアルバム集5 「Sketches of Spain」

2012年06月26日 | 音楽
疾駆するジャズトランペッター
マイルス・デービスアルバム集5 「Sketches of Spain」

ADD 1960 SONY MUSIC
1.CONCIERTO DE ARNJUEZ 2.WILL O'THE WISP from"EI Amor Brujo 3.THE PAN PIPER 4.SAETA 5.SOLEA
トランペットとフリューゲルホーン:マイルス・デーヴィス
ギル・エヴァンスアレンジと指揮 ビッグバンド20名

デーヴィスとギルとの共同作業は1957年の「マイルス・アヘッド」、1958年の「ポーギーとベス」についでこれが3作目である。そしてビッグバンドの歴史を塗りかえる傑作である。「スケッチ・オブ・スペイン」は云うまでもなくスペインの作曲家ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」がきっかけである。スペインのサウンドがこの作品に垂れ込められている。。「アランフェス協奏曲」と「サエタ」におけるマイルスのソロは集中された感情が表現された名演奏である。フラメンコの基本は「孤独」でありアフロアメリカのブルースのように切望・悲歌である。フラメンコとブースがこだまするのである。