ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

民主党の目玉である国家戦略室は通産官僚に牛耳られた

2011年06月11日 | 時事問題
asahi.com 2011年6月11日3時0分
原発事故調「骨抜き」の動き 経産省画策、首相が拒否
 東京電力福島第一原発の事故調査・検証委員会(事故調)について、政府の国家戦略室が経済産業省の影響下に置く構想を菅直人首相に提示していたことがわかった。首相の辞任表明後に提示したもので、首相は原発を推進してきた同省が事故調の「骨抜き」を画策したとみて拒否した。
 菅内閣は5月24日の閣議で事故調の設置を決定。事故調は内閣官房に置いて独立性と中立性を確保し、東電の監督官庁である経産省から離れた形で検証させるようにした。

皆さんメディアがいう「政府」という言葉に、「内閣」と「官僚機構」が一体のもとと見られる表現が多いことに気がついておられルことでしょう。内閣と官僚は歴史的に似て非なる別物です。そうです日本の行政機構は二重構造になっています。政治家が構成する議院内閣と官僚機構が構成する各省庁の機構です。この場合国家戦略室を政治家中心に構成すればこのような官僚特有の「骨抜き」はなかったのですが、政治家が業務を官僚に丸投げしているので内閣府は各省庁出向の官僚に占拠されているのです。これには議会政治家の無能力・無経験からきているのでしょうが、もっと政治家の行政能力を高めてほしいものです。そうでないといつまでも官僚が転がす日本政治の汚名から脱することは出来ないでしょう。

読書ノート 森毅著作集 「一刀斎 数学三部作」

2011年06月11日 | 書評
一刀斎先生 数学の歴史を語り、数学教育を斬る 第6回

森 毅著 「数学の歴史」 (講談社学術文庫 1988年)
2)16世紀・17世紀 新しい時代の数学(ルネッサンス・近代の夜明け)(2)


 ガリレイ(1564-1742)は「天文対話」(1632)において、「人間の理解は外にある命題を千ぐらい知ったとしても無限にある命題に較べると無に近い、人間の理解は内にある知性により完全に自然界を知る事が出来る。これが数学的科学である」といった。ケプラー(1571-1630)は17世紀の錯雑とした状況で、ギリシャを乗越えようとした。ヴェイト(1540-1603)の「解析学入門」(1591)は、文字形式こそ数学の普遍性を保証するものであった。ケプラーの共同研究者ピュルギは対数の発見者であった。これらの業績によって17世紀は無限小解析の契機である近代代数学(解析学)の入り口に立ったのである。デカルト(1599-1650)は幾何学と代数学の総合をなした人であった。「解析幾何」によってデカルトは代数形式を確立したといわれる。こうして、数、代数式、空間、変量がデカルトの普遍学として確立した。17世紀中葉にデカルト、パスカル、フェルマが登場し、数学者というより「自然哲学者」ともいうべき存在であった。ギリシャ時代に不変の象徴であった図形はもはや変化の象徴となり、二次曲線一般代数曲線に包括され、数学は記号の世界へ踏み込んだ。パスカル(1623-1662)は賭博の理論から確率論の創始者となり、「射影幾何学」の創始者の名が与えられたが、「パンセ」という瞑想録を書く繊細な精神を持った数学者・物理学者であった。確率過程はピタゴラス以来の2項係数(組み合わせ)と結びつき、級数論としてはイギリスの数値解析の伝統と合流する。
(つづく)


読書ノート 天野郁夫著 「大学の誕生」 中公新書

2011年06月11日 | 書評
帝国時代の高等教育システムの歴史 第17回

4)専門学校群像 (2)

 この時期には中等学校が抱えていた無資格教員の存在比率は大きく、師範学校で21%、尋常中学校で43%、高等女学校で60%に及んでいた。公立の医・歯・薬専門学校は医学系では、府県立医学校の京都・愛知・大阪の地元医学校の卒業生が官立5校医学校に対して引けをとらない数の卒業生を出していた。私立医学校としては国家試験予備校が開設されている。なかでも東京慈恵医学院と熊本医学校は専門学校へ移行した。歯学の専門教育は未整備で東京歯科医学校が専門学校となったのは明治40年である。医学と並んで資格制度の整備された薬学系では明治20年くらいまでに東京・京都・大阪・愛知の各府県に焼く学校が設置され、富山の市立薬学校が明治30年に建てられ、明治43年に専門学校へ移行した。医師、薬剤師のうち、大学卒は4%、専門学校卒は15%に過ぎず、「学校出」の比率は低く、国家試験合格組が殆どという状況であった。人材育成における専門教育の果たした役割は限定的であって、受験予備的専門学校と国家試験が主要な人材供給源であったことが分る。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「曝 書」

2011年06月11日 | 漢詩・自由詩
已熟黄梅榴火紅     已に黄梅熟して 榴火紅なり

午陰小酌曝書中     午陰小酌す 曝書の中

酔醒日暮疎疎雨     酔醒め日暮 疎疎たる雨

草露幽香細細風     草露幽に香る 細細の風


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(韻:一東 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)