ブログ 「ごまめの歯軋り」

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金融工学に対する規制強化策がない 対処療法のみ

2008年11月14日 | 時事問題
asahi.com 2008年11月14日13時20分
金融危機克服 麻生首相提案の要旨
 14、15両日にワシントンで開かれる金融サミット(G20)などで、麻生首相が表明する金融危機の克服に向けた包括提案の要約は次の通り。
【問題の根底】
金融資本市場の安定確保は、現在の経済政策の最優先事項である。
今次の金融危機の発生には、新たな金融商品の出現やグローバル化に、各国政府による監督・規制が追いついていけなかったという問題がある。
 しかし、この問題の根底には、グローバルなインバランスの問題があり、基軸通貨国アメリカへの世界中からの資本流入という形で、アメリカの赤字がファイナンスされているという根本があることを忘れてはならない。
 【金融危機防止のための国際協調】
自由な市場原理に基づく競争、資本フローが、今後とも成長の基礎であり続けることは言うまでもない。
 1、短期的な金融市場安定化策
・不良債権の早期開示と、バランスシートからの切り離し
・公的資金による資本注入
・金融機関の不良債権処理
・中央銀行による流動性供給
 2、中期的な金融危機防止策
・過剰消費・借り入れ依存の国における過剰消費抑制策と、内需主導型成長モデルへの転換

これだけドル紙幣を印刷すれば、ドルの信用はなくなる
 アメリカは約53兆ドルという天文学的な累積債務を抱て破綻しないのは、ドルが世界中から流れ込むからだ。キャッシュフローがあれば倒産しないという自転車操業、綱渡りである。だから投機マネーには一切規制しない態度を貫くのだ。
また2008年11月12日の朝日新聞はこう伝えた。「NY原油、終値60ドル割れ 1年8カ月ぶり 【ニューヨーク=丸石伸一】11日のニューヨーク商業取引所の原油市場は、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格の終値が前日比3.08ドル安の1バレル=59.33ドルと急落し、終値では07年3月下旬以来約1年8カ月ぶりに60ドルを下回る安値をつけた。」 石油先物価格と日経平均株価とドル安(円高)は見事に連動している事である。2007年中頃からドル相場は低下しはじめ、連動して株式も暴落を始めた。そしてじわじわと原油価格が高騰し、2008年より原油価格は急騰した。偶然の相関といってしまうにはおしいほどの三者の一致を見れば、ひょっとしてこの三つの現象の根は同じだと理解するほうが分りやすい。その理由は素人の私でも大体想像が付く。石油価格はドル建てであるので、ドルの信用が低下しても原油価格が上がればアメリカにドルは流れ込む。従って石油価格を上げればよい。株式市場から資金を引き揚げて原油や穀物、金といった先物取引市場に資金が流れたのであろう。サブプライムローン破綻以降の金融資本(ヘッジファンド)の悪あがきであろうとわかる。

日本には大学の数が多すぎて、資金が稀薄になる

2008年11月14日 | 時事問題
asahi.com 2008年11月14日8時34分
国立大の9割「法人化以降に格差拡大」 学長アンケート
 全国の国立大学長に朝日新聞がアンケートしたところ、9割以上が04年度の法人化以降、大学間の格差が「広がった」と感じていることが分かった。東京大、京都大などの有力大とそれ以外の大学の間で、特に財政面の格差拡大を指摘する意見が多かった。国から配分される運営費交付金の削減が、教育内容にも影響するようになっているという。 
 「法人化により、国立大間の格差は広がったと思うか」という問いには、92%の77大学が「広がった」と回答。同じ国立大でも、東大、京大などの旧帝国大、理工系、教員養成系(教育)大学などの違いで、法人化当初から、「体力差」への懸念があった。室蘭工業大の松岡健一学長は「過去の資産のある大規模大に資金が集中している」と指摘。岩手大の藤井克己学長は「旧帝大は余裕があるため、新たな展開を可能にしている。格差拡大は『地力の差』にあると思う」との意見を寄せた。

駅弁大学(大宅壮一氏命名)の数を減らすべきではないか。
誤解を恐れずに云うと、戦後の雨後の筍のように出来た大学は所詮資本蓄積がない。あまねく予算を配布したのでは文部省予算の希薄化になって、「2兎を追う者は1兎も得ず」となりかねない。入ってくる学生の学力も低いし、施設も不十分である。実学を学ぶなら、私学にまかせたらどうか。

読書ノート 香西秀信著 「論より詭弁ー反論理的思考のすすめ」 光文社新書

2008年11月14日 | 書評
強者の論理に騙されてはいけない 嘘・欺瞞の手口を知って反論しよう 第9回

第4章 「人に訴える議論」は詭弁ではない (1)

 著者はこの章でいきなり「論理的思考」の最大の弱点を追及する。論理的思考は「人を論じる虚偽(詭弁)とはしばしば発生論的虚偽とも呼ばれているもので、相手その者に対して関係のない攻撃を仕掛けるのである」という点が著者の考える論理的思考の最大の弱点である。「関係ない」とか「論理のすり替え」と言って禁じ手にされている 「人に訴える議論」を最前線にもってきて、論理的思考の呪縛を破壊するのである。論理学では「人に訴える議論」を五つに分類する。①悪罵型、②事情型、③偏向型、④お前も同じ型、⑤源泉汚染型である。論理的に考えると「人に訴える議論」はなぜ詭弁になるのだろうか。それは「発言した人間とは関係ない」ということで、本来検討すべき内容を、関係のない発言者の話題にすり替えているという虚偽を犯していると非難するのである。昔毎日新聞社の記者が外務省の女事務官と情交関係をむすんで外交秘密を漏洩したという裁判があった。世間では卑劣な手を使ったということで、外交秘密の問題は議論されなかった。確かにこれは議論のすり替えであるが、著者は論点をすり替えてどこが悪いと、「まともな人間の言動」側から批判するのである。社会では論理より常識が優先されるのだ。

文藝散歩 「大鏡」 武田友宏編 角川ソフィア文庫

2008年11月14日 | 書評
平安摂関政治の黄金期 藤原道長の栄華の歴史 第5回

「大鏡」 序

 この序では大宅世継と夏山繁樹と云う二人の超自然老人が雲林院での菩提講において出会うところから始まる。話の仕立ては一人の女性である筆記者(書き手)がこの菩提講に参加して大宅世継と夏山繁樹の歴史講釈を拝聴することになる。時は万寿二年(1025年)の、季節は不詳だが紫野の雲林院(現在の大徳寺の南に位置するが、現存していない)に参集する善男善女の群れが菩提講の僧の到来を待っているあいだのおしゃべりに始まる。その群れの中にいた老人二人が只今の天下人藤原道長の隆盛振りを語っておきたいという。それが天下の政道を明らかにするためで「おぼしきこと言わぬは、げに腹ふくるる心地しける」というのである。180歳を越える夏山繁樹という老人の自己紹介によると、故藤原忠平(太政大臣)が蔵人の少将といっていた時に仕えていた使い走りであった。190歳を越えるという大宅世継は宇陀天皇の皇太后(班子)の御所に仕えていた。繁樹が藤原摂関家の歴史を、世継は天皇家の歴史を語ると云う任務分けになっている。そこに第三の男として貴族に仕える軽輩の従人が話しに参加する。合槌を打ったり、話を促進させる役回りで登場する。繁樹の身の上話では小さい時に金で買われた貰い子であったそうだ。こうして大宅世継、夏山繁樹、軽輩の従人、筆記者の四人が設定された。そして話の趣向として、民衆にわかり易い政治歴史を語るとだと世継が宣言する。老人は古い話を知っているいて世の中の役に立つという歴史教育の強みを強調する。話の内容としては、道長の全盛期にいたるまでの歴代の天皇・皇后・大臣らを語らなければならない。そして天皇紀として文徳天皇の即位(850年)から1025年までの176年間の「帝紀」を語るというのである。文徳天皇から始めるにはわけがある。当時の大臣列伝は藤原冬嗣から始まるのである。この時より外戚による摂関政治の種がまかれた時期であるからだ。