ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

老人介護問題は、医療も介護も区別できるものではない。

2007年04月13日 | 時事問題
asahi.com 2007年04月13日08時19分
療養病床、15万超存続へ 厚労省が基準見直し
 慢性疾患を抱えるお年寄りが長期入院する療養病床を削減する問題で、厚生労働省は12日、各都道府県が存続させる療養病床数を決める基準となる考え方を示した。2012年度時点での存続目標を各都道府県が今秋までに決め、それを積み上げて全国の目標数をつくる。厚労省は38万床(05年秋時点)を15万床まで減らす計画だが、各地域の高齢者人口の伸びにより、削減後のベッド数は15万床を上回ることになりそうだ。
 厚労省の試算では、高齢者人口の伸びを考慮しなければ「15万床」まで削減できる。しかし、最新の人口推計によれば、75歳以上人口は06年の1216万人から12年には1526万人に急増。各都道府県はこうした状況も踏まえて目標値を決めるため、厚労省の計画よりも必要な病床数は増えることが確実だ。

老人療養病床を介護施設へ回しても費用請求先が変わるだけ。厚生省は健康保険と介護保険を一体で管理しなければならない。
 私の母は療養型介護施設に入所している。最初は介護施設であったが、認知症が進んだので医療病棟へ移動した。費用はほぼ同額でどちらの保険(健康保険か介護保険か)を使うかだけの問題であった。費用振り替え先が違うだけだ。

 要支援、要介護利用者は現在350万人で公的負担は6兆円である。支援、介護サービスの内分けは自宅サービスが250万人、グループホームが10万人、有料老人ケア-ハウスが5万人、施設サービスが合計80万人でさらにその内訳は医療型医療施設が13万人、特別擁護老人ホームが38万人、老人保健施設が29万人である

 京都市には在宅介護支援センターが94箇所、老人福祉センターが18箇所、老人憩いの家が7箇所、グループホームが32箇所、有料老人ホームが6箇所、ケアハウスが11箇所、介護老人福祉施設(特別擁護老人ホーム)が53箇所、介護老人保健施設が32箇所、介護医療型医療施設が32箇所ある。

漢詩 「江村春霞」

2007年04月13日 | 漢詩・自由詩
江村春霞

春霞欺雪満山     春霞雪を欺く 満山の桜

一望江村万里     江村を一望すれば 万里晴れ

緑柳映水繊有影     緑柳水に映じ 繊として影有り 

紅花蝶舞寂無     紅花蝶舞い 寂として声無し

(赤い字は韻:八庚  七言絶句平起式)

ノーム・チョムスキー著 「覇権か生存かーアメリカの世界戦略と人類の未来ー」 第1回/全9回

2007年04月13日 | 時事問題
第1回/全9回
 序章 

2001年9.11同時テロを期に、ブッシュⅡ世によってアメリカの世界覇権戦略が露骨にむき出しの形で遂行されるようになった。それまでアメリカの覇権戦略は多くの国々の市民の命を奪ってきた歴史を持っている。1989年アメリカとの軍拡競争で疲弊したソ連邦崩壊とそれに先立つ東欧衛星国家の地すべり的崩壊によって、米国の前には強力な敵の連合軍はいなくなった。もはや米国の戦略を妨げる勢力がいない状況での米国の国家テロは、無辜の人々の血がどんなに流されても、それが米国及び支援国家の行為である限り、テロと呼ばれることはない。なぜなのか。
いま米国は史上最強の軍事力と科学技術力を持つ国家として、覇権を一層推し進めようとしている。しかしそれは同時に多く人々の生存を危うくする。本書は9.11以降の米国の覇権戦略に焦点をあて、その歴史的経過もたどりながら分析して米国の戦略をあぶり出し、脅かされる国際社会のあり方と人類存続へ警鐘を鳴らすことが目的である。

著者チョムスキー氏については、本ホームページ書評でも酒井邦嘉著 「言語の脳科学」で生成文法理論を打ち立てた言語学者であることを紹介した。著者チョムスキー氏は米国MITの教授で「言語に規則があるのは、人間が規則的に言語を作ったためではなく,言語が自然法則に従っているためである。人間の特有な言語能力は、脳の生得的な性質に由来する。」という説を出した脳科学的な言語学者として有名である。その言語学者がアメリカでこのような反米思想にもとずく過激な思想を展開していたとは私は不勉強で知らなかった。その辺が米国が懐の深い社会で、外交機密文書にもアクセスできる情報公開制度をもつ開かれた社会の一側面も示している。他の後進国なら直ぐに死刑宣告を受けたであろうと想像に難くないほどの、恐ろしい事実と国家戦略を曝露し米国覇権主義を赤裸々に世界に向かって告発する書である。
ただ米国人が米国を告発するストーリのために本書の文章表現が非常に難解(皮肉と見れば簡単)そうに見えるのが欠点だ。本書の趣旨を他国人が書けばもっと分かりやすくなっただろう。権力者の言と告発者の言が同時に同一人からでるため、振り子が二つの極端を揺れ動くようにややこしい。少し意味をとるのに時間が必要になる。翻訳者はそのあたりを心得て、多少意訳でもいいからトータルとして言いたいことを表に出せば、途中のややこしい表現は省いても良かったのではないか。

2002年9月、ブッシュ大統領は国家安全保障戦略を発表し、アメリカの世界的な覇権に異を唱えるものを武力に訴えて排除する権利がアメリカにあるという宣言した。サダムフセイン打倒のプロパガンダが始まった。2003年の幕開けと共にイラク攻撃を必然のものとした。次々とブッシュはアメリカ一国主義的政策を打ち出し、宇宙の軍事利用禁止に向けた国連の取り組みを妨げ、生物兵器による戦争を防ぐ国際交渉も打ち切り、地球温暖化防止枠組み条約から脱退して独自の気候変動科学プログラムを発表したが数値目標のない成り行き任せで14%も排出量が増えても良しというもので欧州との友好関係も悪化の一途をたどり始めた。地球上にはアメリカを制約するものは何一つない超大国と、対立する世界の世論の二つしか存在しなくなった。

一般大衆を支配することは何時の時代でも権力者や特権階級の関心事である。少数ながら善良なものたちで統治するのが米国政府の責任で、米国ではエリートが意思決定し、一般大衆がそれを承認するシステム、つまり「多頭政治」であって民主主義ではない。しかし米国内で強制的な手段は用いるのは憚れるので主に世論と国民意識を操作するいわゆる巨大広報産業(メディア)支配が発展した。いわば合意のでっち上げで特権階級は世論をうまく交わして利益を管理するわけである。意志決定者となるべき責任ある人間とは特別な才能が必要なのではなく、現実の権力機構に服従する忠誠心さえあればいい。こういう世論操作がとりわけ重要問題になるのは、一般大衆の反対する政策を権力者が目論むときである。

国内の反対者に対しては徹底的なプロパガンダ(美辞麗句と脅迫文で)によって統制しなければならないが、国外の反対者にはより直接的な手段が遠慮会釈なく講じられる。「テロとの戦い」を宣言して、アメリカによる国家テロ即ち大量虐殺や軍事行動がおこなわれる。過去にニカラグア、エルサルバドルの中米でアメリカ主導のテロがおこなわれ野蛮な破壊と生活基盤の略奪(流民)が白昼堂々と行われたが。メディアは大衆には何も公表しなかった。全ては闇に葬られた。

生命の誕生して10万前に文明形成に必要な知的能力を持った生物「人」が生まれた。しかしこの数百年で人類は自己をも他の生物をも滅ぼす能力を示してきた。人類は生命を維持する環境や生物多様性を破壊し、同じ人類をも虐殺する計画的残虐性を持つことが判明した。はたして人類という知的生物は進化において有利な働きはしなかったというべきだろうか。将来人類は破滅に向かって着実に進んでいる。

小林秀雄全集第27巻「本居宣長 上」より「第3章 本居家の昔話、小児科医開業」

2007年04月13日 | 書評
第3章 本居家の昔話、小児科医開業

本居家は松阪の城下町を築いた蒲生氏郷の家臣であったが、会津で討ち死にし、妻は小津の油屋源右衛門に身を寄せその子供が小津家の養子になり別家を立てた。宣長は1730年享保十五年に生まれ、一時紙屋に養子に出されたが家に帰った。1752年23歳の時京都にのぼって堀景山に弟子入りし医術を武川幸順に学んだ。四年の京留学の後松阪に帰り小児科医を開業した。そこでかっての本居家を名のった。学問の志は捨てないもののやはり生計をたて、家を興すことが先決と考えた。これが宣長のこころざしであった。彼の学者生活を終始支えたものは医業であった。