goo blog サービス終了のお知らせ 

とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

女性画家誕生

2012-03-24 16:41:47 | 日記
女性画家誕生




コローのアトリエ。「画架の前に座る若い女」( 1865年-68年制作 ルーヴル美術館)

 コローは印象派の若い画家に強い影響を与えたフランス19世紀の風景画家。のちのバルビゾン派の聖地となるフォンテーヌブローの森も早くから描いていた。
 この絵はコローのアトリの様子を知る手がかりとなる作品で、私はそういう点からもよくよく観察している。ストーブ、壁に掛けてある様々なもの、大型のイーゼル。雑然としていて殺風景な部屋に、爽やかな後姿の若い女性が描きかけの絵が置いてあるイーゼルの前に座っている。楽器を下に置いて、じっと絵に見入っている。また、着衣に特色があるし、肩のあたりに光が当たって輝いている。すべて計算しつくした構成である。
 モデルはだれか。想像は膨らむが、だれでもいい。ポイントは絵にいたく関心を持っているような姿である。コローがそういうポーズをとらせたと思われるが、それにしても純真な思いがビンと伝わってくる作品である。この女性は後々女性画家として大成するかもしれない。「真珠の女」という彼の有名な作品のモデルは近所の娘さんだという。すると、私のそういう想像は当たっていないのかも知れない。それにしてもこの自然なポーズはすばらしい。


 その後の京子さん、佐山さんについて・・・。


 畝本さん、佐山さんの母子像が完成しました。

 そりゃよかったです。

 今度はどこへ出すんですか。

 東京です。銀座の画廊です。お世話になっているフランス画廊です。

 へえー、銀座ですか。

 私も迷ったんですが、やはり出すことにしました。全国レベルの評価が定まるとしめたものです。

 そうですね。でも、一点だけで大丈夫でしょうか。

 一作だけというのは冒険です。しかし、もう実力は中堅画家のレベルを超えていますから。

 知名度ということも・・・。

 そりゃ大丈夫です。フランス画廊さんは、新人の発掘に力を入れていますから。

 そうですか。いよいよ銀座、銀座ですか。

 ええそうです。

 京子さんの実力も普通ではないと思っていますが・・・。

 ええ、ええ、そうです。今度お電話したのはそのことなんです。

 えっ、そうですか。

 実はですね。お母さんが今帰っておられるんです。

 あの家にですか。

 そうです。

 お孫さんの顔が見たいということで帰ってこられたんです。

 お母さんがですか、実の・・・。

 そうです。で、そのことがきっかけで、京子さんが始めたんです。

 何をですか。

 絵ですよ。再開したんです。

 でも、京子さん、私には子どもがいてとか話しておられたんですが・・・。

 そうです。その子どもさんが大きな役割をしました。

 というと・・・。

 そうです。お母さんと子どもさんをモデルに・・・。

 モデルは母親と子ども。

 そうです。

 ちょっとイメージが湧かないんですが。

 お祖母さんが孫を抱いている姿です。

 すると、佐山さんの絵とは随分趣が違いますね。

 そうです。そこが面白い。イメージとしては、・・・そうですね、単に抱いているだけではなく、お祖母さんが玩具で孫をあやしているという感じです。

 そういう絵柄であれば、画家の実力がもろに出てきますね。

 畝本さん、いいこと言いますね。そこなんです。京子さんは実に見事にこなしています。

 こなしている?

 軽み、と言いますか、何しろ飄々とした趣があります。

 そう言われてもよく呑み込めませんが、要するに京子さんは普通の実力ではないということでしょうか。

 そうです。案外佐山さんを超えているかもしれません。

 超えている。

 そうです、女性画家の誕生です。

 そりゃ嬉しいですね。・・・私はそう言いながら、京子さんの「・・・やっつます」という言葉を急に思い出しました。

東北関東大震災 緊急支援クリック募金←クリック募金にご協力ください。