とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

母と娘

2012-03-08 00:18:08 | 日記
母と娘




金色の箱を開けようとするプシュケ(ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1849年-1917年 イギリス )


 私はウオーターハウスの絵が好きです。今回は先ず絵の中のプシュケの話から始めます。

 ギリシャ神話が背景にあります。プシュケは一国の姫で、その美しさは美の女神ヴィーナスより評価が高く、人々に崇められていました。しかし、その評判がヴィーナスの嫉妬を買い、ヴィーナスはプシュケが醜い男と恋に落ちるように仕組もうと息子エロスを派遣します。しかし、目的を果たすどころかエロスは誤って自分の矢で傷つきます。そして、エロスとプシュケは恋に落ちてしまいます。それを知ったヴィーナスは怒り狂い二人に幾多の過酷な試練を与えますが、それらを乗り越えて晴れて二人は結婚し、人間の美少女プシュケは羽根が生え、女神となりました。ーーー概略こういう話です。

 上の絵の場面について補足します。・・・過酷な試練を乗り越えていくプシュケに最後の試練をヴィーナスが与えるべく一つの箱を渡し「これを持って冥府の女王ペルセポネの所に行きなさい。病に伏せるお前の夫のために、彼女の美しさを分けてもらってくるのです」と言いつけます。死を覚悟して冥府に向かったプシュケは、無事に務めを果たし、帰路につきます。 しかし、どうしても箱の中身が見たくなったプシュケは、言いつけに背いて箱を開けてしまいました。
箱に入っていたのは美しさではなく、冥府の眠りでした。眠りにつかれたプシュケは、道の真ん中に倒れてしまいます。一方、すっかり傷が癒えたエロスは、女神の目を盗んで部屋の窓から飛び出すと、プシュケを探し求めます。
やがて眠りにつかれたプシュケを見つけると、エロスは眠りをかき集めて箱の中に閉じ込め、プシュケを軽く矢で突ついて目覚めさせました。そして大神ゼウスの所に連れ立ち、二人が永遠に結ばれるよう嘆願します。
ゼウスは恋人たちの願いを快く受け入れ、プシュケに不老不死の霊酒を与えました。神体となったプシュケには美しい蝶の羽根が生え、二人の間には「悦び」という名の娘が生まれました。
 この話は寓話として理解されています。プシュケは魂を意味し、エロスは愛を意味します。愛は魂と結ばれて初めて悦びが生まれるという寓話です。

 はてさて正直な話、私はあちこちから話をつなぎ合わせてまとめるのに疲れました。昔の画家はこういう神話の世界を好んで描きましたが、私はこういう話を持ち出して何を言いたいのでしょうか。---そうです。京子さんと佐山さんとの間のつながりです。そして、離婚して出ていった実の母親のことも話したかったのです。
 どうつながっているのか?
 いや、私もきちんと整理していませんが、京子さんは西洋美術を研究した女性、佐山さんもそうです。二人はプシュケの生き様を理解しています。次に描く作品は「悦び」。古賀画伯から聞いた今制作中の作品のタイトルの深い意味が理解できたのです。

 畝本さん、いよいよ本物になりました。「悦び」です。京子さんプシュケになりきっていますよ。

 プシュケ?

 そうです。ギリシャ神話です。

 神話、ですか。

 そうです。

 畝本さん、神話調べてみてください。

 ・・・え、ええ、そうします。

 それからね。京子さんのお母さん、あの作品を持って元の旦那さんのところへ行くと言っていました。

 場所、分かってたんですか。

 いやね、京子さんから聞き出したらしいです。

 そうですか。・・・でも、眼が・・・。

 お母さんが、京子の絵なら必ず見えるはずです、とか言ってたそうです。

 でも、そりゃまずいですよ。後妻さんに喧嘩を売ることに・・・。

 畝本さん、そこまで他人の我々が心配することはありませんよ。

 まあ、そうですけど・・・。


 数日前の電話の話はざっとこんな内容でした。




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