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安定狭心症に風船治療・ステント治療を行っても薬物療法だけの場合と成果は同じ

2007年04月18日 | 循環器
これまで、貫壁性あるいは非貫壁性の心筋梗塞の場合の風船治療・ステント治療の成果についてお伝えしました。今回は最近発表された論文から、安定した狭心症に関してです。

まず、どういう例を安定してと定義しているのかを理解するためにカナダ循環器学会の狭心症重症度分類を示します。

【クラスI】日常の身体活動、たとえば通常の歩行や階段上昇では狭心発作を起こさない。仕事にしろ、レクリエーションにしろ、活動が激しいか、急か、または長引いた時には狭心発作を生じる。
【クラスII】
日常の身体活動は僅かながら制限される。急ぎ足の歩行または階段上昇、坂道の登り、あるいは食後や寒冷、強風下、精神緊張下または起床後2時間以内の歩行または階段上昇により発作が起こる。または2ブロック(200m)を超える平地歩行あるいは1階分を超える階段上昇によっても狭心発作を生じる。
【クラスIII】
日常活動は著しく制限される。普通の速さ、状態での1~2ブロック(100~200m)の平地歩行や1階分の階段上昇により狭心発作を起こす。
【クラスIV】
いかなる動作も症状なしにはできない。安静時にも狭心症状をみることがある

この論文の中では、安定した狭心症とはクラスIVが薬の内服でクラスIII以下に改善した狭心症と定義されています。

Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease.
New England Journal of Medicine. 2007;356:1-14.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は、大きな冠動脈の中枢部に70%以上の狭窄があり運動負荷心電図などで虚血が証明されているか、大きな冠動脈の中枢部に80%以上の狭窄がある安定した2,287人の狭心症患者で、風船治療・ステント治療群(薬物療法も併用)1,149人と薬物療法群1,138人に無作為に分けられ、平均4.6年調査されました。

両群でカナダ循環器学会の狭心症重症度分類クラスI、クラスII、クラスIIIの割合に差はありませんでした。同様に、糖尿病や高血圧、バイパス手術の既往、心筋梗塞の既往、薬物療法の内容などに差はありませんでした。

全ての原因による死亡と非致死性の心筋梗塞の発症は、4.6年間で風船治療・ステント治療群で19.0%、薬物療法群で18.5%と差は認められませんでした。

また、心筋梗塞や不安定狭心症で入院した割合は風船治療・ステント治療群で12.4%、薬物療法群で11.8%、心筋梗塞の発症は風船治療・ステント治療群で13.2%、薬物療法群で12.3%と差は認められませんでした。

つまり、安定した狭心症では風船治療・ステント治療群をしても、全ての原因による死亡と非致死性の心筋梗塞の発症、心筋梗塞や不安定狭心症での入院の回避効果は薬物療法だけの場合と同じということです。


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1 コメント

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安定狭心症 (島郷)
2010-03-07 10:45:32
医師にステント治療を強く勧められているので興味深く読みました。他のHPで安定狭心症に、高リスク安定狭心症と低リスク安定狭心症に触れているのがあり、薬物治療は高リスク安定狭心症には該当しないかの記述がありました。このニューイングランド医学雑誌に掲載された研究発表には高低リスクの区別が書かれていませんが、高リスク安定狭心症(3枝狭窄など)は薬物治療ではカバーできないのでしょうか?

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