橡の木の下で

俳句と共に

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2024-03-28 11:44:08 | 『橡』問い合わせ先

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FAX:027−361−6965

 

 


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「バレンタイン」令和6年「橡」4月号より

2024-03-28 11:41:11 | 俳句とエッセイ
バレンタイン   亜紀子

信心の鰯の油身にかなひ
雪に濡れ伐採を待つ苑の木々
架線工梯子伸びゆく梅の上
少子化の子供広場の草青む
むら立ちて声なき冬の花わらび
ひそひそとバレンタインの少女たち
ひと仕事長居うららの喫茶店
日々早し梅もせはしく終りたる
よく笑ふ鴉が一羽木の芽時
待ち合はす河津桜の満開に
魚はしる水の底にも春の来て
山茱萸や園を巡れる水のきら
春立つや畑の窪水光りをる
春興や七宝釉の鉢並べ
桟橋に遅き日のあり宴の果

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「如月の園」令和6年「橡」4月号より

2024-03-28 11:37:35 | 俳句とエッセイ
如月の園   亜紀子

 あちらもこちらも終わりの見えない戦い。甚大な自然災害。呆れるほどの為政者の不正。極端に乱高下の気温。あれよと言う間もなく一月が過ぎ、二月はさらに駆け足で流れ去る。何とはなしにいつも重い気分。世の諸々を自分ごととして焦燥を感じているのだろうか。否本当のところはよそ事と感じていると思う。よそ事には時がたてば慣れが生じる。本当の煩いは日常の自分ごとの中にある。誰にも悩みのない人生というものは無い。それにも慣れてしまうこともあるし、なかなか振り払えないこともあるだろう。まあ、全ては仕方がないことなのだ。
 と思い、気持ちを変えようといつもの庭園歩きに出かける。朝からの冷たい雨は小止みになり、傘を広げずに歩いている人もいる。ここしばらく暖か過ぎて、もう北へ移動したかと思っていた真鴨数羽、また池に戻っている。胸に埋めた緑の頭がこんな薄暗い日でも艶々光沢を放っている。その上に覆いかぶさる岸辺の楓の梢が煙っているのは芽吹きの兆し。
 池へ注ぎ込む流れを遡る。この小流れの底には石が敷かれ、山峡の早瀬の水音を奏でている。沢ふたぎの梢が僅かに芽吹き始めた。向こう岸の壁の落葉が動いたと見ると鶫が一羽。いつものあの鳥。小径の上から異国語で歩いて来る観光客にも動じる様子なく、人なつこい。まだ暫くは逗留するのだろう。
 流れは途中から内側へ湾曲し、その先はやや広い隈を作り橋が掛かる。瀞となった橋下には鯉がのぼって来て集まり、観光客が橋から投げる餌を待っているのだが、今はまだ冬季で餌は中止。それでも魚の動きはだいぶ活発になってきた。この辺りでせせらぎの音は消えて、小径の向こうからまだ姿を現さぬ滝音が響いてくる。流れの湾曲はこの効果を生むように設計されているらしい。いつだったか庭園ボランティアガイドさんに案内してもらった時、そのように聞いた。ガイドさんは「この辺りが好きなんですよ」と滝音が消え、せせらぎに変わる地点に立ち止まり説明してくれた。足元には数本の桔梗が咲き、その桔梗の色も好きだということだった。
 石組みの大滝は時間制で水が落ちる。木々の梢に綴られた雨粒。観光客は皆ここで一度写真を撮る。冬は日陰で寒く、夏は蚊が多く、秋の楓は日面にある木のようには色付かず、私はあまり長居しない。 滝を通り過ぎ、東屋の前に芝生広場、白梅と紅梅。白梅はすでに盛りは終わり白い花弁を散り敷いている。季節は年ごとに早くなる気配。見上げるとずっと高い梢に山茱萸の花。黄の色に目を射られた。どこかで小啄木鳥の声。小鳥たちはもう新しい季節の支度を始めた様子。造られた庭、人口の自然。と言っても小鳥や木々自身には野生も人為も区別はない。皆精一杯だ。暫し、身も心も深呼吸。有り難い。
 見るもの、聞くものがどれも俳句になればなお有り難い。何を聞いても見ても、一旦は五七五にしてやろうと思うものだから、少々間合いを取れるので有り難い。鉛筆と紙があって有り難い。この頃はケータイのボイスメモを活用して、歩きながら小さな声で一句録音している。俳句があって良かった。

山茱萸か檀香梅か崖の上  星眠
 山茱萸は中国から薬用にもたらされ、庭園樹。檀香梅は日本に自生するが庭園樹としても好まれる。

幹打つて愛を知らせる小啄木鳥かな 星眠
 啄木鳥は秋の印象も強いが、春もしかり。小啄木鳥の声を聞くと森の春の戸が開く思い。

紅梅に鳴いて鶫の別れかな 星眠
 鶫は人に親しい鳥と思う。

父母いますいまの尊し牡丹の芽  星眠
 父母なき今の牡丹の芽を見る。

返照に嘴伸べせせる春の鴨  星眠
 夕日の中の残る鴨の景はいつの間にかセットで思い浮かぶようになっている。

 一つでもいい句ができれば、何より有り難い。

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「選後鑑賞」令和6年「橡」4月号より

2024-03-28 11:33:36 | 俳句とエッセイ
選後鑑賞    亜紀子

ぬくめ酒咽せて飲み干す病み上がり  泉川滉

 ぬくめ酒、すなわちあたため酒。温め酒は陰暦九月九日重陽の日に酒を温めて飲むこと。病難を避けることができるといわれる。作者は病を克服し飲酒も許されたものの、咽せて飲み干す様は薬を呑む様にも見える。百薬の長の効き目はいかに。もっとゆるりと熱燗を楽しむ日も間近いことと思われる。
 ところで、お恥ずかしいことにこのぬくめ酒という季語は掲句で知るところとなった。広辞苑の見出しが「あたため酒」でもあり、ちょっと迷ってしまった。先日惜しまれて逝った女性歌手のヒット曲の一節が思い浮かび、最初は単純にぬるめの燗と解釈していた。単なる熱燗なら冬の季語。温め酒は冷や酒から温めた酒が美味しく感じられるようになる晩秋の季語。なるほどと納得した。

黒々と鋤かれ春待つ減反田      岡田まり子

 七〇年代から始まった減反政策は二〇一八年に廃止された。政策は終了したものの、米をめぐる世の中の状況の様々な変化で我が国全体としての米作りは必ずしも順調には進んではいないと聞く。
 掲句の減反田はかつて生産量調整の為に米を作らなかった耕地にこの春から稲の作付けを開始する田と解釈した。黒々の措辞に豊かな土を思い、黄金に稔る稲穂の波を想像する。ひとたび何かが起きた時、最も必要となるのは食料だ。食べる物なくしては我々の体はどうにもならない。かつての減反田の美味しいお米を期待する。

骨正月浜焼鯛の身をこそげ      今村さち

 骨正月、もしくは二十日正月。東日本生まれの私は馴染みがなかったが、西日本では一月二十日を正月の祝い納めとするそうだ。飾り物など片付け、正月用の塩鰤や荒巻鮭などのあらを料理して食べるところから、骨正月と呼ぶとのこと。掲句の作者は瀬戸内の鯛の浜焼きを召し上がったようだ。骨の周りの身がことに美味しそう。身は和え物に、骨とお頭はスープに。

怯えもせず海鼠切る妻面妖たり    佐藤雄治

 海鼠は冬季。季節になると時折近所のスーパーの売り場にも並ぶ。酢なまこなど酒の肴に好まれるようだだが、山家育ちの私には手が出ない。誰が買っていくのだろう。掲句作者の奥様のようだ。ちゃっちゃと料理される奥方を面妖などと評しているものの、夕べの一献にご自分の好物を供してくれることに感謝していると思われる。

外套を脱げば半袖異国びと      奥村綾子

 コロナパンデミック収束、円安加速、外国人観光客急増。日本の冬に備えてダウンコートでやって来た彼らのその下はTシャツ一枚という姿はよく目にする。思わず体の出来が違うのかしらと不思議に。いや多分、自国では室内は常に暖かで真夏の格好でOK。エネルギー潤沢のお国柄なのでは。

切り通し出づれば香る春の潮     木野内八重子

 日差しの輝きが増し、春の海はその匂いも変わる。藻の香りだろうか、何なのだろう、生き物が活動し始めた匂いと呼ぶべきか。鎌倉の春、新しい季節の潮風に心軽やか。

鬼やらひ子らは喜び打たれけり    岩下和子

 子供の追儺、大抵のところでは大人が鬼に扮し、子供たちが豆を打つのだが。掲句は子供同士で役割分担しているのだろうか。豆をぶつけられるなんて滅多にない体験。きゃあ、きゃあ、嬉々として騒ぎ回る姿を想像。喜び打たれるの措辞が秀逸。

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令和6年「橡」4月号より

2024-03-28 11:30:25 | 星眠 季節の俳句
山茱萸に碓氷ふるみち曇りけり  星眠
                (営巣期より)

 旧中山道碓氷峠越は群馬と長野を繋ぐ古道。古来より難所として知られた。
山茱萸の黄の花だけが季節の到来を告げている。
                           (亜紀子・脚注)

                             

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