連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・6
ノラ バーチャルからの旅立ち・6

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。
時 百年後
所 関西州と名を改めた大阪
登場人物
好子 十七歳くらい
ロボット うだつの上がらない青年風
まり子 好子の友人
所長 ロボットアーカイブスの女性所長
里香子 アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ アシスタントディレクター
所 関西州と名を改めた大阪
登場人物
好子 十七歳くらい
ロボット うだつの上がらない青年風
まり子 好子の友人
所長 ロボットアーカイブスの女性所長
里香子 アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ アシスタントディレクター
好子: もうロボットもアンドロイドも買わないよ。
ロボ: 無理スンナヨ。ボクヨリイイアンドロイド見ツケレバイイ。
好子: だって、もういやだ。こんなお別れ……。
ロボ: 人間ダッテイツカハ死ヌ。ロボットダッテ同ジ。
人モロボットモ、オタガイタスケアイ、思イアッテ生キテイクンダ。
ソノトキソノトキ、セイイッパイ生キテ、ソシテイツカ別レノ日ガヤッテクル。
ソノ日マデ、ミンナ宇宙ニ一ツダケノ花デイレバイインダヨ。ソモソモ人生トイウノハ……。
好子: ハハ、やっぱ、ダサイ。入学式の校長先生の話みたいだよ。
ロボ: 好子ンチハ、家族ミンナ寂シガリダカラ……気ハヤサシクテ、チカラモチノアンドロイドガ必要ダネ。ソウシナヨ。
好子: そうね。とびっきりカッコよくて、男っぷりのいいアンドロイドにするわ。
鼻筋が通って、声は品のいいバリトン。休みの日には白馬に二人乗りして、湖のほとりを散歩すんの。
そいで、宿題みんなやってくれて、お掃除、洗濯、お買い物、ぜーんぶしてくれて。アルバイトも行ってくれて、
月に百万くらい稼いでくれる! そんなアンドロイドが……アンドロイドが……いいわけないじゃん!
人もアンドロイドも見せかけのカッコよさじゃないよ。
たとえ短足で、ぶさいくでも、いっしょに暮らして、心が通いあってることが大切なんじゃない。
そんなアンドロイド……ロボットは、ロボくん一人しかいないんだもん。
わたしにも、お母さんにも、ロボくん一人しかいないんだもん……!
ロボ: 好子チャン……。
好子: なーんちゃってね。ね、けっこう感動的なクライマックスになったじゃん。
あたし、演劇部に入ろうかなあ。
ロボ: 無理スンナヨ。ボクヨリイイアンドロイド見ツケレバイイ。
好子: だって、もういやだ。こんなお別れ……。
ロボ: 人間ダッテイツカハ死ヌ。ロボットダッテ同ジ。
人モロボットモ、オタガイタスケアイ、思イアッテ生キテイクンダ。
ソノトキソノトキ、セイイッパイ生キテ、ソシテイツカ別レノ日ガヤッテクル。
ソノ日マデ、ミンナ宇宙ニ一ツダケノ花デイレバイインダヨ。ソモソモ人生トイウノハ……。
好子: ハハ、やっぱ、ダサイ。入学式の校長先生の話みたいだよ。
ロボ: 好子ンチハ、家族ミンナ寂シガリダカラ……気ハヤサシクテ、チカラモチノアンドロイドガ必要ダネ。ソウシナヨ。
好子: そうね。とびっきりカッコよくて、男っぷりのいいアンドロイドにするわ。
鼻筋が通って、声は品のいいバリトン。休みの日には白馬に二人乗りして、湖のほとりを散歩すんの。
そいで、宿題みんなやってくれて、お掃除、洗濯、お買い物、ぜーんぶしてくれて。アルバイトも行ってくれて、
月に百万くらい稼いでくれる! そんなアンドロイドが……アンドロイドが……いいわけないじゃん!
人もアンドロイドも見せかけのカッコよさじゃないよ。
たとえ短足で、ぶさいくでも、いっしょに暮らして、心が通いあってることが大切なんじゃない。
そんなアンドロイド……ロボットは、ロボくん一人しかいないんだもん。
わたしにも、お母さんにも、ロボくん一人しかいないんだもん……!
ロボ: 好子チャン……。
好子: なーんちゃってね。ね、けっこう感動的なクライマックスになったじゃん。
あたし、演劇部に入ろうかなあ。
それとも、そこらへんのオーディション受けまくって、アイドルにでもなっちゃおうかしら。
正体不明の新人アイドル相保好子! 清純にして可憐。
しかし、その瞳には世の男性をとりこにして止まない小悪魔のかがやきが! その底知れぬ彼女の本性やいかに!?
そのときは、ロボくん。きみがわたしの付き人になって、ファンからのヤマほどのプレゼント両手にかかえて……
かかえてくれるあなたはもういないのよ……ロボくん……ハハハ、どうしてわたしは、こう情緒不安定なのよ……。
ロボットアーカイブスの所長が、あらわれる。
所長: 昼間お電話のあった相保さんですね。
好子: は、はい。
所長: 登録IDを、お見せいただけますか。
好子: はい、これです(ポケットからIDカードを出し、所長にわたす)
所長: (IDカードを、コンソールにかける)シリアスナンバー183699……のアンドロイドの廃棄をご希望なんですね。
(カードを受け取って、逃げるように所長の側を離れる好子)
好子: …………。
所長: お電話では、そううけたまわっておりますが。
ロボ: ハイ、廃棄デス。アチコチ寿命ガキテ、ポンコツナモンデスカラ。
好子: スクラップですか?
所長: しかたありませんね。ここまで旧式だと。
ロボ: ナルベクヤサシクオネガイ……シマス。
所長: いいわよ(好子に)よろしいですね。
好子: …………。
ロボ: 好子……。
好子: ロボくん……。
所長: では、ロボくんむこうへ。
ロボ: ハイ(所長に示された上手方向に歩き出す)
好子: ロボくん!
好子、思わずロボに駆け寄ろうとする。所長の前を通ったとき、所長はコンソールを好子の首にあてる。
「ピューン」と電子音をさせて、そのままの姿でフリーズ。進一、つまり今までのロボ、ゆっくり振り返る。
その動きは人間のそれである。
進一:(いままでのロボ) 好子……。
所長: 終わりました。
まり子、息を切らせてやってくる。
まり子: 進ちゃん……。
進一: 終わったよ。
進一、好子のまぶたを閉じてやる。
進一: 最後まで、自分を人間だと思って……ずっと、ずっと、ぼくを心配し続けてくれた。
CPUの限界を超えて、胸を痛め続け、心配し続け、混乱して……。
所長、コンソールのボタンを押す。好子は楽な姿勢になり、カバンを落とし機械的に前を向く。目も開くが、そこにはもう光はない。
正体不明の新人アイドル相保好子! 清純にして可憐。
しかし、その瞳には世の男性をとりこにして止まない小悪魔のかがやきが! その底知れぬ彼女の本性やいかに!?
そのときは、ロボくん。きみがわたしの付き人になって、ファンからのヤマほどのプレゼント両手にかかえて……
かかえてくれるあなたはもういないのよ……ロボくん……ハハハ、どうしてわたしは、こう情緒不安定なのよ……。
ロボットアーカイブスの所長が、あらわれる。
所長: 昼間お電話のあった相保さんですね。
好子: は、はい。
所長: 登録IDを、お見せいただけますか。
好子: はい、これです(ポケットからIDカードを出し、所長にわたす)
所長: (IDカードを、コンソールにかける)シリアスナンバー183699……のアンドロイドの廃棄をご希望なんですね。
(カードを受け取って、逃げるように所長の側を離れる好子)
好子: …………。
所長: お電話では、そううけたまわっておりますが。
ロボ: ハイ、廃棄デス。アチコチ寿命ガキテ、ポンコツナモンデスカラ。
好子: スクラップですか?
所長: しかたありませんね。ここまで旧式だと。
ロボ: ナルベクヤサシクオネガイ……シマス。
所長: いいわよ(好子に)よろしいですね。
好子: …………。
ロボ: 好子……。
好子: ロボくん……。
所長: では、ロボくんむこうへ。
ロボ: ハイ(所長に示された上手方向に歩き出す)
好子: ロボくん!
好子、思わずロボに駆け寄ろうとする。所長の前を通ったとき、所長はコンソールを好子の首にあてる。
「ピューン」と電子音をさせて、そのままの姿でフリーズ。進一、つまり今までのロボ、ゆっくり振り返る。
その動きは人間のそれである。
進一:(いままでのロボ) 好子……。
所長: 終わりました。
まり子、息を切らせてやってくる。
まり子: 進ちゃん……。
進一: 終わったよ。
進一、好子のまぶたを閉じてやる。
進一: 最後まで、自分を人間だと思って……ずっと、ずっと、ぼくを心配し続けてくれた。
CPUの限界を超えて、胸を痛め続け、心配し続け、混乱して……。
所長、コンソールのボタンを押す。好子は楽な姿勢になり、カバンを落とし機械的に前を向く。目も開くが、そこにはもう光はない。