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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・6

2019-04-26 15:45:13 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・6 

  

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。

時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター

 
好子: もうロボットもアンドロイドも買わないよ。
ロボ: 無理スンナヨ。ボクヨリイイアンドロイド見ツケレバイイ。
好子: だって、もういやだ。こんなお別れ……。
ロボ: 人間ダッテイツカハ死ヌ。ロボットダッテ同ジ。
 人モロボットモ、オタガイタスケアイ、思イアッテ生キテイクンダ。
 ソノトキソノトキ、セイイッパイ生キテ、ソシテイツカ別レノ日ガヤッテクル。
 ソノ日マデ、ミンナ宇宙ニ一ツダケノ花デイレバイインダヨ。ソモソモ人生トイウノハ……。 
好子: ハハ、やっぱ、ダサイ。入学式の校長先生の話みたいだよ。
ロボ: 好子ンチハ、家族ミンナ寂シガリダカラ……気ハヤサシクテ、チカラモチノアンドロイドガ必要ダネ。ソウシナヨ。
好子: そうね。とびっきりカッコよくて、男っぷりのいいアンドロイドにするわ。
 鼻筋が通って、声は品のいいバリトン。休みの日には白馬に二人乗りして、湖のほとりを散歩すんの。
 そいで、宿題みんなやってくれて、お掃除、洗濯、お買い物、ぜーんぶしてくれて。アルバイトも行ってくれて、
 月に百万くらい稼いでくれる! そんなアンドロイドが……アンドロイドが……いいわけないじゃん! 
 人もアンドロイドも見せかけのカッコよさじゃないよ。
 たとえ短足で、ぶさいくでも、いっしょに暮らして、心が通いあってることが大切なんじゃない。
 そんなアンドロイド……ロボットは、ロボくん一人しかいないんだもん。
 わたしにも、お母さんにも、ロボくん一人しかいないんだもん……!
ロボ: 好子チャン……。
好子: なーんちゃってね。ね、けっこう感動的なクライマックスになったじゃん。
 あたし、演劇部に入ろうかなあ。
 それとも、そこらへんのオーディション受けまくって、アイドルにでもなっちゃおうかしら。
 正体不明の新人アイドル相保好子! 清純にして可憐。
 しかし、その瞳には世の男性をとりこにして止まない小悪魔のかがやきが! その底知れぬ彼女の本性やいかに!? 
 そのときは、ロボくん。きみがわたしの付き人になって、ファンからのヤマほどのプレゼント両手にかかえて……
 かかえてくれるあなたはもういないのよ……ロボくん……ハハハ、どうしてわたしは、こう情緒不安定なのよ……。

 ロボットアーカイブスの所長が、あらわれる。

所長: 昼間お電話のあった相保さんですね。
好子: は、はい。
所長: 登録IDを、お見せいただけますか。
好子: はい、これです(ポケットからIDカードを出し、所長にわたす)
所長: (IDカードを、コンソールにかける)シリアスナンバー183699……のアンドロイドの廃棄をご希望なんですね。
 (カードを受け取って、逃げるように所長の側を離れる好子)
好子: …………。
所長: お電話では、そううけたまわっておりますが。
ロボ: ハイ、廃棄デス。アチコチ寿命ガキテ、ポンコツナモンデスカラ。
好子: スクラップですか?
所長: しかたありませんね。ここまで旧式だと。
ロボ: ナルベクヤサシクオネガイ……シマス。
所長: いいわよ(好子に)よろしいですね。
好子: …………。
ロボ: 好子……。
好子: ロボくん……。
所長: では、ロボくんむこうへ。
ロボ: ハイ(所長に示された上手方向に歩き出す)
好子: ロボくん!

 好子、思わずロボに駆け寄ろうとする。所長の前を通ったとき、所長はコンソールを好子の首にあてる。
 「ピューン」と電子音をさせて、そのままの姿でフリーズ。進一、つまり今までのロボ、ゆっくり振り返る。
 その動きは人間のそれである。

進一:(いままでのロボ) 好子……。
所長: 終わりました。

 まり子、息を切らせてやってくる。 

まり子: 進ちゃん……。
進一: 終わったよ。

 進一、好子のまぶたを閉じてやる。

進一: 最後まで、自分を人間だと思って……ずっと、ずっと、ぼくを心配し続けてくれた。
 CPUの限界を超えて、胸を痛め続け、心配し続け、混乱して……。

 所長、コンソールのボタンを押す。好子は楽な姿勢になり、カバンを落とし機械的に前を向く。目も開くが、そこにはもう光はない。   

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高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・019『江ノ島・2』

2019-04-26 13:44:27 | 小説

魔法少女マヂカ・019  

『江ノ島・2語り手・友里 

 
 
 えと……あの……服着てもらえませんか。
 
「え、どうして?」
「だって、海水浴のシーズンじゃないし、いや、シーズンだって素っ裸って人はいませんから」
「江ノ島の弁天様って素っ裸って決まってるよ」
「え、いや、他の人の目がありますから……」
「時間が停まってるからいいじゃない」
「でも、いつ動き出すか分からないし、ひょっとしたら時間が停まっても見えてるかもしれないし……だいいち、波は打ち寄せてるから、ちゃんと時間が停まってるのかも」
「あ、そっか……」
 
 ポロローン
 
 弁天様が琵琶を一掻きすると、ゲーム画面がフリーズしたみたいに波が停まった。当然なんだろうけど波の音もカットオフしてしまい、磯臭さも消えてしまった。
「え……あ、あ……」
「臭いだって、いろんな微粒子が飛んでるのを吸い込んで感じるんだからね、停まってしまうと、微粒子を吸い込まなくなって、こうなっちゃう」
「えと……じゃ、波だけは」
 
 ポロローン
 
 
 潮騒が戻って、波も打ち寄せるようになった。
 しかし、切れていたスピーカが急に回復したみたいに、いきなりのカットインなので、たじろいでしまう。
「ハハ、やり直し」
 
 ポロロ~ン
 
 ドップ~ン!!!
 
 マックスの波音がカットインしてビックリしてしまった。
「ごめんごめん、波音の調整なんて、頼朝くんが北条政子を口説き落とす時にやって以来だったんでね……これくらいかな?」
 
 ポロ~ン
 
 今度は静かにフェードインしてきたので、やっと落ち着ける。
 弁天様のコスも、今どきのジーンズにカットソーに変わって、やっと心臓のドキドキも収まった。
 
「えと、弁天様が、なんのご用なんでしょうか?」
「目と鼻の先で落ち込まれてると気になるのよ、ほら、わたしのお堂の真ん前でしょ」
 弁天様が指差した先、海を隔てた江ノ島の中腹に江の島弁天の甍が見える。
「それに、友里ちゃんのご先祖も、ずっと信仰してくれてたしね。江戸時代にはけっこう寄進もしてくれたしね。カスタマーサポートって感じでもある」
 
 ポロ~ン
 
「そうなんですか」
「友里ちゃんは構えすぎで過敏すぎなのよ。もっと普通でいなきゃ」
「普通ですか……普通って難しいです」
「でもね、構えすぎてると、さっきの波の音みたいに失敗するよ」
「でも……」
「テンプレート設定をやってみよう」
「テンプレート?」
「うん、手伝ってあげるから、やってみ」
 
 ポロ~ン
 
 琵琶の一掻きで、目の前にツールバーが現れた。
 
 ピアノの鍵盤の十倍ほどのフェーダーがあって、その上のインジケーターが並のように揺れている。
 
「説明してると長くなるから、わたしが示すフェーダーを下げてごらん」
 
 弁天さんが指を動かすと、数十個のフェーダーが点滅し始めた。
 
「点滅が収まってグリーンに変わるところまでやってみ」
 
「は、はい」
 
 指示に従って操作する。五つほど調整の難しいものがあった。ストライクゾーンが極端に狭く。なかなかドンピシャにならない。
 つい、スマホかタブレットの要領になってしまい、指で画面を大きくしてしまう。すると、目盛りの間隔が広がって、うんと調整がしやすくなる。
 
「……こんなもんでいいですか?」 
 
「おっけおっけ。これで必要以上に構えたりはしなくなるから。それと……」
 
 弁天様は、違う画面を呼び出した。
 妹が事故に遭った東池袋の道路だ……わたしが歩いている。お母さんと妹を見つけて……逃げずに、そのまま歩いて行く。
 わたしの横を、車が追い越して、同時に子犬を追いかけて妹が飛び出す。
 
 危ない!
 
 わたしの声は間に合わずに妹は撥ねられてしまった。
 
「分かったかな、友里ちゃんが通りかかっても間に合わないのよ。友里ちゃんは自分で思うほど反射神経良くないからね。今のだって……ほら、妹の飛び出しに気づいて声をあげるまで二秒近くかかってる」
「そうなんだ……」
「たいていの人間はこうなるから、あまり気に病まないでね」
「は、はい」
「次は、家族の問題ね。ほら、あそこを見て」
 
    「龍連の鐘 時間」の画像検索結果
 
 弁天様が指差した砂浜には見覚えのある『龍連の鐘』が立っていた。金の前には南京錠を着ける鉄柵まで用意されている。
「あれって……」
 江ノ島の対岸にあるはずのないものにビックリして振り返ると、弁天様の姿は無かった。代わりに――YOUKAI――と苗字を彫り込んだ南京錠が落ちていた。
 
「ねえ、こっちおいでよ!」
 
 いつのまにか時間が動き出して、龍連の鐘のところに両親と妹、妹が千切れそうなくらいに手を振って、わたしを呼んでいる。
 
「あら、友里ちゃん、準備の良いこと!」
 
 お母さんは南京錠をわたしが用意したものと思って喜んだ。
 
「新名所かもな。ほら、恋人に限らず、全ての人の繋がりを豊かにしますと書いてある」
「ひょっとして、うちが一番乗りかもよ!」
 妹がピョンピョン跳んで喜ぶ。
 
「じゃ、さっそくやってみようか!」
 
 お母さんの提案で、鐘を鳴らして南京錠を掛けた。
 
 いつのまにか、はるか伊豆半島の向こうに夕日が没しようとしていた……。
 
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・013『兵員食堂の八宝菜ランチ』

2019-04-26 06:44:28 | ノベル2

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・013
『兵員食堂の八宝菜ランチ』  
         



 サクラとテルミはしげしげとランチを見つめている。

 時空戦艦カワチは海自や旧海軍同様に八時間ずつの三直制だ。
 深夜から午前の三直を終え、二直で自由時間のテルミと兵員食堂にやってきたサクラだ。

 昨日からレプリケーターが休止になり、烹炊所で作られるアナログ飯に切り替わったのだ。
 新任の航海長が烹炊長を兼務し、補給科の乗員を使って日に五食の艦内食を作っている。

「すごいわよ、きくらげの厚みが微妙に違う」
「うん、ご飯粒が最大で15粒も違いがある」
「なると巻きの斜め切りも最大1・5度の違いを付けてある」
「なんか、ワクワクするわね」

 300名の乗員はガイノイドであるが、皮膚や脂肪層は生体組織でできており、人間同様に食事で栄養補給しなければ衰えてしまう。
 勤務に合わせて日に五回の食事が出されるが、レプリケーターが合成したもので、同じメニューであればコピ-した写真のように同じであった。
 だから、同じ八宝菜ランチでも一つ一つ異なっている。
「ん、これなんだろ?」
 しゃくったレンゲの中に柔らかいグミのようなのが入っていた。
「……半溶状態の片栗粉の固まり」
 サクラが成分分析すると、テルミは感動してしまった。
「……すごい、食感と味加減が違って、なんだか得した気分になる!」
「豚肉の脂が多いとこって濃厚な旨味ねえ!」
 一口、一すくいずつ感動する二人である。
 いや、食堂のあちこちで感動やら感嘆の小声が上がっている。

「さっさと食べなさいよ! 冷めてから食べたら不味くなるでしょーが!」

 田中航海長が烹炊長の前掛けをして怒った。
「でも、航海長、出てくる糧食がみんな微妙に違うので、とっても新鮮なんです!」
「夕べのすき焼き定食も並列化の意味がないくらい違いがあって、とても興味深いです!」
「それが食事というものさ。三百人いたら、三百通りの味わいがあっていいものよ。単なるエネルギー補給じゃないからね」
「長い航海、変化がなくちゃ続かないよ……あんたたち、微妙に顔が違うね」
 乗員のガイノイドたちは同一のロットなので、スペックも外見もみんな同じなのだ。
「艦長付き従員になったので、ヘッドだけ換装したんです。生身の艦長のお世話のため個性化です」
「千早副長の指示ね」
「はい」
「これから、他の乗員もゆっくり個性が出てくるわよ。糧食も同じように作って微妙に違うようにね、一昨日まで居た学食じゃ違いが出ないように苦労したけどね、カレーなんか肉は別にのっけて数を合わせたりね。でも肉も一個一個違うから、高校生らしく小さいとか固いとかの不満が出てたけどね」
「まだ、地球の周回軌道からは出ないんですね」
「あ、うん。おかげで航海科はほっといて烹炊に専念できるからありがたいけどね」
 航海長はモニターに映る地球を見ながら腕組みをした。

 男っぽい姿勢だけど、これが航海長のリラックスした時の姿勢だとサクラは思う。

 二重顎で、バストウェストヒップの差が5センチもないオバサン体形だけど、アナライズすると若いころはとてもキュートな女性だったと知れたテルミ。
――その情報は並列化しないほうがいいわよ――
 サクラから思念が届く。
――オッケー、了解――

 あ、わたしたちって並列化をオフにできるんだ。

 八宝菜とは別の感動をしたテルミであった……。    
 
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高校ライトノベル・時かける少女・80『銀河連邦大使・1』

2019-04-26 06:33:11 | 時かける少女
時かける少女・80 
『銀河連邦大使・1』  
        




☆………銀河連邦大使

「嫌なやつと出会いそうやな……」

 チャートを見ながらマーク船長が呟いた。
「誰、嫌なやつって?」
「銀河連邦のオフィシャルシップ。無視してくれたらええねんけどな。バルス、不自然やない航路変更はでけへんかか?」
「1パーセクしか離れてません。航路変更は不自然です」
「無視してくれよな。こっちはイイ子にしてるさかいに……」

 直後、大使船がモニターに映し出された。緑の船体に連邦のマークが描かれている。

「カメラを強制指向させられました」
「ご挨拶で済んだら、ええんやけど……」
 やがて、モニターに絶世の美女が現れた。
「こんにちは、マーク船長。大使のアルルカンです。情報交換させていただければありがたいんですけど」
「敬意を持って……でも、ボロ船ですので、お越し頂くのは気が引けます」
「スキャンしているので、そちらの様子は分かっています。歴戦の勇者の船らしい風格です。ただ、手狭なようなので、私一人でお伺いします。いかがでしょう?」
「大使お一人でですか」
「ヤボな、ガードや秘書は連れて行きません。あと0・5パーセクで、そちらに行けます。よろしく」
「心より歓迎いたします」

 そこで、いったんモニターは切れた。

「切れましたね」
「あ きれましたかもな。みんな、ドレスアップしてこい」
 みんな交代で着替えに行った。
「ミナコのも用意してあるから、着替えてくれ。ポチもな」
「めんどくさいなあ」
 そう言いながら、ポチもキャビンに向かった。
 やがて、みんなタキシードに似たボディスーツに着替えた。体の線がピッチリ出るのでミナコはちょっと恥ずかしかった。
「でも、大使ってきれいな人なんだ……」
「あれは、擬態や。赴く星によって、外交儀礼上替えてるそうやけど、オレはあいつの個人的趣味やと思てる」
「本来の姿は?」
「解放されたら教えたる。予備知識を持つとミナコは態度に出そう……」

 また、モニターに大使が現れた。

「ただ今より、そちらに移ります。タラップの横に現れますのでよろしく」
「お待ち申し上げております」
 全員がタラップに注目する中、大使が現れた。モニターに映る倍ほど美しかった。
「こんにちは、みなさん。連邦大使のアルルカンです。ベータ星からの葬儀の帰りなので、喪服で失礼します」
 大使は帽子を被れば、まるでメーテルのようだった。長いブロンドの髪と切れ長の黒い瞳が印象的だ。
「いっそう艶やかになられましたな、大使」
「ありがとう船長。でも擬態だから……あなたにはオリジナルを見られてるから、ちょっと恥ずかしいですね」
「航海日誌、ダウンロードされますか?」
「いいえ、直接船から話を聞きます」
 大使は、ハンベから直接ラインを伸ばし、船のCPUの端末に繋いだ。
「……そう、苦労なさったのね。マクダラと戦って、クリミアに……この情報は戦歴だけコピーさせていただきます。惜別の星……また墓標が増えていますね……三丁目じゃ、ホホ、いいことなさったわね……コスモス、あなた体を奪われたのね……」
「ええ、でもバックアップで、復元してもらいましたから」
「かわいそうなコスモス!」
 大使は、コスモスをハグした。とても悪い人には見えない。
「ありがとうございます、大使」
「ロイド保護法の改正を連邦に願ってみるわ。もっとも、連邦といっても、まだまだ名ばかり。少なくとも地球での地位向上には努力します」
 それから、大使は再び船との会話を再開した。

「船も、はっきりした目的地を知らないのね……クライアントの情報も無いわ」
「そういう契約なので」
「……このお二人を、私の船にご招待してもいいかしら」

 大使は、ミナコとミナホに目を付けた……。
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