時かける少女・78
『スタートラック・18・コスモス星・1』
『スタートラック・18・コスモス星・1』
昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になってしまった……目覚めると、今度は西暦2369年であった。ファルコン・Zでの旅、今度は「コスモス星」だった。
☆………コスモス星・1
三丁目星を出て一週間になる。コスモスに元気がなくなってきた。
「コスモス、ちょっと寝てるか?」
「コスモスさん、具合悪いんですか?」
「……寝ても無駄かもしれません」
「大丈夫や、シールド張っとくよってに」
「シールドも無駄かもしれません……」
「起きてたら確実に危ないで」
「ですよね……では失礼します」
コスモスは、ため息一つつくと、キャビンの一つに入っていった。
「バルス、コスモスのキャビンを封鎖しとけ」
「了解……封鎖」
一階下のキャビンブロックで、重々しくキャビンを封鎖する音がした。むかし検索して知った火葬場の二重の扉をしめる音に似ていた。
「ミナホ、コスモスの変わりにシートについてくれるか」
「はい、準備はしておきました」
「次の星まではオートやさかい、特別にすることは無いと思うねんけどな」
「一応、コスモスさんのスキルとメモリーはコピーしてあります」
「いつの間に?」
「船長が、悩み始めてから……」
「見透かされてたか。ほな二日前からやな」
「いいえ、五日前から……」
「そんな前からか……」
「船長は、自覚なさっている以上に、クルーの心配してるんですよ」
「さいでっか……」
「言っておきますけど、コスモスさんが過去にやった判断や行動はとれますけど、それを超える事態には対応できないかも……」
マーク船長は沈黙してしまった。
「どうしても寄らなきゃならない星なの?」
沈黙を破って、ミナコが咎めるように聞いた。
「次のコスモス星で、エネルギーを補充しないと、目的地に着けねえんだよ」
ポチが、人の言葉で喋った。
「じゃ、その目的地ってのは……?」
「分かんねんだよ。1000光年や、そこいらは飛べるけど、おいらの予感も、船長の勘も、もっと先だって言っている」
「この先、800光年は、燃料を補給する星はあらへんよってな」
「じゃ、なぜコスモスさん、閉じこめちゃうの?」
「あいつの素材はコスモス星の鉱石からでけてる。着いたら出て行って帰ってけえへんからな」
「コスモス星の勢力圏に入ります」
「シールド、全周展開」
バルスがシールドをマックスに張った。
「シールド言うのんは、外からの影響は防げるけど、中から出て行くのは阻止でけへんよってにな」
三丁目星を出て一週間になる。コスモスに元気がなくなってきた。
「コスモス、ちょっと寝てるか?」
「コスモスさん、具合悪いんですか?」
「……寝ても無駄かもしれません」
「大丈夫や、シールド張っとくよってに」
「シールドも無駄かもしれません……」
「起きてたら確実に危ないで」
「ですよね……では失礼します」
コスモスは、ため息一つつくと、キャビンの一つに入っていった。
「バルス、コスモスのキャビンを封鎖しとけ」
「了解……封鎖」
一階下のキャビンブロックで、重々しくキャビンを封鎖する音がした。むかし検索して知った火葬場の二重の扉をしめる音に似ていた。
「ミナホ、コスモスの変わりにシートについてくれるか」
「はい、準備はしておきました」
「次の星まではオートやさかい、特別にすることは無いと思うねんけどな」
「一応、コスモスさんのスキルとメモリーはコピーしてあります」
「いつの間に?」
「船長が、悩み始めてから……」
「見透かされてたか。ほな二日前からやな」
「いいえ、五日前から……」
「そんな前からか……」
「船長は、自覚なさっている以上に、クルーの心配してるんですよ」
「さいでっか……」
「言っておきますけど、コスモスさんが過去にやった判断や行動はとれますけど、それを超える事態には対応できないかも……」
マーク船長は沈黙してしまった。
「どうしても寄らなきゃならない星なの?」
沈黙を破って、ミナコが咎めるように聞いた。
「次のコスモス星で、エネルギーを補充しないと、目的地に着けねえんだよ」
ポチが、人の言葉で喋った。
「じゃ、その目的地ってのは……?」
「分かんねんだよ。1000光年や、そこいらは飛べるけど、おいらの予感も、船長の勘も、もっと先だって言っている」
「この先、800光年は、燃料を補給する星はあらへんよってな」
「じゃ、なぜコスモスさん、閉じこめちゃうの?」
「あいつの素材はコスモス星の鉱石からでけてる。着いたら出て行って帰ってけえへんからな」
「コスモス星の勢力圏に入ります」
「シールド、全周展開」
バルスがシールドをマックスに張った。
「シールド言うのんは、外からの影響は防げるけど、中から出て行くのは阻止でけへんよってにな」
「中から?」
「見ろよ、ミナコ。コスモス星の部分拡大だ」
ポチがアゴをしゃくった。モニターには、何百隻という宇宙船が着地しているのが分かった。中には、相当古い船もいて、半ば朽ち果てていた。
「十分後周回軌道に入ります」
「よし、全パッシブ閉鎖、各自のCPUも全てのアクセスを切れ、みなこ、ハンベも落としとけ……」
「え、ハンベまで……」
「これだけの人数や、必要もないやろ」
ハンベはハンドベルト型携帯端末で、昔のスパコンの十倍の能力がある。この時代の人間にはケ-タイのような必需品である。ミナコは不承不承ハンベを外した。
「コスモスの機能はスリープしてるやろな?」
「動力ごと落としています。再起動には丸一日はかかりますね」
周回軌道に入り、ファルコン・Zの着陸に向けてのチェックが行われる。みなパッシブ閉鎖しているので、チェックはいちいち口頭で行われた。
そして、ファルコン・Zは着陸態勢に入った……。
「見ろよ、ミナコ。コスモス星の部分拡大だ」
ポチがアゴをしゃくった。モニターには、何百隻という宇宙船が着地しているのが分かった。中には、相当古い船もいて、半ば朽ち果てていた。
「十分後周回軌道に入ります」
「よし、全パッシブ閉鎖、各自のCPUも全てのアクセスを切れ、みなこ、ハンベも落としとけ……」
「え、ハンベまで……」
「これだけの人数や、必要もないやろ」
ハンベはハンドベルト型携帯端末で、昔のスパコンの十倍の能力がある。この時代の人間にはケ-タイのような必需品である。ミナコは不承不承ハンベを外した。
「コスモスの機能はスリープしてるやろな?」
「動力ごと落としています。再起動には丸一日はかかりますね」
周回軌道に入り、ファルコン・Zの着陸に向けてのチェックが行われる。みなパッシブ閉鎖しているので、チェックはいちいち口頭で行われた。
そして、ファルコン・Zは着陸態勢に入った……。