大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・2

2019-04-20 18:39:00 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・2

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。
  


時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター


▼ 上手から好子が現れる。百年前のセーラー服を着ている。
 舞台中央あたりまで来ると、カバンとポニーテールをぶんまわして振り返る。顔が怖い。
 上手から、レトロな機械の音をさせて、ロボットが現れる。
 一見ふつうのウダツのあがらない青年風、
 腕に旧式ロボットであることを示すパーソナリティーモジュールを付けてている。

好子: ったく。人より遅いロボットなんて聞いたことないよ!
ロボ: ソンナコト言ッタッテ、ポンコツナンダカラ、ボクハ。
好子: そんな弱気でいるから、ますますポンコツになってしまうんじゃない。しゃきっとしなさいよしゃきっと。
ロボ: ダッテ、アッチコッチ、ガタガキタカラ、仕方ナイヨ。
 膝ノ間接は、ベアリングガ減ッチャッテルシ。シリンダーカラオイルハ漏レテルシ。
 バッテリーは六十パーセントシカチャージデキナイシ。アイカメラハ、レンズニカビガ生エテルシ。
 腰ノボルトハヒズンデシマッテ、歩クタンビニイヤナ音ガスル。
 人工皮膚モ、アチコチ剥ゲテ、ミットモナイッタラアリャシナイ。
 ダイタイ、モトハト言エバ、オーナータル好子クンガ、手入レヤ、メンテナンスヲ怠ッタカラデアッテ、
 コレハロボットオヨビアンドロイド愛護法ノ精神ノナンタルカヲ理解シテイナイカラデ……。
好子: それだけしゃべれて、どこがポンコツなのよ。
ロボ: 言語サーキット一番ジョウブ。ボディーノポンコツ関係ナイ。好子モヨクシャベル。
好子: よけいなお世話。わたしがしゃべるのは必要があるからよ。
ロボ: コナイダモ、マリチャント電話デ三時間二十五分三秒モシャベッテタ。アレ、ナンノ必要カ?
好子: 友達のこととか、いろいろ大事な話があるの!
ロボ: 大事ナ話、直接会イニイケバイイ。マリチャンチハ歩イテ五分。走ッテ二分二十秒。
好子: 電話むきの大事な話もあるの。
ロボ: ソレナラ立体電話ニスレバイイ。
好子: あれは通話料が高いから、遠慮してんの。お父さんに悪いでしょ。
ロボ: NTTコドモガ、コドモムキノ安い立体電話ハジメタノ知ッテルクセニ。
好子: でも、ふつうのポッドの三割増しよ。やっぱ公務員の娘としては考えちゃうでしょ。
ロボ: ノンノンノン、知ッテルヨ。コノゴロ普通ノポッドノ方ガハヤッテルノ。
好子: わたしは……。
ロボ: 立体電話で長話スルト、ボロガデチャウノヨネ。
 思ワズ、ハナクソホジッタリ、水虫カイタリ、寝ッコロガッテ行儀ワルクシタラ、パンツガ見エタリ。
 ソウイウミットモナイトコ見ラレズニ長電話シタイダケナノヨネ。
好子: あのね……。  

 この時、遠くから好子を呼ぶ声

まり子: 好子~!
ロボ: ア、ウワサヲスレバ……。
好子: まりちゃん!
まり子: よかった、追いついて。好子んちへ行ったら、ロボくんと外へ出たっていうから。
好子: うん。
まり子: たぶんここかなって。あ、好子の浪速女学院のコス! 
 ロボくんはわたしと同じ大阪府立商業だ! ハハ、一番人気だもんね。ロボくん後ろ姿見せて。
 うんいいなあ、やっぱ府立商業は。いよいよ……?
好子: え?
ロボ: イヨイヨ?
好子: なんでもないよ、なんでも……。

 間

ロボ: フフフ……。  
好子: なによ?
ロボ: ポッドナラ、アンナニシャベルノニ。
まり子: そうね……。
好子: ……なにか話そうか?
まり子: え、いいよべつに……。
ロボ: ヘンナノ……。
まり子: ちょっと顔が見たくなっただけだから。
ロボ: 二人トモヘンダ……。
二人: そう?
ロボ: ソウダヨ。
まり子: わたし、一回りしてくるわ。もう来月は閉鎖だから、ここ。じゃあね、ばいばい。
ロボ: バイバイ……。
好子: ……。

 気づかわしげにロボに視線を残しながら、走り去るまり子。しばらく黙って歩く。 
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高校ライトノベル・時かける少女・74『スタートラック・14』

2019-04-20 06:57:01 | 時かける少女

時かける少女・74 

『スタートラック・14』             

 ☆……三丁目の星・2
 

「とりあえず、アメリカンポップスでいこうと思うの」
 

 ミナホが言ったとき、陽子の方がピンときた。

「あー、コニーフランシスの『VACATION』とか!?」

「そうそう、アメリカでも流行りだしたばっかり。それを先取りして、まずブームを作るの」

 ミナコはハンベからロードして、すぐにアメリカンポップスを理解した。陽気でテンポが良くて、なによりハッピーになれそうなリズムがいい。

 三丁目星の日本では、当時は歌とは、じっと立って、美しい歌声をみんなで静かに観賞するものだった。

 その一方ではロカビリーが流行り、一部の若者には絶大な人気があったが、当時としては過激すぎるスタイルに、大方の大人は眉をひそめ、これにのめり込む若者は不良のように見られていた。

 そこで、少しお行儀がよく、普通の若者でもスッと入ってこれて、テレビを通してお茶の間に流れても違和感が少ないアメリカンポップスに的を絞ったのである。むろん考えたのはマーク船長。ミナホは、それをロード……するのでも、プログラムされたわけでもなく、共感してリードしているのである。
 

 陽子は、実家の蕎麦屋からやって来たままのセーラー服である。しかし、そのリズム感や音楽の感性の良さは顔に出ている。  小顔で、目がパッチリとして、ポニーテールがよく似合っている。

「あなたは、本名の伊藤陽子、ニックネームはヨーコ。わたしとミナコは……ザ・チェリーズの双子デュオでいくわ」

 ミナホの言葉の十分後には、プロダクションのスタジオで選曲に入るという、ハイスピードな展開になった。
 

 その週末、土曜の昼下がり、新宿の駅前に中型のトレーラが荷台同士でドッキングした。
 

 トレーラーのドテッパラにはマークプロ・ステージキャラバンと電飾付きで書かれ、それがパカっと開くと、十メートルほどの間口のステージが出来上がった。

――なんだ、なんだ?――  

 土曜を半ドンで終わった学生やサラリーマンBG(当時はOLという呼称ではなかった)が、歩を緩め、やがて立ち止まり、ステージを取り囲んだ。

 トレーラーの中には、ステージのセットや照明、PAの機材がくみこまれていて、あっと言う間にライブの用意が調う。

 このトレーラーステージは二十一世紀に本格化したもので、この時代には存在しない。
 

 むろんマーク船長やバルスが、ジャンクから作り上げたものである。音響はトレーラー自体にパネルスピーカーが張られ、タイヤのホイールが重低音のウーハーになっている。 LEDの照明に、ドライアイスがモクモク。エフェクトスモークにレーザーが幾筋も際だって、ペチコートたっぷりのストライプの衣装で、陽子が『VACATION』を歌い出す。

 二番になると、トレーラーから四メートルほどの花道が延び、陽子は花道を囲む観衆の中に入っていく。 ステージには、ホログラムのバックダンサーが現れ、観客の度肝を抜く。 陽子は、それに負けない歌唱力と、魅力で観客を引きつける。

 陽子の次は、ミナコとミナホのデュオ。陽子とは交互に歌って観客を飽きさせない。
 

 新宿の駅前は、またたくうちに一万人以上の観客で満たされる。一応警察には駅前の使用許可はとってあるが、急遽出動した交通整理の警官隊はいい顔をしない。

「それでは、みなさん、最後の曲です『ソレイユ・デ・トウキョウ』聞いてください」
 

 くだけたポップス系の曲で、歌詞とフリが覚えやすく、三番に入ったころには見よう見まねで、体を動かす子どもたちも出てきた。

「それじゃ、みなさん。次は渋谷に行きます。新宿にも、また参りますので、よろしく!」

 三人が手を振ると、満場の拍手。
 ステージは一分ほどで、元のトレーラーに戻って、渋谷を目指した。
 

「こんな興奮生まれて初めて。NHKの素人喉自慢の百倍楽しかった!」 陽子は目を輝かせた。

「アイドルチップの力ってすごいわね!」 ミナコも感心した。

 ミナコは古典芸能としてのポップスには強いが、自分が歌って、こんなに楽しいとは思わなかった。

 アイドルチップとは、昔は脳に埋め込んだアイドルスキルのチップだったが、今はハンベを通して、脳神経そのものを、アイドルに向いた因子に組み替える。

「ふん、こんなの地球でやったら、違法行為だぞ!」 ポチが、不満げに言う。 「あら、ポチだって、違法ロイドのくせして」 「そういうコスモスだって!」
 

 その日は、そのあと、渋谷、池袋を回った。
 

 明くる日の新聞は、このトレーラーキャラバンのことで大きく紙面が割かれ、テレビやラジオでもニュースで取り上げられた。
 

 三丁目星の、音楽革命は、こうして始まった……。

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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・007『時空戦艦カワチの乗員』

2019-04-20 06:12:30 | ノベル2

 時空戦艦カワチ・007

『時空戦艦カワチの乗員』          
 

 

 三百名という乗員数はDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)と同じだ。
 

 百年前の戦艦のことはよく分からないが、乗員は千名といったところだろう。  

 それを三百人で回しているのだから、そこは宇宙戦艦……いや、時空戦艦たる所以であろう。
 

 しかし女性乗員が多い……というか、最上甲板を艦尾に歩いて出会った十数名の乗員は全て女性である。
 

「女が多いなあ……」

「乗員は全てガイノイドです」

「ガイノイド……女性タイプのアンドロイドのことかい?」

「個体識別のためルックスは変えてありますが、首から下は全員同じです」

「人間は二人だけか……」

「いえ、艦長一人だけです。残念ながら、わたしは人間ではありませんから」

「あ、そうだったな」

「長く過酷な航海が予想されますので、乗員はアンドロイドで編成されています。女性であるのは男性に比べて耐久力があるからです、特にハーレムを狙ったからではありません」

 真面目な顔で言うのがおかしい。

「アンドロイドでも女が強いんだね」
 

 ラッタルを下りて第一中甲板に下りて喜一はビックリした。首のない乗員が歩いているのだ。
 

「あなたたち、艦長が乗艦されたんです。ボディーだけで歩いちゃだめでしょ」

「すみません、ヘッドをメンテナンスしているもので」 「任務の都合で、フェイスのバージョンアップもしております」 「ただいま装着に向かうところです」  

 首が無いせいか声が小さい。

「早くしなさい」 「「「はい!」」」

「見苦しいものをお見せしました」

「ビックリはしたけど、まだ腑に落ちないよ」

「すみません、慣れていただくしかありません。このシチュエーションは父のイメージなんです」  

 父と言われて一瞬喜一の思考は停止してしまった。この二時間ほどのあれこれは常識で受け入れられるようなものではない。千早の父が楠正成を指すのだと思いが至るまで数秒を要した。

「正成さんはいるんだろうか?」

「今は空気みたいなものです。さ、こちらが艦長室です」
 

 カワチには旗艦設備があり、第一中甲板最後尾は長官室と長官公室になっている、その一つ手前が艦長室だ。護衛艦の艦長室よりも広く高級でクラシックな造りになっている。  

 喜一は戸惑った。
 

 戸惑いの原因は幾つもある。喜一自身十年以上戦闘艦から離れていたこと。カワチが百年も昔の艦艇であること。にもかかわらず、時間が停まったり花園ラグビー場の上空に浮いたこと。楠正成の娘と称する娘の友子そっくりな少女がエスコートしているようでありながらソフトに命じられているような感じが拭えないこと。さらに、核ミサイルが飛んでくるような悲劇的な状況の原因が河内というか大阪の衰微にあること。

 そして、この宇宙にはもう一つの地球と大阪が存在していて。異世界のそれを含めた大阪の救済が全宇宙の平和に繋がる……どれも「はいそうですか」と受け入れられるようなものではないのだ。
 

 その時、艦長室のドアがノックされた。
 

「艦長室従員メグミ以下三名、艦長用被服を持って参りました」

「入れ」

 三人の乗員が入って来た。喜一は三人に目をやった。

 「メグミ一曹、サクラ二曹、テルミ一士だね」

 さっき廊下で出会ったヘッドレス達だ。喜一は胸のネームプレートで覚えてしまっていた。

「ありがとうございます、覚えていてくださったんですね」

「うん、名前に相応しい首……ルックスになったね、声も大きい」

「「「ありがとうございます」」」

 年頃の娘らしい含羞の有る笑顔になった。こういう表情ができるところがバージョンアップなのかなと思う。

「第二種軍装をお持ちしました、お召し替えを手伝います」

 表情を引き締めてメグミ一曹が進み出る。サクラとテルミはその他の軍装をクローゼットに仕舞う。
 

 袖を通して気づいた、軍装は旧海軍の大佐の仕様になっていた。
 

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