大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・1

2019-04-19 15:22:45 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・1

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。

  


時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター



 遠く踏み切りの音。かすかに懐かしい街のさんざめき。それらの音の中、幕上がると、みごとに何もない。
 ややあって里香子が百年前の女子高生の制服にマイクを持ち、無対象の自転車を曳いてあらわれ、舞台奥で自転車を止める。
 カシャンとスタンドをたてる音がする。



里香子:  テスト、テスト……ワン、ツー。ワン、ツー……マイクオーケー。カメラさんいいかなあ……2カメさんテカってない……オーケーね(無対象で店のシャッターを開け、自販機で缶コーヒーを買う)あとは……VRモデムのチェック。

 ADのチャコが息を切らせてやってくる。携帯端末(以下ポッド)を手に、里香子と同じ制服姿。

チャコ: 先輩! 里香子先輩! 大変、大変!
里香子: どうしたの。リボン曲がってるよ。
チャコ: モデムがいかれちゃって(携帯端末をミラーモードにして、リボンを直す)
里香子: え。サーバーと切れてんの?
チャコ: いま、ヤマさんが必死で直してます。
里香子: だって舞台はちゃんと……(客席への階段を数段降りてみる)。あ、やだー、まるっきりの裸舞台じゃん!(舞台にもどる)でも、舞台じゃちゃんと見えてるわよ。
チャコ: 舞台用のモデムは生きてるんです。
里香子: あげる(缶コーヒーをチャコに渡し、スマホによく似たポッドを出す)ヤマちゃん、直せる……わかった。
チャコ: でも先輩、なんでわたしたちまでこんなコスプレしなきゃいけないんですか。
里香子: しかたないでしょ。制作費安いんだから。それにロードしてるセットはメモリアルタウンのだから、規定で昔のコスじゃないと入れないの。
チャコ: でも、ナニでしょ、ここ……。
里香子: どうせ出戻りの局アナ。でもね、このメモリアルタウンには命かけたのよ。
チャコ: わたし、好きですよ。この百年前の町。
里香子: ちょっとチグハグなとこもあるけどね。モデルが、「サザエさん」と「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」それにちょこっと「おかみさん、時間ですよ!」
チャコ: それ知りません。
里香子: ほら、あそこの煙突。「松ノ湯」って書いてあるでしょ。
チャコ: ああ……煙突にだれか登ってますね。
里香子: ああ、堺正章。その向こうに「じゃりン子チエ」の横丁があるの。大阪も東京も埼玉もごっちゃ。
チャコ: 埼玉って?
里香子: ああ、今は関東州に飲み込まれてる。ここいらも昔は大阪府っていったんだよ。
チャコ: 地歴で習いました。八十年前に関西州になったんですよね。
里香子: この制服も百年前に廃校になった大阪府立商業の制服なんだよ。
チャコ: 名門校だったんですね。
里香子: わたしのひい婆ちゃんが通ってたの。で、そのころの写メをもとにレプリカつくったの。シックで評判よかったんだよ。もっとも、廃校になってからだけどね。いいものは止めてから評価されるってか(無意識に缶コーヒーを取り、飲む)ん……ごめん。
チャコ: あ、いいえ。でも、なんか乙女チックになりますね。どうして評価しなかったかなあ、これを。でも、これ着て、あの大阪弁てへんてこな言葉使ってたんですね。「なに言うてはりまんねん。いてこましたろか」(アクセントがめちゃくちゃ)
二人: アハハハ……(チャコ、飲んでみて空、ため息をついて空き缶をゴミ箱に捨てる)
里香子: 方言ってなくなっちゃったからね。
チャコ: ……そろそろ時間ですよ(ポッドで確認)
里香子: ヤマちゃん、まだ? え、舞台のモデムと交換!? だめだよ、こっちは規格が違うし……前の失敗が今度の企画に? 笑えないよ、それって。それに、こっちまでいかれたら役者が動けなくなっちゃうよ。え、お客さんのポッドでモデムに? そんな高性能なポッド持ってる人なんかいない……。
チャコ: あ、音響もアウトだって!
里香子: え、音響も!?
チャコ: どうすんですか?
里香子: 音響をアカペラで……?
チャコ: それって……。
里香子: その方が風情が……もう、なんだと思ってんのよアナウンサーを!
チャコ: 先輩。二十秒前!
里香子: あの子……役者にも言っといてね。
チャコ: はい、じゃあ。グッドラック!(チャコ、里香子の真剣な目に気づき黙礼して去る)。
里香子: あ、十秒前(さっと会場を見渡す)五、四、三、二……みなさんこんにちは。司会の武藤里香子です。このたびメモリアルタウンからこのNOBCにもどってまいりました。NOBC、なんの略称かご存じでしょうか、ニホン、オオサカ、バンバチョウノ、チョウナイカイ……ハハハ、ウソですよ。でもこのシャレの中には、今では死語になった大阪という地名が入っています。この二十二世紀、私たち日本人は前世紀に多くの苦難を乗り越えて、新しい文化を手に入れました。スカイツリーに始まり、リニア新幹線、多目的携帯端末Jポッド。本日は、私どもの不手際でモデムが故障しまして会場のみなさんには何もない裸舞台に見えていると思います。まことに申しわけございません。もし最新型のJポッドXをお持ちの方がいらっしゃいましたら、NOBCにリンクしてくださいませ。この懐かしの昭和や平成・令和の町並みを再現しましたメモリアルタウンの舞台をご覧になれます。テレビをごらんのみなさんには中継車のモデムが生きておりますので、きれいな3Dの映像が届いていると存じます。さて……私たちが二十二世紀になって手に入れたものにロボット、アンドロイドがございます。皆さんの中にもアンドロイドといっしょにご覧の方もいらっしゃるかと存じます。この新しいパートナーは私たちの生活を助けてくれ、また癒してもくれます。しかし、私たちはこの新しいパートナーとの関係をまだ十分には築けていないのではないでしょうか。昨今ロボットやアンドロイドをめぐってのトラブルが増えてきました。そこにはわたしたちが便利さや快適さと引き替えに、前世紀に置き忘れてきた何かを象徴するものがあるような気がします。そんな問題というか、心のトゲを、実話をもとに、劇場中継という放送の原点に立ち返えり、このメモリアルタウンを舞台に再現してみました。会場の皆さん。テレビをごらんの皆さんもごいっしょにお考えいただければ幸いです(礼をして退場)。
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高校ライトノベル・せやさかい・009『部活には入りましたか?』

2019-04-19 13:26:16 | ノベル

せやさかい・009

『部活には入りましたか?』 

 

 

 昔は体育館が一杯になったらしい。

 

 なにで一杯かと言うと、全校集会なんかやると、体育館の床が生徒で一杯になったらしい。

 各学年8クラスもあって、一クラスに50人も生徒がおって、計算したら全校生で1200人!

 いまの倍以上や!

「もっと前は、一クラス60人で8クラスでした! さあ、全校生で何人になりますか!?」

 え~と……

「……1440人」

 後ろで榊原さんが呟く。数学はあたしよりできそう。

 でも、そんな人数、体育館に入ったんかなあ?

「だから、全校集会はグラウンドで行っていました!」

 校長先生は話がうまいなあ、そうやって生徒を集中させて、用件に入っていくんや。

「一年生のみなさん、部活には入りましたか?」

 

 連休までは体験入部期間になってて、どこの部活を見に行ってもええことになってる。全生徒が部活をやる建て前になってて、校長先生はやんわりと勧めてるんや。

 

 吹部に入りたいなあという気持ちはあった。

 コトハちゃんは高校の吹部でアルトサックスを吹いてる。

 中学の時も吹部に入ってて、クラリネットの名手やったらしい。一回だけ練習見に行った。見学が二十人ほどおったんで気楽に見られたんやけど、掛けてある写真見てビックリした💦

 全員が楽器持っての集合写真の真ん中にコトハちゃんが写ってる。ほかにもコンクールで表彰状もろてるのもコトハちゃん。

「いや~キレイな人やなあ」

 写真に目を止めた子ぉがため息ついた。

「吹部のマドンナで、今は聖真理愛(マリア)女学院のブラバンでサックス吹いてはります!」

 副部長の三年生が誇らしげに説明して、ほかの部員もウンウンと頷いてる。三年生は一年間コトハちゃんといっしょやった。そらもう、希望の星やったんや。

 そんな中に入っていったら「あ……酒井さんの従妹……やのん?」と残念がられる。

 その日の見学だけで、吹部は断念した。入ったら、ぜったいコトハちゃんと比較されて――パチモン――とか――劣化版――とか思われてしまう。

 

 むろん、全員部活いうのは建前で「勉強に打ち込みます!」いうのんもあり。いまどきの中学生、進学を真剣に考えてたら塾に通うのは当たり前。たいていは三年の二学期には部活も引退して進学に備える。

 コトハちゃんは「他にすることもないし」と二学期一杯まで練習に通ってた。それで偏差値60以上ある真理愛女学院に涼しい顔して合格。なんともはや……。

 

「放課後空いてる?」

 

 春の日差しにアクビが出かかったとこで、榊原さんに肩を叩かれた。

「ふぇ?」

「よかったら、部活の見学について来てもらわれへんやろか?」 

 子犬のような目ぇで聞かれる。

「うん、ええけど、どこの部活?」

 万一吹部やったら付いて行かれへんから、その確認だけした。

「えと……文芸部」

 

 かくして――図書分室――の看板が掛かった部屋の前に立っている。看板の横にはカマボコの板みたいなのに『文芸部』と書かれている。

 付き添いなんで、ノックは榊原さんがするべきやと思うねんけど、これがいっこうに動かへん。

「ノックしよっか?」

「う、うん……」

 これは、あたしがやらんとあかんか……決心したら、後ろから声を掛けられた!

「入部希望?」

「「ヒャウ!」」

 二人そろって悲鳴を上げて振り返るとメチャクチャなベッピンさんが立ってた!

 金髪にブルーの瞳、どう見ても外人のベッピンさんが、うちらと同じ制服着てニコニコしてる。

「文芸部部長の夕陽丘です。ま、中にどうぞ」

 誘蛾灯に誘われるみたいに「失礼します」を合唱する二人でありました……。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
  • 榊原留美        さくらの同級生
  • 夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
  • 菅井先生        担任
  • 春日先生        学年主任
  • 米屋のお婆ちゃん

 

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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・006『時空戦艦カワチ発進!』

2019-04-19 06:37:28 | ノベル2

時空戦艦カワチ・006

『時空戦艦カワチ発進!』          

 

 

 宇宙戦艦というものはもう少しカッコイイものだろう……。
 花園ラグビー場のフィールド上20メートルあたりに出現したのは百年前のド級戦艦河内そのものだった。
 

 全幅こそは26メートルあるが、全長は160メートルでしかなく、大きさとしてはフェリーボート程でしかない。 上部構造が貧弱で、古風な三本煙突はヒョロッとしていてブリッジよりも高く、今時の自衛艦を見慣れた目からはいささか貧弱。 造艦美の極致である大戦中の日本戦艦と比べると、どうにも建造の途中で投げ出したような頼りなさがある。 側面から見た主砲は四基八門と戦艦三笠の倍であるが、貧弱な三本煙突と相まって三笠型の劣化拡大版にしか見えない。
 

 それに、百年前のド級戦艦そのままの姿には、波動砲どころかパルスレーザー砲も艦載機の格納庫らしきものも見当たらない。
 

 空中に浮かんでさえいなければ撮影用の張りぼてにしか見えない。
 

「諸元はおいおい説明いたしますが、カワチは宇宙戦艦ではなく時空戦艦なのです」

 メインスタンドの大屋根が桟橋になっていて、そこからデッキに上がったところで千早が注釈した。

「時空戦艦?」

「三次元的な運動だけではなく時空や位相をさえ超える……超えることを運命づけられた戦艦なのです」

 そう言いながら千早は河内平野の広がりに目を移す。 それに習って喜一も目を移すが、視点は炸裂の瞬間で停まっている核ミサイルで停まってしまう。
 

「間違っているんです」
「え、なにが?」
 

 千早とは視線の方向が違うので戸惑う喜一である。
 

「河内のありようです、大阪のありようと言ってもいいでしょう。元来河内は日本の中心でした。仁徳天皇の御代から幕末まで中心であり続けました、明治の首都は河内に置かれることが九分九厘決まっていました」

「ああ、本で読んだことがある。大阪に首都を持って来れば、それまで武士に寄生していた江戸が滅んでしまうので東京と改めて都とした。たしか前島密の建議を大久保利通が取り入れたんだった」

「そのことにとどまらず、この河内が健やかに発展していれば……あの禍々しいミサイルが飛んでくることも無かったんです」

「あのミサイルも?」

「あのまま炸裂すれば、一瞬で数十万の命が奪われます。負傷を負った人たちも次々に命を落とし……そればかりか、世界は第三次世界大戦に突入します」  

 喜一も同じ思いだ、X国に限らず核兵器が使用されればドミノ倒しのように世界は破局の淵を転がり落ちるだろう。
 

「それもこれも、河内が本来あるべきところに在らず、その力を発揮できていないところに原因があるのです。河内の復権こそが世界を、この時空を救うのです。そのために、この時空戦艦カワチは悠久の旅に出ます。喜一さん、あなたには、この時空戦艦カワチの艦長を務めていただきます」

「艦長……わたしが?」
 

 そう驚いた時、足許からブルブルと振動が伝わって来た。
 

 船乗りである喜一には、それが出港の為に機関が前進微速の出力を発揮したことだと知れた。
 

 ド級戦艦河内……いや、時空戦艦カワチは、百年前の姿そのままに、なんの準備も納得も出来ていないままの喜一を乗せて河内平野の空に浮かび上がった。

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高校ライトノベル・時かける少女・73『スタートラック・13』

2019-04-19 06:20:48 | 時かける少女

時かける少女・73 

『スタートラック・13』        

 

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になってしまった……目覚めると、今度は西暦2369年であった。ファルコン・Zでの旅、今度は「三丁目星」だった。
 

 

☆……三丁目の星・1
 

 その星は400年前の地球に似ていた……。
 

 やっと無人の人工衛星を飛ばすほどの科学力しか持っていなかったが、一応銀河連邦の一員である。  

 代表者は、アメリカやソ連の指導者ではなく、まして日本の総理大臣などという小粒なものでもなかった。

 この三丁目の星には、五人の代表者がいる。全員が庶民である。
 

 ファルコン・Zを奥多摩の山中に隠し、ホンダN360Zは、大胆にもそのまま代表者の一人がいる蕎麦屋に向かった。
 

 平屋や、せいぜい三階建てのビルしかない街に、出来て間もない東京タワーが神々しくそびえている。

「大将、久しぶり!」

 暖簾をくぐると、船長は気楽に声をかけた。

「おう。シトツキぶりだね、マークの旦那」

 オヤジが気楽に返事を返した。と言って、このオヤジが代表者というわけでもない。

「陽子ちゃん、帰ってるかな?」

 分かっていながら、船長が聞く。

「それが、あいにく……けえってきたところだよ。おい、陽子。マーク社長がお見えだぞ!」

「ハーイ!」

 元気な声と共に制服姿の陽子が元気よく降りてきた。

「おめえも、年頃の娘なんだから、も少し、おしとやかに降りてこいよ」

「家がボロなのよ!」

「言うじゃねえか。そのボロ家のおかげで、おまんま食えて、学校にだって行けてるんだぞ」

「だから、今度はあたしの力で……」

「社長、ほんとにこんなオチャッピーで大丈夫なんかい?」

「保証するよ。陽子ちゃんは、何十年に一人って逸材なんや。大事に育てさせてもらいます」
 

 船長は、この星では、関西の芸能プロの社長ということになっている。

 社名も「松梅興業」から「マークプロ」と関東受けするように改名。そのイチオシのタレントに陽子をスターにすることを、十数回通ってオヤジの了解を得るところまでもってきた。それについては涙ぐましいマーク船長の努力があるのだが、本人の希望もあり、割愛する。

「紹介しとくよ、陽子ちゃんの仲間になるコンビや。入っといで」
 

 ミナコとミナホが色違いのギンガムチェックのワンピで入ってきた。
 

「よろしくお願いします。ミナコ&ミナホです!」

「おー、双子なのかい?」

「まあね。最初は陽子ちゃんのソロと、この二人のデュオで押していこうと思てんねん。そのあとの企画は、まだ内緒やけどな。ほな、夕方まで陽子ちゃん借りまっせ」

「なんだい、蕎麦ぐらい食ってけよ」

「食うか食われるかの世界なんでね。陽子ちゃんも早く帰したいし。またゆっくり伺うよ」
 

 外に出ると、ホンダN360Zの周りは子供たちが群がっていた。無理もない、もう四半世紀もたたなければ、現れないような車なのである。

「ごめん、ごめん。車出すよって、のいてくれるか」

 優しく、手厳しく子供たちの輪を広げると、四人は車に乗り込んだ。
 

「こないだ、ソ連がスプートニク2号を打ち上げました」

 陽子は、事務所で、紅茶を飲みながら話し始めた。

「データ送ってくれるか」

「はい……送りました」
 

 腕時計のリュウズを二度押し込んでデータを送ってきた。むろん腕時計に見せかけたハンベである。

「こら、もうじき核弾頭載せるぐらいの能力になりよるなあ」

「ソ連とアメリカの戦争になるんですか?」

「五分五分やなあ……オレ、ちょっと他の代表に会うてくるから、あとは、この二人と相談して」
 

 船長はドアの向こうに消えた。文字通りテレポしたために消えたのであるが、ここの社員は、誰も驚かない。全員がアンドロイドと、ガイノイドで、チーフとサブのディレクターがバルスとコスモスである。
 

「わたしたち、音楽で、この星の運命を変えようと思っているの」
 

 ミナホが切り出した……。

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