8月に読んだ本

8月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4724

ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ)ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ)の感想
大好きなので再読(初読時は女性版)。事典という体裁の奇書。夢に住み夢を駆けめぐり、夢から夢へと渡り歩く〈夢の狩人〉という設定が先ず堪らない。幻夢と奇想が過剰に溢れ、溺れそうな私はそれが快感なのだから世話がない。時空を超えて張り巡らされた物語の糸たちは、綾で緻密な蜘蛛の巣の如き模様を成し…。今回も途中までは赤緑黄を行きつ戻りつ。最後の最後まで謎解きと驚きが待っていて堪能した。“王女は鳥たちに告げた──「行きて汝らの詩を仲間に教えよ、さもなくば早晩、詩はだれからも忘れられよう……」と。”
読了日:08月31日 著者:ミロラド・パヴィチ
エリオと電気人形 1 (ヤングジャンプコミックス)エリオと電気人形 1 (ヤングジャンプコミックス)
読了日:08月28日 著者:黒イ森
大奥 (ヤングアニマルコミックス)大奥 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:08月28日 著者:よしなが ふみ
眉輪眉輪の感想
素晴らしかった。あまりにも文章が麗しく読んでいるだけで恍惚…なのだが、その内容は古事記をなぞる血腥い悲劇だった。稚い少年王の直ぐな願いと言葉たちが、そして大長谷王子の凄絶な孤独との哀しい比が、胸を衝く。目次の中に「異説ハムレツト」の文字を見たときは一瞬なるほど…と思ったけれど、ハムレットと称するには眉輪王の幼気さが際立ち過ぎて。王妃たちの愛と怨嗟の声もただ苦しく、韓媛の存在だけが灯のようだった。“「さよなら、可愛い子、この手で地軸を触つて御覧、この小さい手に、私は地球を載つけて上げよう。」”
読了日:08月25日 著者:野溝 七生子
大奥 18 (ヤングアニマルコミックス)大奥 18 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:08月24日 著者:よしながふみ
汚れた歳月汚れた歳月の感想
散文詩風掌篇(コント)集。訳者の言葉によると、散文詩風幻像綺譚集。初期のエクリチュールでも、思いがけない夢想と幻視に眩暈する読み心地は流石だった。とりわけお気に入りは、レオノーラ・カリントン(「騎兵学校」)やレオノール・フィニ(「裁かれる快楽のパサージュ」、愛猫家のフィニを皮肉ったラストも好き)、ボナ・ティベルテッリ(「モーリアック嬢の入浴」)に捧げられた作品など。
読了日:08月22日 著者:A・P・ド・マンディアルグ
大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)大奥 17 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:08月21日 著者:よしながふみ
狂える者の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)狂える者の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)の感想
再読。素晴らしかった。“狂える者”たちへ注がれたタニス・リーの眼差しは、静かで優しくて胸を衝く。三つの並行世界(パラディ・パラダイス・パラディス)に、狂気の街で狂気を免れ(故に正常ではない)徒に殺人を繰り返す双子の兄妹、いとこに陥れられ監禁状態にある酒飲みで美貌の画家、そして可哀そうなマーマレード色の髪の少女がいた。主人公たちの運命は苛酷だったけれど、各々の魂が行き着いた先に微かな光を思う。(オレンジ、ジン、ペンギン…の不思議な組み合わせも大好き)
読了日:08月18日 著者:タニス・リー
天國泥棒: 短歌日記2022 (歌集)天國泥棒: 短歌日記2022 (歌集)の感想
〈わが師みな男なりけりあかねさす紫式部に史記習ひたし〉〈葉牡丹にしんじつを問ふ生まれ來て良かりしか汝不機嫌の極み〉〈フェードルゆ源氏物語に通ふ道ほの明かりしてプルーストも見ゆ〉〈白木蓮森閑と咲き戰爭の絕ゆることなき星を抱かずも〉〈立枯れの紫陽花獨り筆折りしうたびとのごとくきよらけきかな〉〈愛されず愛さず生くる天體のきららかさもて海越えむかな〉〈聖母まとふ靑さびしもよ王權にあらがふラピス・ラズリあらむか〉〈妄執を愛とよびたる千年の歷史ほろびむ小面老ゆる〉
読了日:08月17日 著者:水原紫苑
天涯図書館天涯図書館の感想
少しずつ読んでいた。2020年からの時間をたどり直すようで、この先どうなっていくのか…辛くて不安が募る内容だった(そして不安はこの先も続いていくが)。そんな中、取り上げられた作品は意外と既読のものが多かった(特に新しい作品)。私は再読が好きなので、読み返したい本が増えてしまった。例えば『方形の円 偽説・都市生成論』や『孤児』『洪水』『エルサレム』『暴君』『書物の破壊の世界史』『きらめく共和国』などなど。短篇「焚書類聚」を読んで、どうかこんなことにはならないように…と
読了日:08月16日 著者:皆川 博子
死せる者の書 (創元推理文庫)死せる者の書 (創元推理文庫)の感想
再読。大好きな〈パラディスの秘録〉、2の『幻獣の書』まで読み返したので、3から再開した。タイトル通りに死をテーマにした短篇集で、とりわけ好きだったのは『美しき淑女』と『世界の内にて失われ』、『硝子の短剣』、『月は仮面』。狂気の先の死へと向かう者たちが、愛おしくなった。“恋人は貴人や資産家や美男子でなくともよいが、透明で情けを知らず、測り得ぬ輝かしい謎、唐突な死の道具、神秘の存在でなくてはならぬというのだろうか。”
読了日:08月10日 著者:タニス・リー
奇病庭園奇病庭園の感想
素晴らしかった。人がかつて失ったものを再び備えるという奇病、ある者は角を、翼を、鉤爪を、鱗を…突如生やしだす。奇病は種類に富み、それが死因になる者、危険視される者、搾取される者、忌み嫌われる者、自由を得て何処かへ消え去る者…などなど。そんな禍に陥った世界は、さぞや恐ろしくおぞましいものへと変わり果てるだろう…と思いきや、むしろ驚くべきイメージはますます豊かに目眩いていくし、その中にある異形のものたちの姿は美しい(そして少女と異形は似合う)。幾つかの物語の糸が絡み合い結ぼれていく様も、見事だった。
読了日:08月07日 著者:川野 芽生
大奥 16 (ヤングアニマルコミックス)大奥 16 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:08月05日 著者:よしながふみ
大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)大奥 15 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:08月04日 著者:よしながふみ
沈黙博物館沈黙博物館の感想
再読。幾度目かの。この作品における『アンネの日記』の役割が印象深くて、そのことはずっと覚えていた。冒頭で、語り手の数少ない持ち物の中に『アンネの日記』の本そのものが出てくる。思えば『アンネの日記』とは、まず他の誰でもないアンネ・フランク自身の形見であり、だから二重の意味での“形見”を大事にし続けてきた彼は、老婆に(そして博物館に)選ばれるべくして選ばれた人物だった。“博物館は増殖し続ける。拡大することはあっても、縮小することはありえない。まあ、永遠を義務づけられた、気の毒な存在とも言えよう。
読了日:08月03日 著者:小川 洋子
アンナ・コムネナ 4 (星海社COMICS)アンナ・コムネナ 4 (星海社COMICS)
読了日:08月02日 著者:佐藤 二葉
猫の木のある庭 (河出文庫)猫の木のある庭 (河出文庫)の感想
10年ぶりの再読(なので、初読時は『たけこのぞう』)。素晴らしかった。語り口の中に時折惚けたような風味のある「盂蘭盆会」と、タイル敷きの贅沢な浴室(なのに浴槽がない)の設定が秀逸な「浴室稀譚」が好き。グロテスクな遊びに嵌ったり、女同士で自転車で海を目指したり、そういう少女返りみたいなのがそこだけ妙にリアルだった。そして忘れがたい「たけこのぞう」は、身勝手で才能ある画家の母親松子とその娘猛子の話だが、所謂母娘の相克…とはならないところがあらためてよかった。
読了日:08月01日 著者:大濱 普美子

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