奥泉光さん、『鳥類学者のファンタジア』

 『鳥類学者のファンタジア』、奥泉光を読みました。

 “ためらったり迷ったりしている暇はなかった。といういい方は正確ではない。そうではなくて、フォギーは「いま」しかないと全身全霊で感じとっていた。” 628頁 

 主人公霧子さんの一人称による語り口は、自分のおとぼけ振りを自ら突っ込んだりしていて、気取りない(なさ過ぎるほど)キャラクターにぐっと親近感が湧きます。そして面白いのが、その語り口の文の長さ。一つの文の中に起承転結が入っていたりして、文章が全体的にうねっているみたいな、面白いリズムを作っていると思います。う~ん、それはもしかしたら、霧子さんがジャズ・ピアニストであることと関係があるかもしれません。だって何か…ジャズってうねり?

 音楽、とりわけジャズについての蘊蓄も楽しめるこの作品は、タイムトラベルものとしても存分に堪能できます。師匠霧子さんと愛弟子のハイパー佐知子ちゃんが、時間軸を遡ってドタバタと大活躍です。楽しい!
 (2007.7.23)

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