6月20日(読んだ本、『穴掘り公爵』)

 @rinakko
 【穴掘り公爵  新潮クレスト・ブックス/ミック ジャクソン】
 
 こういう話は堪らない。そして好きだ。身分高く財力もある老公爵が、心身ともに頽れていく。その狂おしいばかりのひた向きさでもって常軌を逸していく精神の軌跡が、彼の日記の中で鹿爪らしく綴られている。可笑しいやら、でもどこか愛おしいやら。
 イングランド最大の果樹園も有する広大な敷地内に、邸から放射状に掘られた巨大なトンネル…(だが然したる目的はない)。ひとつ所に穴を掘り続けるような出口のない思考と、散漫な好奇心。その果てにたどり着いた骨相学…からの展開にはのけ反った。
 完璧な孤独に守られている老公爵は、それ故に、他の存在を傷付けることなく壊れていく。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )