イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

カリブの黒いバラバラ

2010-05-23 13:59:43 | 夜ドラマ

『チェイス ~国税査察官~』22日(土)が最終第6話でした。最後まで、盛り上がりそうで盛り上がりきらない、なんともバラけたドラマでしたね。

正義と公益の査察官・春馬(江口洋介さん)があまりにも感情的になり過ぎだし、また彼を感情で動かすようなイベントばっかりストーリー上持って来過ぎだし…と思っていたら、ダーク担当、欲望請負人の脱税スペシャリスト・村雲(ARATAさん)も、必要以上に感情の男なんだな。

対照的なタイプの、それぞれに信念を持つカッコいい男2人のバトルの構図なら、月河大好物なんですけど、どっちも、パッションというよりエモーションで動いてしまうタイプなので、見ていて張り合いがないんですよ。私怨とか復讐とかリベンジとか、さもなきゃ家族愛とか、いちいち動機が小せぇよ。税金使った国税査察わざわざ舞台にしないで、田舎の旧家の家督でも争って、昼帯でとことんやってくれよ、ってなもんです。

感情なら感情でもいいんですけど、男たちを衝き動かすその感情モチーフが“母”とか“妻”とか“娘”とか、“元カノ”とか、概念的な女性のコマなのもいたく全体を白けさせました。とりわけ“母”出してきたら、全体がそれ一色になっちゃうじゃないですか。男にとって、“母”は唯一絶対ですもの。“母”を近辺に持ってこられたら、どんなにクールなヒーローもダークヒーローも、どんなに先鋭なバトルも、一気に軟体化する。そこに“幼児体験のトラウマ”を継ぎ接ぎされたら、もう致命的。盛り返す見込みなしです。

脚本の坂元裕二さんと言えば、2007年の『わたしたちの教科書』も序盤2話ぐらいは惹きつけられたのに、ある時点でまったく迷いなく脱落したなあ。相性が悪いのかもしれない。この人の書く話って、見逃せないと思わせる引きやフックは確かに強いんだけど、“ケレン味ホリック”とでも言おうか、要らないところまで隙間なくザラついているので、引っかからなくていいところでジャリジャリ引っかかり、相対的にメインの対立や葛藤のテンションが薄くなってしまうんですよ。どこかで滑っこいところや、軽妙なところ、さばっと薄味なところもないと。

『チェイス』の収穫は、奥田瑛二さんが、うまいこと年を重ねられて、80年代の青っちょろ二枚目時代からは想像もできない独特のニガシブ系の俳優さんになっていたこと。

もうひとつは、きれいに左右対称の芸名が印象的で、名前だけは早くに知っていたものの、いままでの活躍作が見事に月河のテリトリー外のドラマばかりだったため、顔がまったく一致しなかった田中圭さんが、意外にツカえるタイプの若手さんだったこと。いま風のチャラさが、ちゃんと人物の魅力になっていましたから。

NHKにしては、平日の番組と番組の間の番宣スポットがえらく積極的なドラマだったなあという印象もありました。あるいは『ハゲタカ』よろしく、劇場版も視野に入れているのかしら。江口さんとARATAさん、大スクリーン映えする長身俳優さんを揃えましたが、劇場版なり続編なりで「もう一度会いたい」と思わせる人物に描き上げることはできませんでしたね。

田中圭さんの窪田くんが一人前の査察官を目指す、普通に明朗なお仕事ドラマとしてのスピンオフなら、ちょっと見たいかな。脚本は『つばさ』の戸田山雅司さんがいいなあ。

コメント
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