イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

想うツボ

2010-05-01 19:50:47 | 健康・病気

430日(金)の『ゲゲゲの女房』で、急に路上でリューマチが痛み出したこみち書房姑・キヨおばあちゃん(佐々木すみ江さん)をおんぶして店まで送り届けたバイオニック・ジェミーばり布美枝さん(松下奈緒さん)はカッコよかったけど、歩けない=どう見ても膝から下に痛みが来ているのにナンデ腕にお灸?と思った視聴者は少なくなかったと思われます。

 あれは痛み系の万能経穴(けいけつ)=ツボのひとつである“手三里(てさんり)ですね。

 まずは片腕の肘を、バストの前くらいの高さで、掌を上に向けて90°曲げてみたまえ。ウッと力こめたりせずにすんなり普通にね。肘関節の内側に、肘を横切るようにシワができるでしょう。そのシワの、いちばん親指側の端っこを、もう片方の手の親指で軽く押してみましょう。

…“もう片方の手”が無いしげるさん(向井理さん)は、布美枝さんに押してもらいましょう。

……何を考えておるのだ。

肘内側の太っとい腱の外側で、骨も腱もない、凹んでやわらかいポイントが親指に触れたと思います。ここをくーーっと優しく押すとなんとなくじゅわーと来るでしょう。これが“曲池(きょくち)というツボで、これはこれで自律神経失調やアトピーなどの皮膚炎、口内炎などの粘膜の疾患に有効なツボですが今日はちょっとスルー。

この曲池から、手指の幅3本分、手首側、細かく言えば人差し指側に下がったところが“手三里”です。

ツボやツボ指圧についてのテキストに、よくこの「指幅○本分」外とか内とか下とかいう表現が出てきますが、ひとクチに指幅と言っても、グローブみたいにでっかい手の、ぶっとい指の人もいれば、シラウオの様な楚々たる手の繊細な指の人もいるので、「結局何センチ何ミリなんだ!」とタンパラこく“こんなときだけデジタル人間”も多いかと思われます。

そんなときは、自分で押す際は自分の手指の幅、人を押してあげるときは押される人の手指の幅を基準にしてみましょう。おっきく太い手指を持つ人は腕も長く、全体に体格も大きく、細く華奢な手の人は全体に骨細で小柄なはずです。

しげるさんのツボを押している布美枝さんは、しげるさんの、いつもペンを握っているおっきな右手の指幅をちょっこしチェックしてみましょう。人差し指+中指+薬指。「これくらいかな…」と思うところを押してみて「気持ちええですか?」と訊いてみて、「ん゛ーーー…」と眼鏡越しにウットリしてるようなら、そこです。

……本当に何を考えておるのだ。

反応がいまいちだったら、今度は自分の指幅1本分ぐらい、肘側に行ったり手首側に行ったりしてみましょう。同じ人でも、日によって指幅1本分ぐらいはツボが上下左右にかわるらしいです。とにかく、いつもツボは骨と骨、骨と腱との間の、凹んだやわらかい“谷間”に並んでいますから、それに沿って押して行けば、どこかで「ん゛ーーー」に行き着くはずです。

この手三里は、一般的なテキストでは歯痛、歯ぐきの腫れに効く魔法のツボとして紹介されていることが多いのですが、肩こり首のこり、寝違え、背中の痛みや腰痛、とりわけ上半身の痛み・不快・違和感全般に効くオールラウンドなツボでもあるのです。

…ここまで読んで、アレ?キヨさん、どう見ても膝押さえて「痛~」言ってなかった?と思う向きもあるかもしれません。布美枝さんは、実家母ミヤコさん(古手川祐子さん)が、お台所仕事や縫い物で痛めていた、手首や指など下腕部のリューマチのイメージを持ってお灸したはず。ところが、この手三里、全身の関節や血流の密になるところ全般の、“流通を促す”ツボでもあるんですよね。リューマチは関節の滑膜が冒される病気ですから、手三里を灸で温めることで膝関節をラクにする効果が出たのでしょう。

膝、腰の急激な痛みには、痛いところを直接刺戟せず、そこを通る神経の“気”の通り道を温めてあげるというのが、ツボ指圧法やお灸の鉄則でもあるのです。

キヨさんとしてはそれプラス、一度店に立ち寄ってくれただけの、ヨソから越して来たばかりらしい初々しい若奥さんが親切にしてくれて、昔ながらの灸ツボまで心得ていてくれたというヨロコビも、痛みをやわらげる助けになったのでしょう。親子以上に年の離れた若い人が、自分と同じ(灸穴の)知識を共有してくれていたとわかるだけで、年寄りは嬉しいもの。喜び、嬉しさのエモーションも“気”の通りを良くするのです。

布美枝さんが膝関節のリューマチについていま少し知識を持っていたら、痛んでいる方の膝のお皿の下、外側のくぼんでいるところにある“陽陵泉(ようりょうせん)、ここからさらに下の、ごつんと突き出ている骨の突起の下、向こう脛と太い腱との間のやはり“谷間”にある“足三里(あしさんり)を温めてあげると一段と効き目ありありかもしれませんが、自宅に送り届けてもらったとは言え、まだ親しくもない他人の前で裾をまくって脛を出すのはキヨさんならずとも抵抗があるでしょうしね。劇中、陽だまりのナズナがやっと開花したばかりで、夜は鍋料理の恋しい2月、石油の買い置きもなく隙間風フリーダムそうなしげるさん家ほどではありませんが、こみち書房の奥向きもあまり暖かそうではなく、豊満な美智子さん(松坂慶子さん)も毛糸編みのカーディガンとニットキャップで武装でしたし。

まだ若い布美枝さんが経穴について知っているのは、きっといまは亡きおばば(野際陽子さん)由来の知恵でしょうね。お母さんのリューマチを介抱するうち、実地の臨床経験もできたと。

“人の役に立っている”“人を幸せにしてあげている”という実感が、何よりの自分の幸せと感じる布美枝さん、帰宅するとしげるさんから思わぬプレゼント=自転車もあったし、今日(1日)は「ときどきこの部屋、掃除してください、資料や本の場所はなるべく動かさんように」と頼まれて、いままでの心許なさやギスギスが吹っ飛び、『ちびまる子ちゃん』でよくあるように、「パァァ…」と一面に花が咲き乱れた気分だったに違いありません。

普通なら、男に「部屋掃除しろ」なんて言われたら「うっせー自分が散らかしてんだから自分でやれこのバカ」と蹴っ飛ばしたくなるもんだけど(普通じゃないか。月河だけか)、このドラマを見ていると「よかったね布美ちゃん」と思えるから不思議。掃除ウンヌン、片付けウンヌンが単体で問題なのではなく、しげるが布美枝の妻としての心やりに感謝し、「本当にオレの大切なものは、この人ならわかって、捨てたりせずちゃんと扱ってくれるだろう」と信頼してくれたことが大事。

襖一枚開いただけで安堵感や、胸に広がる温かみが伝わってくるのも、着いた当初は破れ放題だった障子がコマ貼りされ、台所の洗いかごに対の茶碗や小皿が重ねられ、煎餅座布団にも安来から持ってきた新品のカバーがかけられ…という、ボロ家ながらも少しでも住み心地よくしようとする布美枝の努力が、話数を追ってきちんと映像でとらえられてきたからだと思います。仕切りが取り払われた室内を、まずは布美枝の立つ台所から、ロングに引いてしげるの向かう仕事机まで1ショットに入れる映し方も素晴らしかった。何もかんもぜんぶ台詞やナレーションで説明せずとも、じんわり沁み入るワンシーンは醸出できるものなのですね。

そう言えば先週の『天装戦隊ゴセイジャー』では、闘病中の女の子(←奇遇にも、7歳布美枝役・菊池和澄さんでした)のために、いつもにも増して張り切ったイエローのモネ(にわみきほさん)が、「お兄ちゃん、貸して!」とブラックの腰からゴセイブラスター奪っちゃって、デカレッドのジュウクンドーばりに二丁拳銃で戦っていましたが、今日の布美枝さんも「不審な男が来た」の急報に、すわっと鍋の玉杓子と網杓子つかんで二丁拳銃っぽくなっていたのが可愛かった。布美枝さんとしては「旦那さまは片手、ワタシは両手あるけん!」の気概を見せたつもりだったのかもしれません。

コメント
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