イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

イタチ立ちたい(←回文)

2010-05-06 10:20:02 | 朝ドラマ

ぬはは、いかがわしいなあイタチ(杉浦太陽さん@『ゲゲゲの女房』)。言うことなすこと、ウサン臭くないところがひとっつも無いという。

漫画のファン、作家のファン、芸能スターのファン、「好き」「惚れ」「萌え」という不特定多数のふわふわした心理を「とにかくカネの集まる仕組みに変換したる!」ともくろむ人って、やっと平和になり音楽や本を楽しむ余裕も少しずつできてきた時代に、速攻ワラワラと各地各分野で現れたのでしょうねえ。

そしてまた決まってそういう人は自分では絵が描けない、文が書けない、歌や踊りができない。「オリジナルをクリエイトする才能はないけど、人の作った“オリジナル”を、カネを生む“商品”に変える能力ならあるぜ」みたいなね。またそういう能力の人もいないと、すぐれたクリエイターも、独創的な作品も、世に広く知られる前に干上がってしまいますからね。

しかしイタチ浦木、そういう能力すら自称ほどあるのか疑わしい。だまくらかされる気配濃厚なしげる(向井理さん)布美枝(松下奈緒さん)夫婦ですが、今日(5日)の見どころは、玄関先に勝手に『少年戦記の会』の看板(←またチョー安っぽい筆跡の手書き)を掛けようとしたイタチをしげるが「ええ加減にせぇ!」と右手一本で地面に転がし、「乱暴はよせ」と反撃するかと思ったイタチ、仁王立ちのしげるを見上げると「…よしてください。」とヘナって敬語になるところ。

しげるの向井さんのほうが、隻腕の演出を抜きにしてもどう見てもガタイが上で、浦木の杉浦さんが設定の“イタチ似”以上にヒョロく、玄関前の石畳に腰から落ちたときものすごく痛そうで、立ち上がろうにもほとんどハエみたいにもがいていたので、布美枝さん、笑ってないで介抱してあげたほうが…という感じになってしまいましたが、たぶん結婚後の上京列車でしげるが「親友じゃなく腐れ縁」と布美枝に言っていたのはこういうことなんでしょうね。

つまり、クチだけは滅法うまい浦木ですが、ケンカはすこぶる弱い。田舎の小学生ぐらいの男子グループの中ではいちばん軽んじられる属性です。

子供の頃から、「クチより先に手が出る」しげるの腕っぷしに、浦木は何度も助けられてきたのでしょう。しげるとしては「オマエを助けたつもりじゃないんだけど」と思ったことも一再ならずだろうし、浦木が仲間面して調子づくと、やはり腕でシメてやったこともあったはず。

回り回って、浦木にとってのしげるは結局“味方に持つと頼りになる、絵もうまい、一枚上手で、くっついてると何かしらいいことがありそうなヤツ”、しげるにとって浦木は“なんか知らんけどすり寄ってきて、調子いいこと言っておだてて来る”“正直、悪い気はしないから、困ってれば助けてやらないでもないが、ありがた迷惑転じて迷惑迷惑なヤツ”で、成長後もずっと来たのでしょう。これが“腐れ縁”。

幼なじみの男の子同士の付き合いって、ケンカの強さ基準のヒエラルキーが大人になっても続くところがある。「目が合うと追って来ます」と言うくらい毛嫌いしている相手なのになぜしげるきっぱり拒否らないのかな?と思ったのですが、今日のしげる片手転がし→浦木敬語ヘナりでだいたい読めました。しげるが浦木のズルさに振り回されているのではなく、しげるの強い磁場に惹かれて、浦木がつきまとっては突き放され、またつきまとっているのです。

鬼太郎シリーズのネズミ男モデルなら、子持ちになったとは言えイケメン枠出身の杉浦さんより、もっとアクの強い容姿芸風の俳優さんのほうが…と思ったこともありますが、生物行動学で言うところの“つつき順位”的にしげるのほうが上なのだから、向井さんよりヒョロでペラで甘っちょろげな人を持ってくるのは正解なのですね。

もうひとつの見どころは、ファンクラブ会報発行を浦木が提案したとき、布美枝の「切手代はどうするんです?」。自分は汗かかず、労力もカネもしげる夫婦に丸投げして上前はねる気満々だったイタチも、一瞬絶句。

布美枝のこの鋭い着眼、突然鋭くなったわけではなく、実は前々日(3日)のエピソードのひとつだった“絹代お義母さん(竹下景子さん)からの手紙攻勢”からの学習なんですね。“こうお便りが頻繁だと、お返事に書くネタがない”→“ハガキや切手を買いおくのも、度重なると結構貧乏所帯にきつい”と、この12ヶ月で身にしみていたに違いありません。絹代さんは粘着気質なところがあり、新婚の息子を心配しだすとキリがなく、ハガキに全項目書き切れずに封書で来たこともあったと思われ、布美枝さんのことですから、「封書のお手紙に、返事がハガキでは粗略で失礼」と思い、そうなると小奇麗な便箋や封筒も常備しておかねば…と、乏しい財布と相談して心を砕いたはず。

上っ調子なイタチに「会員様には郵便で会報を送るんですよね?切手代もバカになりませんよ、家計には大問題ですけん!」とビシッと言えたのは、経験がもたらした布美枝の主婦としての成長。しげるも大きく頷いてくれてましたね。

このドラマの人物が劇中発する台詞には、主人公の味方であれ敵キャラであれ、その場その場の笑い取りや展開のためのツールでなく、ちゃんと背景や前段階がある。描写されなくても想像させて、この言葉、行動につながっていると頷かせる。

言わば“根(ね)”があるんですね。物語世界の上っつらに乗っかっているんじゃなく、根を下ろしている。だから録画してでも何回も観たくなるんですね。

コメント
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