今、大相撲夏場所が行われていますが、優勝が期待されている大関稀勢の里は順調に白星を重ねており、先場所に続いて存在感を示しています。
日本の相撲の起源としては、古事記(712年)や日本書紀(720年)の中にある力くらべの神話や、宿禰(すくね)・蹶速(けはや)の天覧勝負の伝説があげられますが、相撲の始まりは日本古来の奉納相撲を起源とし1500年以上の歴史があると言われています。
相撲はその年の五穀豊穣を占う祭りの儀式として、毎年行われてきました。これが平安時代になると宮廷の行事となり300年続くことになります。
また、神道の影響から神聖なものとみなされるようになり、現在でも土俵まわり、力士の所作には神事の名残が多く見られます。
その一つに土俵の上の吊り屋根があり、4色の房が下がっています。
この房は何を表しているのかご存知でしょうか?
この吊り屋根は伊勢神宮と同じ様式で神社建築に多く見られる神明造りで造られています。
吊り屋根は、以前は四隅から柱で支えていましたが、テレビ中継の普及とともに柱が邪魔で見えにくいと言うことから柱を取り払い、代わりに天井からワイヤで吊り下げ、柱の代わりに房が下がっている現在のような形になりました。
吊り屋根の四隅を飾る四色の房はそれぞれの色が四季と天の四神獣(しじんじゅう)を表わし、五穀豊穰を祈念しているともいわれています。
◯正面東側(東北)、 青房・・・東方の守護神 青龍神(=青い龍)・・「春」
◯向正面東側(東南)、赤房・・・南方の守護神 朱雀神(=赤い鳥)・・「夏」
◯向正面西側(西南)、白房・・・西方の守護神 白虎神(=白い虎)・・「秋」
◯正面西側(西北) 、 黒房・・・北方の守護神 玄武神(=黒い亀)・・「冬」
この天の四神獣は、土俵を守る意味で四隅に祀られているもので、高松塚古墳の壁画にも描かれています。
四色の房は、絹の刺繍糸を撚(よ)り合わせて作り、1本の長さは230センチ、太さは70センチ、重さ25キログラムです。
土俵から房の先までは305センチの高さになっています。
力士たちは、このように神に守られている神聖な土俵で相撲をとっているのです。
その事を十分自覚してもらい、横綱は横綱相撲を、大関は大関相撲を心掛け、神様が見て喜ばれるような堂々とした相撲をとってもらいたいものです。
(参考)
どこにどの色の房を下げるか位置が決まっていて、時計回りに、正面は黒、東は青、向正面は赤、西は白です。
この4色の房がそれぞれ象徴しているのは、黒は玄武、青は青龍、赤は朱雀、白は白虎です。
また、この4色は方角も表しており、黒は北、青は東、赤は南、白は西となっています。
更に、この4色は季節も表しており、黒は冬、青は春、赤は夏、白は秋です。